世界で最もケネディを知ることができる場所へ行ってきた

ケネディ大統領を知る上で、外すことのできない場所がここ「ジョン・F・ケネディ大統領図書館・博物館」。彼の生涯と功績、当時のアメリカ、ケネディに関することは全てここで学べる。

ケネディの生涯と当時の活気を学ぶ

ケネディが大統領在任期間中に力を注いだことのひとつが宇宙開発。アメリカ人を10年以内に月へ着陸させることを目標とした「ムーンショットチャレンジ」などケネディと宇宙に関する展示されている

ケネディが生まれ育った場所マサチューセッツ州のボストンにある「ジョン・F・ケネディ大統領図書館・博物館」はアメリカ合衆国内に存在する16の大統領記念図書館のうちのひとつ。海を愛したことでも知られる彼の記念図書館は、ドーチェスター湾を一望できる気持ちの良い丘の上に建てられている。

ケネディ家にまつわる家具や彫刻、洋服が展示されている。正面の一番奥に見える緑色のドレスはジャクリーン夫人が実際に愛用していたものである

図書館は1979年10月20日に開館し、来年で45周年を迎える。青い空に映える、白を基調とした美しい建物は、ルーブル美術館の『ガラスのピラミッド』でも知られる建築家I・M・ペイによって設計されたものだ。博物館には、ケネディ大統領の幼少期から1963年11月22日の大統領職最後の日までのことや、当時のリアルなアメリカが写真や映像、ゆかりのある物品などと共に展示されている。

展示してある机はケネディが通ったチョートスクールで 1940年頃に実際に使用されていたもの

今年でケネディ没後60年という節目の年を迎える今日も、観光客を含む多くの人が訪れる場所になっている。アメリカで最も愛された大統領、ジョン・F・ケネディを世界で最も知ることができるのは間違いなくこの場所だろう。

机の上に置かれているのはチョートスクール時代の通知表。そこには成績のムラが激しかったケネディへの注意が書かれている。「若くリーダーシップ溢れるアメリカの大統領」という立派な肩書きからは想像できないケネディの人間臭い一面に、親近感の湧く展示だ
ケネディが大統領を務めた1960年代、当時の家電量販店をイメージした展示からその時代の生活を知ることができる。当時使われていたリアルな家電が並ぶ
第35代大統領選期間中に着用された、本物のドレスが展示されている。同じドレスを身にまとい、パレードをする様子の写真からは、当時の活気が伝わる
大統領選挙期間中のケネディの選挙事務所の机を再現した展示。当時使用されていた黒電話やタイプライターなど時代を感じるリアルな展示だ
机に並べられているのは選挙キャンペーンの際に使用されていたオリジナルのグッズ。缶バッジや、ステッカー、ネクタイピンやレコードなど様々なグッズが製作されていた
大統領選挙初となるテレビ討論会が行われたのが第35代大統領選挙。ジョン F. ケネディとリチャード・ニクソンのテレビ討論会の録音スタジオを再現した展示。白黒テレビであったが、ケネディは紺のスーツと赤のネクタイの色のコントラストを用いて若々しさを表現した
テレビ討論会の撮影の様子を写した写真

ケネディを知る上で重要なふたつの展示品

父親から贈られた愛船「ヴィクトゥーラ」

毎年、暖かい季節になると図書館の前に現れるこのヨットはケネディがその生涯で最も愛した船「ヴィクトゥーラ」だ。このヨットはケネディが15歳の誕生日に父親より贈られた人生において2艘目となる船。名前はラテン語で「勝利」という意味を持つ。ケネディはこのヨットを操縦し数々のレースで勝利を収めてきた。まさに「ヴィクトゥーラ」の名がふさわしい船だ。

「ヴィクトゥーラ」に乗ったケネディと弟のテッドの様子。ケネディは家族や兄弟と共によくヨットに乗っていたという

大統領在任中も家族全員でよくこのヨットに乗っており、子どもたちにヨットを教える際にもこの「ヴィクトゥーラ」を使用していた。ケネディ大統領は会議中、よくノートに落書きをしていたが、その題材にしていたのも、この「ヴィクトゥーラ」だ。当時ケネディが書いていた落書きは現在も博物館に展示されている。元米海軍であり、セーラーでもある彼は、歴代の大統領の中でも最も、海を愛した大統領だ。

