アロハシャツを選ぶ時に知っておきたい8つのこと。柄の由来からコーデ、ブランドまで。

夏の風物詩ともなっているアロハシャツ(ハワイアンシャツ)。鮮やかな色や柄が特徴的でカジュアルなリゾートスタイルを演出するにはとっても有効なアイテムだ。

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しかし、デザインを全面に打ち出したアロハシャツには、時として敷居の高さを感じてしまうこともある。「アロハシャツに挑戦したいけど、自分には合わないんじゃないか」そんな不安を抱いている人も少なくないのでは?

そこで、アロハシャツを購入する際に知っておけば、自分好みの1着に出合える8つのポイントを紹介。柄の種類、素材、プリント技術など、選ぶ際に役立つ知識はたったの8つ! これさえ押さえておけば、間違いなしだ。

1.デザインの種類と歴史を紹介!

アロハシャツの起源と言えば諸説あるが、日系移民の存在が深くかかわっているのは間違いない。彼らが日本から持参した和装の生地独特の色や柄が現地の人々や観光客には新鮮に映り、アロハシャツの黎明期には和装用の生地を使って仕立てた開襟シャツが人気を集めていた。

アロハシャツが登場した当時は総柄や上記理由により和柄が多かったが次第に柄の配置やパターンのデザインは幅広くなっていく。現在にも残るアロハシャツのデザインの種類を時代を追って見ていこう。

1930s~|オールオーバー(総柄)

柄オールオーバー

シャツ全体に一定の間隔で柄がリピートするオールオーバーパターン。数あるアロハシャツの中でも最も歴史がある。

1930s~|オリエンタル(和柄)

柄オリエンタル

アロハシャツの元祖ともいえる和柄。初期は和装の生地、’40年代後半からはシャツ用にプリントした生地が使われていた。

1940s~|ボーダー

柄ボーダー

縦方向に柄の連なるデザイン。総柄の派生として1940年代に登場し、’50年代には定番として普及した。

1940s~|ホリゾンタル

柄ホリゾンタル

柄の上下を明確に表現している。身頃の生地を横方向(ホリゾンタル)に切り出すことが名前の由来。

1950s~|ピクチャー

柄ピクチャー

その名の通り、写真のように見えるプリントデザイン。細かなドットで型を彫り、その上に色を刷り重ねて写真風に見せている。

1950s~|バックパネル

柄バックパネル

背中全体を一枚の絵画に見立てたデザイン。裁断に制限があり縫製も難しく、ヴィンテージでは数が少ないため価値が高い。

以上のように、大きくわけて6タイプの柄がある。図案の配置ひとつで印象がガラリと変わるハワイアンシャツ(アロハシャツ)。自分好みの柄のパターンが決まれば、あとはどんなモチーフが他にあるか見ていけば楽しく選べるはず。

2.柄に使われているモチーフの由来とは?

柄の配置、パターンの種類は上記のようにかわいらしいものから大胆なものまで幅広いことがわかる。では、柄のモチーフにはどんなものがあるのだろうか? ヴィンテージアロハなどに見られる柄の多くは、ハワイの歴史と文化に由来している。どんなものが表現されているか「サンサーフ」の復刻モデルを元に見てみよう。主な6種類、あなたはいくつ知っていますか?

1.ハワイの精神文化を表す「レイ柄」。

Lei Queen /  HAWAIIAN SURF / 1930年代後期 / レーヨン羽二重 / 抜染プリント /(サンサーフ / 東洋エンタープライズ)

旅行者を歓迎する意味だけでなく、送る相手への感謝や祝福の意味が込められているハワイアン・レイ。その起源は魔除けや幸運祈願、そして神々への信仰を表すものとして誕生し、先史時代からハワイに暮らす人々の精神文化として継承されている。そのレイを讃える祭典「レイデイ」が、勤労感謝の日でもあるメーデーの、毎年5月1日に行わている。

そのレイデイの始まりは1927年。詩人であり作家であり、ジャーナリストでもあったアーティスト「ドン・ブランディング」 が、レイの文化をより深く知ってもらうための祝日として提唱したのがきっかけ。この日はレイの完成度を競う品評会の他に、厳しい審査のうえレイ・クイーンを決めるコンテストが行われる。

この特別な一着であるアロハシャツのモチーフになっているのは、まさにそのレイデイの祭典の情景。このオリジナルは1930年代のアロハシャツ史における最初期に作られた歴史的価値の高い一枚で、手掛けていたブランドは『ハワイアン・サーフ』。同銘柄は1934年に設立したパシフィック・スポーツウェア社が展開していた。

2.今はなきハワイ航路「マトソン・ライン柄」。

Festival  / PALI HAWAIIAN STYLE / 1950年代後期 / レーヨン壁縮緬 / オーバープリント /(サンサーフ / 東洋エンタープライズ)

