湘南・南葉山の工房で、28年間変わらずオーダーアクセサリーを作り続ける「市松」の匠の技巧

湘南の南葉山に工房を構えるオーダーアクセサリーブランド「市松」。シルバーやゴールドなどの地金に槌目を打ち込むという手法で28年も職人として「市松」を作り続けてきた坂入大士さん。創業時からほぼ変わらない匠の技に迫る。

創業は1997年。変わらない“鎚目”と研ぎ澄まされた匠の技

自分だけの仕様とデザインで、ものを作るオーダーという行為は、どの時代においても特別で贅沢な体験である。価格もそう安くないからこそ、どんなブランドでオーダーするかはしっかりと吟味しておきたいところ。

ブランドの歴史や、職人の技術などが、その判断基準となるが、「市松」はその両方において突出している。ブランドの創業は1997年。バリエーションは増えているものの、ブランドのフラッグシップモデルは変わらず“鎚目”である。

さらに、「市松」の立ち上げ人である職人の坂入大士さんは、創業から28年にわたって金槌を振り続けている。坂入さん曰く「5万点以上は作ってきたはず」とのことで、その職人技が簡単には真似できない域に達していることは明白だ。

シンプルながら表情のあるデザインで、どんなスタイルにも馴染むのはもちろんのこと、唯一無二の技術が自分のために振るわれ、それを毎日身につけることができる満足感はほかの何にも代え難い類のものである。オーダーは湘南の長谷エリアにある「ベルーリア鎌倉」にて。

「市松」職人・坂入大士さん|「市松」を生み出した職人であり、工房のある南葉山にて、28年にわたり同じ製法で鎚目を打ち込み続けている。その総数はなんと約5万点に及ぶという

“自分だけの一点”をオーダーする

「市松」はオーダー制のアクセサリーブランド。リングは0号から0.5号刻みで、バングルは1mm単位でサイズを測り、細かな仕様を決める。その仕様書が工房に送られ、坂入さんがそのオーダーに沿ってイチから制作するという流れだ。

地金をカットする

シルバー、ゴールド、プラチナに限らず、どんな素材でも1本の地金をカットするところから始まる。高純度のシルバー 980を使い、幅8mmで制作する。

火を入れて軟らかくする

硬い金属を成型するための下準備。バーナーで赤くなるまで素材を熱し、水に入れて急冷することにより軟らかくなり、曲げることができるようになる。

木槌でリング状に成型する

軟らかくなった素材を木槌で叩くことによって、リング状に成型していく。のちに金槌で叩いてサイズや形を調整するため、ここではまだ仮の成型となる。

継ぎ目を整える

この段階では地金の継ぎ目が合わないため、糸ノコで継ぎ目をぴったりと合わせる。木槌で叩くことで素材が硬くなるため、再度火を入れて形を調整する。

エッジをやすりで削る

肌当たりをよくするため、内側のエッジをやすりで削ってなだらかにする。このひと手間を加えることによって、着け心地が優しく滑らかになる。

金槌で変わる槌目の細かさ

「市松」を象徴する鎚目の模様は、金槌の先端の太 さによって風合いが変わる。打ち込みは鎚目、プレーン、縦打など、オーダー時に選ぶことができる。

いよいよ本髄の鎚目打ち

号数が記載された棒にリングを通し、金槌で打ち込む。サイズを調整しながら模様が美しく配されるようリズムよく打ち込んでいく。まさに職人技。

オーダーならではの刻印

「市松」、「SILVER(素材名)」と刻印が入る。オーダーの醍醐味であるイニシャルや数字も入れられるので、自分だけのために作られた特別感を味わえる。

素材の美を味わうシルバー

「市松」の原点、シルバーを使ったラインナップ。いい意味での素朴さもあり、あまり手入れせずに経年させるとマットになっていく質感も魅力。価格的には入門者にも◎。左からsilver 波型3連リング5万2800円、silver 楕円ネックレス5万5000円、silver 笹型バングル7万7000円

色合いも華やかな14金

より華やかで、2トーンなどのデザインや色味の選択肢も増える14金シリーズ。左からK14(ライムグリーン)×silver スパイラルバングル17万500円、K14(シャンパンイエロー)×silver 2tone 8㎜リング10万4500円、K14(ローズレッド)×silver 裏表5㎜リング8万5800円

【問い合わせ】
ベルーリア鎌倉
@belluria
神奈川県鎌倉市長谷2-20-32
TEL0467-22-2566
12:00〜18:00 不定休(要予約)
@ichimatsu_accessory

(出典/2nd 2025年11月号 Vol.214」)

この記事を書いた人
パピー高野
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パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
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