個店の覚悟。〜レジェンド店主のコラボにまつわるあれこれ〜【三茶・セプティズ編】

街の小さなセレクトショップとしてスタート、いまでは多くの服好きを惹きつけるレジェンドショップがある。資金、販売拠点という面において、大手セレクトショップよりも小規模な彼らがいかにして数々のコラボアイテムを生み出してきたのか。そこには彼らの血の滲むような努力と内に秘めた覚悟があった。

セプティズ/オーナー・玉木朗さん|1955年、京都府出身。1974年に上京し、アメ横に通うように。国内外の良質ブランドが揃う「セプティズ」のオーナーであり、2013年には『ボク達の超B級アーカイブ』を出版

「コラボの先にある、お客様の喜ぶ姿を想像することからすべてが始まります」

三軒茶屋の老舗トラッドショップ「セプティズ」。国内外の優良ブランドが集結する旧きよきセレクトショップにして、数々の名コラボアイテムを生み出してきた。その名物オーナーであり、アイビー・トラッドを軸とするアメカジ全般において生き字引的な存在でもある彼の頭の中には、いつも“お客様”の存在がある。

「コラボアイテムの製作もセレクトしたアイテムもそうですが、『お客様がアッと驚くようなモノを提供すること』を第一に考えています。そういう意味では、海外の名門ブランドと良いモノを作ることができれば、お客様は『こんなモノを作ったんだ!』と驚いてくれますよね。それがすべてにおいての出発点になります」。

そんな玉木さんがコラボアイテムを作る際のアイデアの源のひとつが“アーカイブ”である。アメ横に通い詰めた20代前半やアメリカで過ごした1980年代後半など、長年のキャリアの中で自身が見て触って体感した過去の名作を甦らせる、というわけだ。

「過去に存在したけれど廃番となってしまったものはどうやっても手に入れられない。古着店で探すこともできますが、それは確率的な話になってきてしまいます。そんなモノを復刻して販売することができたら、それだけで特別感がありますよね。過去の例を出すと、アメリカの老舗ゴルフウエアブランド『マンシングウエア』のポロシャツがあります。1960年代に左胸のロゴのペンギンが“ボーリングをしている”というモノがあったのですが、廃番となってしまっていました。そこでコラボアイテムとして復刻させたいと考えたのですが、代理店がその存在も把握しておらず、もちろんアーカイブも所有していなかった。『作りたいけど作れない』、というかなりもどかしい思いをしました。そこからなんとか過去の資料を見つけてもらい、膨大な量のカタログすべてに目を通し、ようやく発見。待望の実現に漕ぎ着けました。発案から製作までに2年以上かかりましたね」。

ほかにも『マックレガー』や『ジーエイチバス』、『ギャンバート』などの名だたるトラッドブランドとのコラボを手掛けてきた玉木さん。個店であるが故に生産ロットなどの障壁も幾度となく経験してきた。そのなかで、大切なのはショップの規模や資金力ではなく、“作り手の情熱”とショップの“クオリティ”にある、というのが現在の彼の信条だ。

「極論をいえば、工場がある以上、生産数が少なくてもモノを作るということはできるはずなんです。ですので、ブランド側が本気でやりたいと思ってくれるかどうか。お互いに前傾姿勢でアイデアを出し合って、ひとつの目標に向かうことが大切です。もちろん相手がいる話なので、ブランドイメージやプライスレンジも詰めていく必要はあります。いずれにせよ、『セプティズ』というお店に商品が並ぶということに価値を感じてもらえるかどうか。小さなお店でも『ここは別格だ』とか『このお店の棚に並べたいな』と思ってもらえるようなショップを築かなければなりません。また、うちは商品を預けて頂けるブランドのイメージを下げたくはないのであまりセールをやりません。リスクがないわけではありませんが、生み出したアイテムをしっかりとお客様に届けるための努力は厭いません。そこに責任と覚悟があるのです」。

過去に製作したコラボアイテムの数々。「マンシングウエア」とのポロシャツ(左)は60年代のアーカイブからロゴを復刻。右上の2ndの表紙は「フェルコ」と「スクーカム」とのトリプルネームのレタードカーディガン

【DATA】
SEPTIS
東京都世田谷区三軒茶屋1-41-13
TEL03-5481-8651
https://septis.co.jp/
15:00~19:00 水曜定休(土日は12:00~19:00)

(出典/2nd 2025年11月号 Vol.214」)

この記事を書いた人
みなみ188
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みなみ188

ヤングTRADマン

1998年生まれ、兵庫県育ちの関西人。前職はスポーツ紙記者で身長は188cm(25歳になってようやく成長が止まった)。小中高とサッカーに熱中し、私服もほぼジャージだったが、大学時代に某アメトラブランドの販売員のアルバイトを始めたことでファッションに興味を持つように。雑誌やSNS、街中でイケてるコーディネイトを見た時に喜びを感じる。元々はドレスファッションが好みだったが、編集部に入ってからは様々なスタイルに触れるなかで自分らしいスタイルを模索中。
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