かつて楽園の島ハワイへの観光を担っていた豪華客船による船旅。そのマトソンラインと呼ばれる、米国本土からハワイを結ぶ洋上の旅で使われた客船内は様々な装飾が施され、レストランで使われるメニューの表紙はユージーン・サヴェージなど当時活躍していたアーティストが手掛けていた。

このオールオーバー・パターンで仕立てられた一着は、サヴェージが描いた6枚のメニュー・デザインのうちの1枚「FESTIVAL OF THE SEA」がモチーフ。当時、日本で友禅の職人がシャツ用の絵柄として描き直し、京都の捺染工場で22色もの版を使いプリントしていた。

当時この生地を手掛けていたのは、日系人のイサム・タカブキ率いるアロハ貿易。戦後すぐに廃校となった小学校を買い取り、プリント工場を設立。和装用の生地であったレーヨン壁縮緬に多色のトロピカル柄をプリントし、ハワイへ輸出していた。

3.神にささげる踊り「フラ柄」。

Banana Trees / ALOHA KANAKA BY ARTVOGUE / 1950年代中期 / レーヨン羽二重 / 抜染プリント / (サンサーフ / 東洋エンタープライズ)

現在の観光的娯楽とは異なり、先史時代のハワイにおけるフラは、神々にささげる神聖な踊りであった。森羅万象すべてのものに宿る精霊「マナ」へ感謝と祈りの気持ちを表したこのフラは、文字を持たなかったハワイの人々が後世へその歴史を伝える物語であった。

この伝統的神事を踊るフラガールを、見事なホリゾンタル・パターンへ落とし込んで作られた1枚は、ヴィンテージ・アロハシャツのカテゴリーにおいて、高い評価を得ている逸品。このオリジナルを手掛けたのは代後半に1940代後半に創業し、サンフランシスコを拠点にしていたアパレルメーカー『アートヴォーグ・オブ・カリフォルニア』。

同社のレーベルのひとつであるアロハ・カナカ(親愛なるハワイの人々という意味)の織りネームが使われている。そしてシャツ全体に青々と生い茂るバナナツリーと、その下で踊るフラガールたちを描いたこのテキスタイルデザインを手掛けたのは、ポール・ゴーギャンと同じポスト印象派の画家ウルフギャング・ウルフ。太平洋に浮かぶ楽園ハワイの美しい情景が、アロハシャツをキャンバスに今、甦る。

4.伝統漁法の風景「フキラウ柄」。

Hukilau / ROSS SUTHERLAND BY SUN FASHIONS / 1950年代後期 / レーヨン・リネン・ホップサック / オーバープリント  (サンサーフ / 東洋エンタープライズ)

紺碧の大海原に囲まれるハワイの島々。それ故、ハワイに暮らす人々に豊かな恵みを与えてくれる海の幸は掛け替えのないもの。フキラウと呼ばれる地引網を使った伝統漁法は、年代に1950年代に入ると観光客向けのアクティビティとしても人気を博し、観光客たちは捕った魚でバーベキューを楽しんでいた。

そんなハワイならではの伝統漁法をバックパネル・パターンで描いたアロハシャツの逸品は、良質な商品のセレクトにより絶大な人気をハワイ・ホノルルで誇っていた洋品店『ロス・サザーランド』によるもの。同店がハワード・ホープ率いるシャツメーカー「サン・ファッションズ」にオーダーした作品で、麻とレーヨンの混紡糸を使い、特別に織られた生地を使用している。

ヴィンテージ・アロハシャツの中でも年々入手困難となり、価格も高騰しているバックパネル・パターンの秀逸デザインとなるこの1枚は、コレクター垂涎の一着となるだろう。

5.日系移民文化の象徴「和柄」。

Demon On Japan Beauty /SUN BROS & CO / 1950年代後期 /  レーヨン壁縮緬 / オーバープリント(サンサーフ / 東洋エンタープライズ)

アロハシャツの起源は諸説あるが、日系移民の存在が深くかかわっているのは間違いない。彼らが日本から持参した和装の生地独特の色や柄が現地の人々や観光客には新鮮に映り、アロハシャツの黎明期には和装用の生地を使って仕立てた開襟シャツが人気を集めていた。

そんな歴史的背景を持つ和柄のアロハシャツの中で、傑作と呼ばれるモデルが存在する。怒りと憂いの表情を携えた般若の面をメインモチーフとした、迫力のあるテキスタイルデザインがそれだ。当時の大手商社であった東光貿易のブランド『サン・ブラザーズ&カンパニー』が手掛けた作品で、このように般若の面をモチーフとしたアロハシャツは数が少なく非常に稀少価値が高い。