ケネディ大統領が会議中に描いた「ヴィクトゥーラ」。船の落書きはこの一枚だけではないことから、公務中に様々な場所で海のことを考えていたことが分かる。本当に海が好きだったことが伝わってくる展示だ

船員たちを救った「ココヤシの実」

1943年8月1日の夜、日本の駆逐艦「天霧」がケネディが艦長を務める魚雷艇「PT-109」に衝突、船は沈没する。その際に部下2名を失うも怪我を負った仲間をロープで繋ぎ、歯で咥えて近くの島まで他の船員と共に泳ぎきる。敵国の船が近くにいる以上派手な行動はできない。

そんな状況下でケネディは島にあったココヤシの実にメッセージを書き、現地住民のビクとエローニのふたりに託す。同盟国であったオーストラリア側にそのココヤシの実が渡され、ケネディたちは救助されることとなる。船を破壊され、通信手段のない状態で死者2名を出すも、ケネディを含め11人が生還した。この行動は米国海軍で英雄的行為として表彰される。

戦後、衝突した日本の駆逐艦「天霧」の艦長と再会を願い調査を開始し、その人は花見弘平であると突き止め、文通を開始する。このエピソードは大統領選において「昨日の敵は今日の友」という美談として紹介される。

メッセージの書かれたココヤシの実は戦後、父親の手によって回収される。木枠に入れられた実はペーパーウエイトとして大統領執務室の机の上に置かれていた。JFK大統領図書館・博物館のミュージアムショップにはココヤシの実を模したペーパーウエイトの販売がされている

ケネディが今も愛され続けている理由

「JFK大統領図書館・博物館」館長 アラン・プライスさん|2018年からJFK大統領図書館・博物館の館長を務める。ケネディが設立をした平和部隊のアソシエイトディレクターの経験を持つ

2023年、アメリカである世論調査の結果が発表された。過去約半世紀における大統領の人気調査だ。結果は約90%が指示すると答えた第35代大統領のケネディが1位を獲得。2位はレーガン大統領で支持率69%と大差をつけた勝利した。なぜ、現代のアメリカにおいてもケネディは支持されているのか、人々の記憶に残り、今も愛され続けているのか。ジョン・F・ケネディ大統領図書館・博物館の館長であるアラン・プライスに聞いた。

大統領就任演説を行うケネディ大統領。真冬のアメリカでコートを脱ぎ力強く世界のこと、アメリカの未来について語った

「1960年代、彼は国民の想像力を掻き立て、私たちみんなが力を合わせれば、未来には無限の可能性があることを信じさせました。多くのアメリカ人にとって大統領就任演説の『あなたの国があなたのため に何ができるかを問うのではなく、あなたがあなたの国のために何ができるのかを問うてほしい』という言葉は今も国民の心に刻まれています」

1961年9月22日平和部隊が正式に設立。初代長官に義弟のシュライバーを任命した

選挙という形で選ばれた大統領として最年少であるケネディ。幼少期の頃から夢を語る少年であったと聞くが、当時のアメリカ国民にとって未来の希望を語るケネディは、次の世代のためによりよい国を作るという気持ちを強く意識させた。

米国初の有人宇宙飛行を成功させたフレンドシップ7号の視察をするケネディ

「ケネディ大統領は10年以内にアメリカ人が月に到達するという『ムーンショットチャレンジ』を宣言しました。それから8年後の1969年7月にアポロ11号はとうとう月面への着陸を成功させます。彼はその達成を目の当たりにすることはできませんでしたが、このプロジェクトが成功したのは、ケネディ大統領自身が夢を見て、グループを鼓舞し、巨大なプロジェクトに臨める環境を整えてくれたのが大きいと思います。他にも平和部隊やキューバ危機などまだまだケネディの功績は語りきれませんね」

アラン・プライスに語った「ケネディが愛される理由」には、それまでのアメリカにはない新しいことに挑戦をする、夢を語るケネディの姿があった。

JFK大統領図書館にはケネディが注力した宇宙開発についての展示もされている。マーキュリー計画のヘルメットが飾られている

【DATA】
JOHN F. KENNEDY PRESIDENTIAL LIBRARY AND MUSEUM
Columbia Point Boston MA 02125
TEL(617) 514-1600
営業/10:00〜17:00
休み/なし

(出典/「2nd 2023年11月号 Vol.199」

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