ジャパンデニムの立役者・山根英彦こそ、バリバリのアイビーボーイだったって知ってる?

今でこそワールドベーシックとなったジャパンデニム。その火付け役でもあり、日本デニム業界のレジェンドとして知られる山根英彦さん。彼のファッションの根底には、常にアイビーが宿っていることを知る人はそう多くない。旧きよきメンズショップを彷彿させる「カレッジ京都」には山根さん流の解釈がされたアイビーアイテムがぎっしり。そこは彼が若かりし頃に足繁く通った伝説のメンズショップを凌駕するアイビーな世界が広がる。山根さんが語る”不良のアイビー”を紐解いてみよう。

可愛いアイビーでなく “不良”のアイビー

デザイナー・山根英彦|1991年に高品質な日本製デニムを発表して以来、ジャパンデニム界のレジェンドとして多くの功績を残してきた日本のファッション界の重鎮。ファッションに目覚めた頃には、すでにアイビーへと傾倒していた

ジャパンデニムの立役者のひとりであり、業界の重鎮として、世界的に名の知れる山根英彦さん。1991年にエヴィスジーンズを立ち上げ、2021年、創業30年の節目に二代目へと経営を譲り、退任。現在は、「ヤマネジャパニーズデニムズ」として、大阪、京都、東京にて、いかにも服道楽らしい旧きよき時代の“洋服屋”を手掛ける。ジャパンデニムのクオリティの高さを世界的に広めたジーンズメーカーの創業者という印象が強い山根さんだが、ファッションのバックボーンは、バリバリのアイビーであることは意外と知られていない。

「中学に入学して物心ついて、洋服に興味持ったころ、わしらのころて、ファッション言うたらアイビーしかなかったしなぁ。アイビーでも不良っぽいのはヤンキー言われててん。今のヤンキーとはちょっとちゃうけど不良の語源? ヤンキーゆうのんは、戦後の進駐アメリカ人のことやったんやろ。ジーパンに赤いジャンパー着てるやつは基本ヤンキー。要するにジェームス・ディーンやろ。当時、アイビー言うたら、まだVANがあって、可愛らしくて良い子ちゃんのイメージ。みんなVAN着てたし、わしはどうも好きになれんかった。中学の時ボタンダウンシャツはリンカーン派やったし、靴は神戸のボンドでこーたBASS履いとったな」

山根さんがファッションの影響を受けたのは中学のころ剣道部の先輩の兄貴から。その兄貴がバリバリお洒落な人だったという。いわゆる正統派アイビーというわけではなく、アイビーのなかの不良で、ここで言うヤンキーだったという。そして、のちに関西屈指のメンズショップ「ナカガワ」に就職することになる。

「わしの世代が、VAN世代の最後のほうで、わしらが高校時代に『Made in USA catalog』やら『POPEYE』やらできて、東京にビームスができて、西海岸ブーム、サーファーブームがきて、アメリカファッションも多様化されたことからひと括りにアメリカンカジュアル、所謂アメカジゆう言葉ができたんやろな。つまりはアイビーゆうのんはアメカジの一部門やったゆうことやねん。

しかも一企業が仕掛けたファッションムーブメントやんけ。その仕掛けられたムーブメントに、わしらはなんか違和感を感じたんやろな。VANショップいくより、舶来もん売っている店のほうがカッコええなて、感覚的に思うたんは事実やで。そのほんまもんのアイビーを教えてくれたんが『TAKE IVY』ゆう写真集やんけ。いまだに新鮮やしな。

昔な、ナカガワに入社したころ、アイビートラッドは、ジーパン穿いたらあかんて、取引先の社長に怒られたんやけど『TAKE IVY』のなかでジーパン穿いてるやつのページ見せて、ほんまもんのアイビーリーガーはジーパン穿いてまっせ、ゆうたったら、そいつはアイビーリーガーちゃうとか抜かしよって、腹立つからそこのメーカーのん全部パッキンに詰めて倉庫に放り込んだった(笑)。懐かしいわぁ」

昔からアイビー一色だった山根さん。31歳で独立し、自分の好きな服だけを置く“洋服屋”を開業。スタート時のメインの商材はボタンダウンシャツとバミューダパンツ、ネイビーブレザー。しばらくしてジーンズが仕上がり、そのジーンズこそが世界を席巻したエヴィスジーンズだ。

「わしからしたらジーパンもボタンダウンもバミューダもブレザーも、みんなおんなじ大事なモンなんや」

「カレッジ京都」には山根さん流の解釈がされたアイビーアイテムがぎっしり。そこは彼が若かりし頃に足繁く通った伝説のメンズショップを凌駕するアイビーな世界が広がる

「カレッジ京都」で見つかるアイビーアイテム

古都・京都にて山根さんが手掛けるショップ「カレッジ京都」では、山根さんなりの解釈のもと、デニムで仕立てたテーラードジャケットやクラシカルなボタンダウンシャツ、丁寧な作りのレザーシューズなど、アイビーなアイテムが豊富に揃う。最近では山根さん自ら描くアートTシャツなどもショップを代表するアイテムとなっており、カレッジ京都から徒歩5分の「山根新京極」や「ヤマネジャパニーズデニムズ御徒町東京」など新店ラッシュが続いている。

黒×赤コンビがヤンチャなアイビーの印象

山根靴店の新作はキップレザーを使用した日本製のサドルシューズ。日本人の足に馴染みやすい昔ながらの木型を採用し、クラシカルなフォルムに仕上がっている。6万6000円

アメリカ東海岸と言えばこんな小紋柄のイメージ

小紋柄のプリントが施されたコットン製のトラウザーズ。ワタリ部分はゆったりとしているものの、膝からややテーパードするシルエットですっきりとした印象。2万2000円

メイド・イン・ジャパンの丁寧な作りがひと目でわかる

コンビカラーの多いサドルシューズが単色になるだけでエレガントに。山根靴店らしいコバの張り出しもしっかり表現されたグッドイヤーウェルト製法による1足。6万6000円

カジュアルタイドアップに相性抜群な幅広ニットタイ

アイビースタイルに欠かせないニットタイも幅広な大剣で迫力のあるデザインが、実に山根さんらしい。ベーシックから派手色までバリエーション豊富な6色展開。1万9800円

これでTAKE IVYの世界にタイムスリップ

TAKE IVYに出てきそうなビビッドイエローのフードジャケットは完全防水のレインコート。フロントにはダブルファスナーが装着され、リバーシブルでも着用可。2万2000円

【DATA】
COLLEGE
京都府京都市中京区恵比須町444
TEL090-8803-2021
営業12:00〜20:00
休み/不定休
https://yamaneart.base.shop

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2023年11月号 Vol.199」

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

この冬買うべきは、主役になるピーコートとアウターの影の立役者インナースウェット、この2つ。

  • 2025.11.15

冬の主役と言えばヘビーアウター。クラシックなピーコートがあればそれだけで様になる。そしてどんなアウターをも引き立ててくれるインナースウェット、これは必需品。この2つさえあれば今年の冬は着回しがずっと楽しく、幅広くなるはずだ。この冬をともに過ごす相棒選びの参考になれば、これ幸い。 「Golden Be...

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

Pick Up おすすめ記事

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...