同社は輸出用の生地を扱う商社であったが、1950年代後期になると日本での縫製が盛んになり、生地ではなくシャツとして輸出する機会が増えていった。このラベルにある「YOKOHAMA JAPAN」の記載は、同社の輸出拠点となり縫製工場を建てた横浜港に由来する。

6.伝説のサーファー「カハナモク柄」。

Wondrous Palm Tree /  DUKE KAHANAMOKU / 1950年代後期 / レーヨンフジエット / 抜染プリント(サンサーフ / 東洋エンタープライズ)

オリンピック競泳のゴールドメダリストであり、サーフィンというスポーツを確立させたハワイの英雄にして伝説のウォーターマンであるデューク・カハナモク。自らの知名度を活かしハワイの文化を世界へ広め、発展に尽力した人物である。彼は自身の名を冠したブランドを1930年代からスタートさせ、当時、観光客向けのギフトとして人気のあったアロハシャツの地位を、ファッションアイテムとして扱われるところまで引き上げた。

そのスペシャルな逸品は、アメリカ本土のメーカーが手掛けたアロハシャツならではの秀逸なデザイン。オールオーバー・パターンでプリントされたテキスタイルには、洗練された雰囲気とともに強いインパクトを放つ、モノトーンのヤシの木が大きなドットで描かれている。この作品は過去に出版されたアロハシャツ関連の書籍にも登場することのなかった、珍しいデザインである。

3.レーヨン生地にも種類がある。

アロハシャツに使われる生地は主にレーヨン生地だが、同じように見えて実は種類がある。レーヨン生地には3つの種類があり、手触りでもわかるので肌触りにこだわりたい人は素材を重視して選んでみるのもいいだろう。

レーヨン壁縮緬

経糸に無撚糸、緯糸にレーヨン壁糸を使用した定番生地。表面にシボ感があり、和柄のシャツに使われる。

レーヨン羽二重

長繊維のレーヨン糸を使った平織りの生地。放熱性が高いため、着心地良く、光沢のある仕上がりが特徴。

レーヨンフジエット

毛羽立ちのある古めかしい素材感のフジエット。経糸にフィラメントレーヨン、緯糸にスパンレーヨンを使用。

4.プリント手法は2種類ある。

右は「オーバープリント」と呼ばれ、デザインに使われる色の数だけ版を作り、1色ずつ版を刷り重ねていく手法。生地の裏をみると、地色もプリントしていることがわかる。

一方左は、「抜染プリント」と呼ばれるもので、生地を一度地色に染めて、柄の部分の色を抜いてからプリントするという手の込んだ手法。地色が裏側まで抜けているのが抜染の証だ。

5.ボタンは仕上がりを左右する見逃れないディテール。

1.シェル|高級感のある天然素材貝殻ボタン。光があたる角度によって美しい反射を見せてくれる。

2.バンブー|竹材を使用。磨くほどに光沢が増し、徐々に色濃く変化していくのも楽しみなパーツ。

3.ココナッツ|ヤシの実から削り出して作られたボタン。ひとつずつ異なる表情を見せるのも魅力的なディテール。

4.尿素ボタン|ハワイアンシャツだけでなく、当時のカジュアルウェアでも多く見かけることができるボタン。

6.ヴィンテージなら、ポケットの柄合わせが良い品の指標になる。

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ヴィンテージにはポケットの柄合わせをしていないものも多いが、柄合わせをしているハワイアンシャツにはブランドのこだわりを感じる。縫製が難しく無駄になる生地も多いため、良質かどうかを見極める指標のひとつになっている。

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7.アロハシャツコーデはおしゃれメンズを参考に。たった3つのパターンであなたも着こなせる!

南国のイメージの強いアロハシャツだが、派手なカラーや柄ばかりでなく、落ち着いたカラーや柄もあることから最近ではタウンユースで着る人が増えている。だが、柄の主張が気になってどう着たらいいかわからない人も多いだろう。そこでライトニング誌面に登場していただいた洒落者の着こなしを厳選して紹介!

初心者でも安心の「チラ見せ」、王道の「×デニム」、そして通な「×オールインワン」、この3パターンを押さえておけば問題なし!

