
カットソーの名産地・和歌山で縫製される“未来のヴィンテージ”
「餅は餅屋で」という言葉がある。「何事も専門家に任せるのがいちばん良い」という意味のことわざだ。国内外に様々なブランドが存在し、しのぎを削るなか、ここ日本で確かなモノづくりを続けるブランドがある。旧きよきアメリカンスタンダードをベースとし、スウェットやTシャツなどのカットソーを手がける「ライディングハイ」だ。
ヴィンテージの編み機の使用や“杢”の色へのこだわり、ヴィンテージ由来のディテールや無駄な生地廃棄を削減するための取り組み……。ここまでカットソーに愚直に向き合うブランドはほかにはないのではないだろうか。
彼らのラインナップのほとんどはカットソーの名産地・和歌山の歴史ある工場によって縫製されている。それらはディレクターの薄新大さんが拠点とする東京から実際に足を運んで関係を構築し、綿から開発に携わり製作される、いわばカットソー作りにかける情熱の結晶だ。そんな「ライディングハイ」の創造するプロダクトを“未来のヴィンテージ”と呼ばずして、なんと呼ぶ。
これがが定番! ライディングハイのシグネチャープロダクトを紹介
「ライディングハイ」の核となるスタンダードラインを紹介。編み立て機や生地の廃棄を削減する円胴ボディやヴィンテージを踏襲したディテールなど、随所に拘りが宿る充実のラインナップだ。

旧式のアズマ編み機で編み立てたプルオーバーパーカ。カンガルーポケットや脇下にハギのない丸胴ボディ、ハギのない筒状の袖リブやボリュームのあるダブルフードなど、こだわりのディテールが満載。2万5300円

1950年代のヴィンテージスウェットをベースに両Vガゼット、身頃の切り替えが袖側まで伸びるフリーダムスリーブ、切り替えの無い丸編みの袖リブなど、当時の特徴的なディテールを再現している。1万8700円

50sのヴィンテージに多くみられるハーフジップスウェット。旧式のアズマ編み機によって編み立てており、袖付は身頃の切り替えが袖側まで伸びている、フリーダムスリーブを採用。1枚で着ても存在感抜群。2万3100円

レイヤードスタイルに最適な薄手のタートルネックTシャツ。リサイクルコットン糸を使用し、脇下にハギのないチューブ生地を採用。首元はややルーズな作りとなっており、折り返して着用するのもよし。9900円

ダブルジップを搭載したスウェット素材のジップアップジャケット。サイドにはハンドウォーマーポケット、内側にはマガジンポケットが配置されている。旧式のアズマ編み機を用い、柔らかな仕上がりに。2万7500円

アズマ編み機によって編み立てられたふっくらとした仕上がりのタートルネックスウェット。リブのネックは外側にも内側にも折り返すことが可能。コートやダウンジャケットなどのインナーにも最適だ。1万9800円

リサイクルコットン糸を旧式編み機を用い、脇下にハギのないチューブ生地に編み立てたポロTシャツ。左胸にはポケットのほか、メガネをかけられるフックが配置。ボタンレスの前開きもポイントだ。1万1000円

旧式編み機によって編み立てられた天竺素材を使用。コットン100%ながらストレッチが入っているかのような軽やかな着心地で、レイヤードスタイルにも持ってこい。中に同色のTシャツを合わせるのも粋。1万3200円

リサイクルコットン糸を旧式編み機で編み立てた長袖のヘンリーネックTシャツ。首元はヴィンテージに多くみられるバインダーネック仕様で、左袖に配置されたミニサイズのパッチポケットがアクセントに。1万340円
薄新大のモノづくり懸ける思いとは? 「ヴィンテージとして受け継がれるプロダクトを生み出し続けるのが目標です」
国内屈指のカットソーブランド「ライディングハイ」。そのディレクターにしてデザイナー、そして代表を務める薄新大さんは、誰もが知るトラッドブランドのデザインを担った経歴を持つ。そんな彼がカットソーというマニアックな世界に足を踏み入れ、愚直に向き合い続けるきっかけはアメリカへの憧憬があった。
「昔からアメリカが好きで、漠然とした憧れがありました。なかでも心を奪われたのは『チャンピオン』のリバースウィーブ。生地の縮みを防ぐために生地の目を横に使うという理にかなった構造もそうですし、アメリカ全米の学校のプリントが入るようなアイテムって、スウェットとTシャツが代表的です。そういう生活に寄り添うアイテムという点にも惹かれますし、何より気兼ねなく着られるのも良いですよね。そういうところから自然とカットソーにフォーカスしたモノづくりをするようになっていきました」。
元々はフリーランスのデザイナーであったため、ヴィンテージのディテールを踏襲したスウェットシャツやTシャツを自らデザインして製造。メーカーとしてOEMを請け負うことも。世界的ファッションイベント「ピッティ・ウオモ」への出展など、着実にブランドを成長させてきた。しかし、彼の探究心はさらに深いところへと向かっていく。
「カットソーを掘り下げると、生地や編み機、そしてその先には“綿”があります。自分のなかでアメリカのスウェットといえば“杢”というイメージが強くて。杢は簡単にいえば、2色の糸が混ざったムラ感のある生地を指しますが、2色の糸を編み立てるのか、綿の段階でブレンドして作るのかによって生地の表情は変わります。そういったところに興味が湧いてきて、“ウチだけの杢を作りたい”と思うようになりました」。
そうして実際に各地の紡績工場や生地屋を回り、関係を構築。綿の開発から携わり、生み出されるのが「ライディングハイ」のプロダクトだ。あくまでも街着、そしてファッションアイテムとしてのカットソーが彼の信条である。
「個人としての目標は、糸を見ただけでそこからできる生地が想像できる人になりたい(笑)。ブランドとしては『FUTURE VINTAGE』をテーマにしています。将来的にヴィンテージとして受け継がれていくような、高いクオリティとストーリーを持ったプロダクトを生み出し続けることがブランドとしての最大の目標です」。



【問い合わせ】
ライディングハイ
TEL03-5773-1733
https://www.riding-high.com/
(出典/2nd 2025年11月号 Vol.214」)
Photo/Makoto Tanaka Text/Kihiro Minami
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