書類、名刺、レシートなどすべてデータ化 リモートワークの必需品 ScanSnap iX2500

白井暁彦博士に聞く「AI時代のScanSnapの役割とは?」

AIが我々の生活やビジネスを大きく変化させている。さまざまな画像やドキュメントをAIで生成できるようになった一方で、『情報の取り込み元』が課題となってくる。インターネット上にない情報の取り込み元として、ScanSnapなどのドキュメントスキャナーの役割はますます大きくなっている。AIやVR、メディアアート、写真工学、画像工学などに詳しい白井暁彦博士に、ScanSnapがこれから担う役割と、ご自身のScanSnap活用術について聞いた。

エンタメ技術を研究、クリエイティブAI企業の代表

まずは、白井暁彦博士について、ご紹介しよう。ご活躍は多岐にわたっており、多くの組織に関わって活動されているので、全貌は各種サイトのプロフィール欄やWikipediaをご覧いただきたいが、現在、メインで取り組んでいらっしゃるのはAICU(アイキュー)という会社の代表と、デジタルハリウッド大学 大学院の客員教授なのだそうだ。AICUの本社所在地はカリフォルニア州サニーベール(Apple Parkの近く)。

AICUの日本オフィスは東京科学大学(旧東工大)のキャンバスイノベーションセンター東京にある。

AICU
https://corp.aicu.ai/

デジタルハリウッド大学 大学院 客員教授 白井暁彦
https://gs.dhw.ac.jp/faculty/visiting/akihiko-shirai

AICUはメディアとしても発信されており、多数の記事が公開されている。

AICU Japan note
https://note.com/aicu

また、個人でもnoteで数多くの情報発信を行っている。

しらいはかせ AI/Hacker/作家/編集者/AICU代表
https://note.com/o_ob

AICUでは、AICU Magazineという月刊誌を発行していて、これは電子書籍でも紙の本でも購入できるのだそうだ。

AICU Magazine
https://corp.aicu.ai/ja/tag/aicu-magazine

また、著書も多く、最近だと『ComfyUI マスターガイド』、『Stable Diffusion スタートガイド』などを執筆されている。とにかく、情報発信量の多さには驚かされる。

画像・動画生成AI ComfyUI マスターガイド
https://www.amazon.co.jp/dp/4815628750

画像生成AI Stable Diffusion スタートガイド
https://www.amazon.co.jp/dp/4815624569

AICUのKindle書棚
http://j.aicu.ai/kindle

ScanSnapを十数年愛用

さまざまなデジタル機器を使いこなしてきた白井博士。当然のことながら、ScanSnapも早くから使ってらっしゃって、使い始めてもう十数年になるという。

「電子帳票保存法が成立し、法律上においてもPDFに保存できるScanSnapの存在意義は増しています。現在のスキャナーマーケットで、キヤノン、リコー、ブラザーのような競合がある中で、PFUのScanSnapが不動のトップであるというのは非常に興味深いんですよ。HHKBもオンリーワン的存在ですよね。なぜ、そうなったのか? 使い勝手の良さや、ソフトウェアの完成度や、技術力とか、目の付け所というのが非常にいいんですよね」

「クラウド技術にも長けていて、スキャンしたものをクラウドで受け取れるのが非常に便利。PFUはどこかで、クラウド利用料をサブスクにしていくとかした方が良いんじゃないでしょうか?」

早くから、ScanSnapを使っている白井博士は、ビジネスとしてのScanSnapについても考えてらっしゃるようだ。ユーザーとしては、現在の買い切り型のシステムの方が助かるが……(笑)

「スキャンしたデータをScanSnapのクラウドに置いて、それをGoogleドライブや、Dropbox、Evernoteなどに連携していくところの技術というのが、今、知財、特許的には非常に大きいはず。それをメンテナンスするためのコストは非常に高いと思うんです。MacやWindows、iOSやAndroidなどがアップデートするたびに保守も必要ですし。日本のメーカーはどうしてもハードウェアの部品としてしかソフトウェアを考えていないところがありますが、PFUは責任を持ってソフトウェアをアップデートされているところが素晴らしい」

なるほど、ScanSnapの強味と言うのはソフトウェア面にあると。

「さらに言うとね。もっとすごい問題があって……ScanSnapのハードウェアの出来が良過ぎて壊れないんですよ。何万ページ、何十万ページとスキャンしても壊れる気配がない。僕はさすがにどうかと思って新しいのを買うわけですけど、壊れなかったら、ずっと使い続けられるわけです。本当に真面目に物を作ってますよね」

たしかに、ScanSnapが物理的に壊れたという話はあまり聞かない。業務用スキャナーの技術が生きているとは聞くが、可動部分が多いのに本当に壊れない。

「ScanSnapは、クラウドからAIに繋いで、そこでサブスクみたいな課金方法にすべきですね。製品補償とか、ユーザー登録とヒモづけて、1年間は無料ですよ、と。で、ストレージプランや、他社接続プランをサブスクにすべきです」

確かにPFUのビジネス基盤がしっかりするのは、サブスクの方かもしれないが……ユーザーとしては、そのアイデアはPFUさんには秘密にしておいていただきたい……(笑)。

スキャンデータはGoogleドライブに入れるとAIで活用しやすい

ScanSnapでスキャンしたデータは、はやりAIに読み込ませるのだろうか?

