「バスコ」の並木さんが手放せない、道具として使い込まれたからこその色気を持つメールバッグ。

『旅の小道具』をテーマに、男心をくすぐるようなバッグや小物を展開する「バスコ」のオーナー、並木健氏。手放せないと挙げたヴィンテージは、質実剛健なアメリカのメールバッグ。使い込まれたからこそ醸し出すレザーの色気が、並木氏のプロダクツにも共通している。

自社のプロダクツにも影響を与えた、モノ作りの原点。

数あるバッグブランドの中でも、一際強い個性を放つVASCO。『旅の小道具』をコンセプトにしたコレクションは、兎にも角にもヘビーデューティで、使い込むほどに馴染んでいく道具としての一面も強く感じ取れる。並木氏のモノ作りの原点が、このUS MAIL BAGだと聞くと納得ができる。

アメリカの郵政省で支給されていたメールバッグ

「もちろんいろいろなヴィンテージに影響を受けていますが、衝撃的だったのが、アメリカの郵政省で使われていたUSメールバッグでした。

その名の通り、郵便の際に使っていたもので、年代によって細かな違いがありますが、基本的な構造はあまり変わっていない完成されたデザイン。多くの郵便物を運べるようにヘビーデューティに作られていて、雨風に打たれながらも朽ちることなく、いい風合いになったレザーの表情は男心をくすぐるものがあります。

自社のプロダクツも、このようにハードに使われ、いい風合いになることを理想としているんです。この存在がなければ、今のスタイルになっていないかもしれません。バッグはファッションの前に道具であるべきだということを教えてくれた大切な存在ですね」

男心をくすぐる理想的なエイジング。

US MAIL BAG Made in USA

現在のUnited States Pospital Servicesの前身となるUnited States Post Office Departmentで支給されていたメールバッグ。裏の刻印やディテールから1960年代のヴィンテージだと判別できる。ハードに使い込まれている個体が多く、パーツが交換されているケースもあるが、これはフルオリジナルの状態。この使い込まれても朽ちないヘビーデューティな作りと革の表情は、並木氏のモノ作りにおける大きな指針となったそうだ。

(出典/「CLUTCH2023年6月号 Vol.91」)