「趣味の文具箱」編集長・清水のつぶやき<第6回>2mm芯ホルダーの魅力再発見!

「鉛筆は最強の筆記具だ」。これは雑誌「趣味の文具箱」の読者の皆さんにとっては、耳タコなフレーズだ。鉛筆なんて小学生以来握ったことないよ、という人がほとんどだと思うけれど、ぜひ大人の皆さんには鉛筆の魅力を見直してほしい。

芯や木軸を削るのが面倒な理由で、鉛筆は敬遠されることが多い。また削っていくと短くなって長さが可変することも鉛筆の弱みだ。この鉛筆の弱点を解消する道具がある。それが「芯ホルダー」だ。

一般的な鉛筆とほぼ同じ直径2mmの芯を使うのが「2mm芯ホルダー」。極太の芯を使うホルダーがあるが、最も一般的なのが2mm芯だ。硬度やカラー(赤、青など)なども多彩に揃っている。元来は製図のプロ向けだったので、デザインに無駄がなく、シンプルな設計でとても堅牢だ。

2mm芯ホルダーの象徴的なモデルが、ステッドラーの「マルステクニコ芯ホルダー 780C」だ。ロングセラーだが、確かな資料がなく発売開始年は不明。2009年に編集部が問い合わせをした時のステッドラーからの回答は以下のようなものだった。

「残念なことに正確な年代をご案内できませんが、1969年のカタログに芯ホルダー780Cの最初の写真を見つけました。780Cではなく、780と呼ばれているように、当時はクリップがありませんでした(C=クリップを表す)」。

1969年の資料や日本のカタログなどを見てみると、当時の芯ホルダーは780だけでなく、多種多様に揃っていたことがわかる。軸の素材、芯削りの有無、硬度表示の有無などバリエーションがたくさんあった。

780Cの魅力は機能美に表れている。芯ホールドの構造は巧妙で確実に芯を固定する。ノックボタンを押すと無段階で芯の繰り出し量を調節できる。グリップは美しいローレット加工で確実に握ることができる。また低重心設計で長時間の筆記でも疲れない。芯を削るのも簡単で、小型の芯研器があればほんの数秒で先端を鋭角にできる。

780Cは半世紀を軽く超える古いモデルにはまったく見えない。その価値はデジタル全盛の今だからこそ、より高まっている。デジタル漬けな日々の中で、素朴で確実な鉛筆芯でゆったりと書く時間も大切にしたい。

※参考資料「STATIONERY magazin no.005(2009年発行/枻出版社)」

この記事を書いた人
趣味の文具箱 編集部
この記事を書いた人

趣味の文具箱 編集部

文房具の魅力を伝える季刊誌

「趣味の文具箱」は手で書くことの楽しさ、書く道具としての文房具の魅力を発信している季刊雑誌。年に4回(3・6・9・12月)発刊。万年筆、手帳、インク、ガラスペンなど、文具好きの文具愛を満たす特集を毎号お届けしています。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

Pick Up おすすめ記事

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...