「ファインダーはカメラの命」はデジタル時代でも不変なのか

ミラーレスカメラが主流となりつつある。ミラーレスの「ミラー」は一眼レフの内部にある鏡のこと。光学レンズで結像した被写体をこの鏡に反射させてファインダー像を作り、カメラのファインダー窓に導く。フィルムで撮る時代、このファインダー像の見え具合がカメラ性能の価値を決めた。

フィルム撮影には現像とプリントをすることが大前提となるが、現像・プリントの仕上がりを待たなくても、高性能なカメラのファインダーは限りなく現像の仕上がりに近いイメージを作ってくれる。だからプロ仕様のカメラは視野率100%を目指し(これを実現するのはかなり難しい)、設定した絞りが生むボケ味やピントの深度をリアルに表現するファインダースクリーンが研究開発された。

光学ファインダーは絶滅してしまうのか?

時代は進み、光学レンズを通過した被写体はセンサーで瞬時にデジタル信号に変換され、電気の映像となる。デジタルカメラの電気ファインダーは当然のように視野率100%だし、ボケ味も補正した露出もほぼ正確に表示される。そして、光学ファインダーの要である一眼レフのミラーは不要(less)の時代となったのだ。光学ファインダーはこのまま絶滅してしまうのだろうか。

カメラの進化はファインダーの進化でもあった。最も原始的なファインダーは「枠ファインダー」などと呼ばれる素通しのフレームだ。枠はぼんやりと見えるだけなので、正確なフレーミングはできない。だから仕上がりに近い像をファインダーで実現するために、光学系を配置した様々なファインダーが20世紀後半には次々と開発されていった。

M型ライカの距離計連動式のブライトフレームは最も画期的な発明

ファインダーの開発史で、最も画期的な発明はM型ライカの距離計連動式のブライトフレームだ。1954年のライカM3に搭載された。それまではごく小さなガラス窓を覗いて経験と勘でフレーミングしていた。ライカM3の接眼窓は大きく、ファインダー像はほぼ等倍。つまり肉眼で見ている目の前に明快なフレームが浮かび上がって、光景を切り取ることができる。

眺めている視線の延長にカメラを配置し、フレームで風景を切り取り、まばたきするような感覚でシャッターボタンを押す。撮影が、まるで視覚の残像をフィルムに転写するような感覚になる。

「ライカは鉛筆のようだ」。これは文具バカな自分が勝手に思いついたレトリックだけど、ライカを持って気ままに散歩しながら、風景に感情を同化させて撮る気分は、真っ白い紙に鉛筆で思うままに落書きするような感覚に近い。とても開放的で、楽しいのだ。

カメラの光学ファインダーもきっと復活するはず

約70年前に開発されたライカM3のファインダーは、後継機のライカM2で改良され、この基本構造は最新のデジタルM型ライカにも継承されている。デジタルになっても、とても高額になっても、M型ライカが愛好されているのは光学ファインダーで撮る魅力があるからだろう。

単なるノスタルジーではない、アナログ回帰が多くの趣味の分野で興隆しているが、カメラの光学ファインダーも近い将来、時代の要求とともに復活してくることを願いつつ、日々、外付けの光学ファインダーで写真を楽しんでいよう。ちなみに文具趣味の世界では、鉛筆やシャープペンシルがすでにアナログ回帰の波に乗って、思春期の高校生たちの熱い注目を浴びている。

この記事を書いた人
趣味の文具箱 編集部
この記事を書いた人

趣味の文具箱 編集部

文房具の魅力を伝える季刊誌

「趣味の文具箱」は手で書くことの楽しさ、書く道具としての文房具の魅力を発信している季刊雑誌。年に4回(3・6・9・12月)発刊。万年筆、手帳、インク、ガラスペンなど、文具好きの文具愛を満たす特集を毎号お届けしています。
SHARE:

関連する記事

Pick Up おすすめ記事

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

Pick Up おすすめ記事

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...