「僕は、書籍を書く人間なので、年間に本十数冊分ぐらいの文章を書きます。さらに論文をやはり十数本ぐらい書きます。そのために、大量の資料を読みます。大学院生の時は1年で段ボール20箱ぐらいの資料が溜まっていました。最近はスキャンしてデータ化しています」

スキャンするのにこれまでもずっとScanSnapを使っていた?

「もちろん。ScanSnapが良いのはOCRが優れていて、PDFにテキストを埋め込んでくれる点です。おかげでGoogleドライブとの相性がすごくいい。Googleドライブに保存しておけば、いつでも検索して見つけることができる。ScanSnapがEvernoteやGoogleドライブなど、クラウドストレージとの連携に早く取り組んでくれたおかげで、自分の研究室のデータは全部PDFで保存されているので、検索可能です」

データはGoogleドライブに入れているのか?

「多くのデータはGoogleドライブかOneDriveに入れています。現状、AIで要約したり、分析したりするのに、Googleドライブに入れておくのが一番便利です」

スキャンした紙は捨てている?

「捨てることにしています。自分の中で断捨離だと思って。でも、紙で取っておきたい本もありますね。PDFでいいと思う本は情報として取って置きたい本。別にコミュケーション、美術として取っておきたい本もあるわけです。装丁や、印刷のクオリティが高い本、書店流通していない同人誌とか、展覧会の図録とか。こういうものは裁断するべきではないと思っています。そこで僕は開眼したわけです。紙メディアには、紙メディアの意味があるんです」

実は原稿は、AIを使わず、自分で書いている

「これは大事なことなんで言っておくと、私は原稿は全部自分で書いているんですよ。『AIで副業』とかいう広告には、ChatGPTに任せてブログが書けるというような話が出ていますが、私は基本的には文章は自分で書きます。私は研究者であり指導者なので、たとえば冬の卒業論文を見ているような時期には、100ページぐらいある論文を何十人分も見てますから。そして、学生さんが『1年かけて練りに練って書いて、これ以上直されたら死んじゃいます』みたいなレベルの原稿も、本人が『ああ…その方が美しいですね…』といって自分から直す気になるぐらいの赤ペン力があります。最新刊「ComfyUIマスターガイド」はiPadで赤ペンを入れています。AIは資料をまとめたり、言語を変換したり、用語を確認したり、進行管理に使ったりしますが、書籍執筆や、学会向けか、エンタメかで、編集者、指導者として経験ある人間としての一言一句を「読者の心に響く、複雑で理不尽な人間の文章」としてまとめ上げています」

AIで資料をまとめる、骨子を揉むということはできても、完成させるのは人間ということなのか。

「AICUの原稿も外部のライターさんや学生インターンが書くこともあるのですが、トンマナ(トーン・マナー)としては、『絶対に自分で手を動かしている記事にしてください』という黄金律がベースにあります。実際に手を動かしてない人の記事はやはり分かる。「AIで何でもできます」、「安くできます、早くできます」っていう宣伝文句が飛び交っていますが、僕らはクリエイターでもあるので、安くできるとか早くできるというのがゴールではない。責任あるAIの使い手、教育者としても、そこは十分に注意して発言するべきだと思うんですよね」

スキャンデータを処理するソフトをAIで生成する

現状だと、スキャンしたデータをGoogleドライブに格納して、それをAIで整えるという使い方はあると思うが、その他にスキャンに関するAIの活用方法は?

「スキャナーについて考えると、どうすればこれが長い目で見た時に成立するビジネスになるだろうって考えるんです。僕がソフトウェア会社の人なら、ユーザー側がオープンにこういう技術を使えるようにするといいと思います。『Google Apps Script(GAS)をAIに生成させて、それをそのままコピー&ペーストしたら動きますよ』みたいなカタチでやるのもいいでしょう」

実際に、Claude Sonnet 4を使って、スキャンしたPDFを家族Discordに通知するGASの自作アプリに関する記事を公開されていますね。

スキャナーでスキャンしたPDFをDiscordで通知するエージェントをAIで自作してみた!
https://note.com/aicu/n/na15ff8855a1a

「家族と、デジタルデバイスの位置関係もだいぶ変わってきたなと思います。従来だと、デバイスやスキャナーは企業に1台とか、家庭に1台だったでしょうけど、今や家族の1人1台になってもおかしくない。時代が変わってきているなって思います」

ScanSnapは重要な役割を果たすはず

湧き出る泉のように、次から次へと話が出てくる白井博士。実際には、フランスに研究員として移住した時の話や、AIでのコンテンツ生成の話など他にも数多くのお話が聞けて非常に楽しかったのだが、ここではScanSnapの話に限定してまとめさせていただいた。

生成AIが普及していく過程で、コンピュータネットワークの中にない情報はますます重要度が増す。それを取り込むことができるScanSnapもまた重要な役割を果たすことになる。

また、スキャンデータの活用においても、生成AIでGASなどの簡易的なコードを一般ユーザーが活用できるようになると、さらに大きな可能性が広がることだろう。

(村上タクタ)

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村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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