実走テストも敢行! ショベルヘッド・キャブレターテスト

  • 2025.09.12

カスタムという切り口でショベルヘッドの魅力に迫ってきた6月号の特集だが、ここからは気になるキャブレターをいくつかピックアップして、装着&計測テストを敢行。シャシーダイナモ上で3速140km/hに到達するまでの検証に加え、実走テストも行ってみた。それぞれのキャブの相性と特徴をグラフの数値からひも解き、ぜひカスタムの参考にしていただきたい。

【計測車両データ】
排気量:1340㏄
カム:ノーマル
エキゾースト:
サンダンス・ローライダーヘッダース
点火:ダイナS

【KEIHIN】Butterfly Carburetor

チューニングといえばイコールで「パーツ交換」と考えがちな人にとっては意外な結果かもしれないが、今回テストした1340㏄ショベルヘッドとかなり相性がよかったのがこのケーヒン・バタフライ。67年のティロットソン、71年からのベンディックス製に続き、76年から純正採用されたこのキャブはシャシーダイナモでの計測結果も出力、トルクともに安定した曲線を描いており、結果は最大出力60.6㎰、トルク9.8㎏-mというもの。実際の乗り味も低回転域の安定感やトルクを感じる加速感など、ストレスなく扱うことができる印象となっている。

実はこうした数値的な部分からだけではなく、今回、テストを行った「サンダンス」のZAK柴崎氏も自らの経験として「ノーマル排気量のショベルにはオススメできるキャブ」とのことで、その中でも80~84年のケーヒンバタフライが相性もよく、マッチングも良好という。

しかし、同じケーヒン製のバタフライといえども79年までのタイプはキャブ自体からの“クシャミ”が多く、当時はリコール品になったそうで、さらにはエボリューション時代の85~88年のバタフライもショベルに装着すると調子(相性)がイマイチとのこと。ショベルとエボのエンジンからのバキュームの強さや違いを考えれば、おのずと理解できると思うが、加速ポンプの流量が少ないエボ用をショベルに取り付けると加速がニブくなる症状も表れるという。またショベルが現役だった当時、ネガティブなイメージをもつ人が多かったゆえ、現存車両の多くも社外製のキャブレターに交換されており、程度のよい個体が少ないのも事実だろう。

純正至上主義的な目線ではなく、工学的な見地から考えてもキッチリと整備されたノーマル排気量車にはオススメだ。

数あるキャブ中でストック排気量1340㏄ショベルとかなり良好な相性をみせるのが、このケーヒン・バタフライ。意外かもしれないが空燃比設定12~13:1のセッティングで最大出力60.6㎰、トルク9.8㎏-mの結果は、全キャブレターの中でもトップクラスである。

【S&S Cycle Inc.】Super B Carburetor

66年まで純正採用されていたリンカートの進化版ともいえる固定ベンチュリーのバタフライキャブレター、S&S製のスーパーBは今回のテストで62.3㎰、最大トルクで10㎏-mという最高値を叩き出したのだが、こうした良好な結果にも関わらず、単純にスペックだけで語れないのもエンジンをチューニングするという行為において忘れてはならない項目だろう。

例えば、上に掲載したケーヒン・バタフライと比較するとシャシーダイナモの数字的には若干、こちらのキャブのほうが上なのだが、実際に乗ってみると下からの粘りのあるトルクフルなフィーリングは、個人的には明らかにケーヒンに軍配があがると思う。さらにいえばラフなスロットルワークではツキがイマイチに感じたのも正直なところだ。

ショベル以前のハーレーの場合、エンジンからのバキュームも弱く、それに対応するためにバレル部を長めに設計し、流速を高め、正確な燃料の吸い出しを狙ったスーパーBの構造は、キャブそのものの技術が発展途上の時代では最良の方法とされていたが、やはり問題は、その口径の大きさ。ケーヒン・バタフライの38㎜に対してバレル径47.6㎜、ベンチュリー径40㎜という数値は明らかにオーバーサイズであり、そもそもこのキャブが1600㏄以上の大排気量を想定しているゆえ当然といえば当然だ。

さらにいえば加速ポンプをもたない構造からセッティングを若干、濃いめにするのもお約束。こうした処置で多少ラフなスロットルワークも可能となるのだが、やはり操作時は固定ベンチュリーということを忘れてはならないだろう。

ショベルが現役だった75年に登場したことから神話的に定番とされたこのキャブレターだが、やはり真価を発揮するのは適切なサイズのエンジンへの装着なのである。

今回のテストで最大出力62.3㎰、トルクで10㎏-mという良好な数字をマークしたものの、グラフを見ると2000~2500rpm付近の落ち込みが気になるこのキャブだが、実際はさほどパワー不足を感じないのも正直なところ。じんわりと開けるアクセルワークが基本だ。

【SUNDANCE/KEIHIN】φ41mm FCR Carburetor

独自に開発されたハイエマルジョンニードルの内蔵によってハーレーに適したセッティング、特性となったサンダンスFCRだが、それを装着した走りの中で素直に痛感させられるのが、「乗り手のスロットルワーク次第で乗り味が変幻自在に変化する」という部分にほかならない。

例えばアクセルをラフに開けたときのフィーリングはまさにレーシングキャブであり、鋭い加速を見せつけるのだが、ゆっくりと走ろうと思えば粘るようなトルクフルな感覚も堪能できる。これはやはりアクセルワークによって適切な混合気を燃焼室に送り込む強制開閉式の可変ベンチュリーという構造の恩恵だろう。

そうした設計ゆえ、ストック排気量から1600㏄クラスまで適合することが謳われてるこのキャブだが、しかし、唯一の問題点をあげるとしたら、その鋭すぎるレスポンスゆえ、ショベルのような旧車で整備不良のものに装着すると思わぬトラブルに直結してしまうこともある。当然、キッチリと整備された車両なら問題など起こりようもないのだが、スキルのないショップが組み上げたショベル・エンジンに取り付け、ガンガンに回すような乗り方をしてしまえばアチコチにガタがきてしまうのは必至である。もちろん、キャブそのものに問題があるワケではないので、あえてキツいことをいえば「ショベルにFCRを付けると壊れるから」と語るショップに出くわした場合は、その店の技術を疑ったほうがいいだろう。

もともとショベルは急発進、急加速を得意とする乗り物ではなく、ゆっくりと鼓動感を楽しむべきもの、という意見も聞くが、そうした乗り方をしてもサンダンスFCRの粘りあるトルクフルな走りは最高峰と断言できるフィーリングだ。それはショベルヘッドであろうと変わらないのだ。

時代がEFI化に進むいま、まさにキャブの最終形態といっても過言でないのがサンダンスFCR。数値的には最高出力60㎰、トルク9.5㎏-mという結果だったのだが、実際の乗り味、レスポンスはコイツがダントツ。シャシーダイナモ上で140㎞/hまでに到達する時間も最速である。

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

CLUTCH Magazine, Lightning, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

モヒカン小川

Lightning, CLUTCH Magazine

革ジャンの伝道師

モヒカン小川

ランボルギーニ三浦

Lightning, CLUTCH Magazine

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

おすぎ村

2nd(セカンド), Lightning, CLUTCH Magazine

ブランドディレクター

おすぎ村

なまため

2nd(セカンド)

I LOVE クラシックアウトドア

なまため

みなみ188

2nd(セカンド)

ヤングTRADマン

みなみ188

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部