派手な柄をシックに見せる、カーディガンとの合わせ技。

「(株)裕誠 」代表・松竹裕二さん

真冬でもハワイアンシャツを着るため、上からスウェットカーディガンを羽織り、程よくエイジングしたジーンズをオン。外構業を営んでいることから、どのジーンズも現場作業で穿き、汚れたら都度洗濯しているのだそう。「テクニックなんて何もないですね(笑)」とは本人のコメントだが、タウンユースで派手柄を着こなす最強テクだ。

インナーに白T、色落ちしたジーンズにサンダルの王道テッパンコーデ。

「STANDARD CALIFORNIA 」福島潮さん

STANDARD CALIFORNIA のオリジナルパターンのハワイアンシャツに、いい感じに色落ちしたジーンズという王道コーデ。それでも今っぽく見えるのは、ほどよいオーバーサイズのトップやインナーのクルーネックT、そしてレザーサンダルを合わせているから。レザー小物を合わせるだけで、上質さが増し、お洒落に見えるのでおすすめだ。

和柄に合わせたオールインワン。実はオーバーオールとも相性抜群なアロハシャツ。

「デウス エクス マキナ」吉田佳照さん

爽やかなナチュラルカラーのオールインワンにバンブー柄のシャツを羽織ったコーディネイトは、リゾート感とワークテイストを両立させた男らしい着こなし。このままバイクに乗れるスタイルだけにデウス エクス マキナ らしい提案ともいえる。また、軽やかなスタイルとは対照的なハットを組み合わせることで、ダンディズムもプラスした大人なテクニックもお見事。

オールインワンやオーバーオールといったデザインは、アロハシャツとバランスよく着こなせることから人気の高い組み合わせ。足元はやっぱりワークでまとめたいところ。

8.本物志向のブランドと言えば、「SUN SURF(サンサーフ)」。

2022年のモデル。美術品と呼ぶにふさわしいクオリティだ

「柄(パターン)」「生地の種類」「プリント手法」などアロハシャツを選ぶ際に知っておくきたいことを紹介してきたが、アロハシャツはアートだと感じる人も多いのではないだろうか? そうなってくると、クオリティの高い本物志向のアロハシャツが欲しくなってくる。そこで紹介するのが、聞いたことも多いであろう「サンサーフ」だ。

歴史的希少価値を持つアロハシャツの世界を掘り下げるブランドとして知られ、ヴィンテージアロハシャツをテーマに国内初である美術館とのエキシビションを開催するなど、国内外のアロハシャツシーンをリードしている。

茅ヶ崎市美術館で開催された国内初のアロハシャツ展の展示の様子。ハワイ文化の重要な一部であるアロハシャツは、日系移民の労働着がその歴史の発端にあったとも言われている。ハワイ・日本の両文化が入り混じった表現の豊かさがアート作品と呼ばれる所以
人気の高いサンサーフの「日本の意匠」シリーズ。“神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)”【原画:大判錦絵/天保2年(1831年)頃】

貴重なアーカイブを元に復刻される新作アロハシャツを毎年楽しみにしている人も多い人気ブランドの、キーマンである「サンサーフ」中野さんにアロハシャツの選び方について伺った。

「SUN SURF」Director・中野喜啓さん|学生時代にアロハシャツの魅力にとりつかれヴィンテージの世界へとのめり込み、ハワイ在住経験も。これまでに数千枚の個体を目にするも、未だ見ぬ柄も多く存在するとか

「ハワイアンシャツ初心者は、手はじめに、使われている柄が少ないものを選ぶと普段使いも着回しもしやすくおすすめでる。中級者なら、少し冒険してボーダーやホリゾンタルなど、ひとクセあるものを選んでみてもいいでしょう。上級者ならば、バックパネルのようなパンチがきいているものを選んで、カッコよく着こなしてみてほしいですね」

さぁ、夏は自分の目利きで選んだアロハシャツを着て、ファッションを楽しもう! そして、すっかりアロハシャツの虜になってしまった諸君には、もっとアロハシャツ沼にハマる、特別な教科書をおすすめしよう。値段は少々張るが、一般的に見ることができないような貴重なアロハシャツが美しい写真で収録されており、バイブルと呼べる逸品だ。1,2があるのでセットで手に入れるのがおすすめだ。

購入はこちらから!

※書店では販売されておりません。

▼パタゴニアのアロハって知ってる?

「パタロハ」って何? アウトドア要素をハワイアンシャツ(アロハシャツ)に落とし込んだ逸品に注目!

「パタロハ」って何? アウトドア要素をハワイアンシャツ(アロハシャツ)に落とし込んだ逸品に注目!

2023年03月16日

(出典/「Lightning Vol.278、302」)

この記事を書いた人
サカサモト
この記事を書いた人

サカサモト

アメカジ系動画ディレクター

Lightning、2nd、CLUTCH Magazineの公式YouTubeチャンネル「CLUTCHMAN TV」のディレクター。元Lightning副編集長ということもあり、クルマ、バイク、ミリタリーなど幅広い分野に精通。現在はもっぱら動画作成機材に夢中。ニックネームは、スキンヘッドにヒゲ面をいう「逆さ絵」のような顔に由来する。
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