「アイビーパンツ」と言えば、素材はコットンのチノかウールのフランネル。いずれもアイビーらしいシルエットやディテールは共通しているが、カラーや生地など他のアイテムに比べて自由度は高いと言えるだろう。
特にチノパンツは、ブレザーやBDシャツ、 どんなアイテムに合わせてもカジュアルと上品さのバランスが完璧だ。アイビーをより深く知るために詳しく見ていこう。
パンツのアイビー必携のディテールはこの5つ
1.シルエット
アイビーらしいシルエットはやや複雑だ。原初的なアイビーに徹するならパイプドステム(ストレート)が適しているが、やや細めのテーパードシルエットもトラディショナルの範疇。少なくとも極端に太すぎたり細すぎたりするものはアイビーの文脈から見れば離れてしまうだろう。
クラシカルなディテールである尾錠がついていると、一層アイビー度は高まる。ピュアなアイビー好きにとっては、むしろこれがないとアイビーパンツと認めない場合も。
2.バックポケット
バックポケットの切り口に施されるパイピング処理が下側にのみついているもの。両玉縁と、どちらがよりアイビーだということはない。
バックポケットの切り口に施されるパイピング処理が上下いずれにもついているもの。より手間のかかるディテールとされている。
3.サイドポケット
サイドシームに対して開口部が斜めに入ったポケット。物の出し入れを行いやすく、より実用性が高い分、カジュアルな意匠と言える。
開口部がサイドシーム(両脇の縫い目)に沿って配されたサイドポケットのこと。ポケットが目立ちづらく、ミニマルで上品な印象に。
4.プリーツ
フロントにプリーツが2本入ったツープリーツ。ノープリーツに比べてエレガントなディテールで、腰回りのシルエットは太めになる。
腰回りがスッキリして見える、プリーツなしのプレーンな仕様。比較的細身にすっきりと見せたい場合はこちらの方が適している。
5.裾
裾の折り返しがない仕様。足元がすっきりして見えるため、革靴などとも合わせやすくフォーマルなシーンでの着用にも向いている。
裾を折り返した仕様で、よりカジュアルに見える。ピュアなアイビーやプレッピー派たちは、よりこちらのほうを好む傾向にある。
パンツの起源とは?
チノパンの出自は比較的有名だ。舞台は19世紀半ばの英国。英国軍司令官だったハリー・ラムデン卿が、すぐに汚れてしまう白い軍服を、土の色に近づけるべくカレー粉やコーヒーなどを使ってカーキ(今で言うベージュ)に染めたことが始まり。
その後カモフラージュの効果なども認められ英国軍が制式採用。しかし英国で過剰に生産された末、それが中国へと輸出されることになる。次にその軍服を中国(スペイン語でチノーズ)から買い占めるのは、アメリカだった。そして、名作とされる[M-41カーキ]の誕生へとつながっていく。
一方フランネルパンツに関しては、正確な出自はやや不明瞭である。ただ、約500年ほど前には、すでにフランネルに類似している織物が見つかっていることや、もともとは夏用の素材であり、ルネ・ラコステがウィンブルドンで着用していたことなどが分かっている。
綾織りって何? 知っておきたいチノ素材
チノ素材のことを知るうえで、マストで知っておかなくてはならないのが、平織りと綾織りの違い。先に言っておくとチノ素材は「綾織り」である。
綾織り
例えば、経糸1本につき緯糸2本など、複数本を飛ばして織っていくと綾織りになる。生地には斜線のような畝が入る。右上がりが右綾、左上がりが左綾。
平織り
経糸1本と横糸1本を、交互に交差させて作るシンプルな織物。糸同士の隙間が多いため、薄手になりがちで、春夏素材に向く。オックスフォードも平織り。
素朴な質感でイナたい雰囲気の「チノクロス」
単糸・左綾の組み合わせで作られる生地。素朴な質感で、穿くほどにクタクタになっていく。そのヤレた質感が好きという人も。本来、純粋な“チノパン”はこちらを指すのかも?
より堅牢で光沢のある上質な生地「ウエポン」
双糸・右綾。より丈夫で光沢感のある生地。穿き込むとヌメッとした質感になっていく。もとはエリート校である米陸軍ウエスト・ポイント士官学校で使われていた素材である。
パイプドステムをワンクッションで履くべし!
王道アイビースタイルを死守したいのならば、パイプドステム(ストレート)で、ノープリーツのパンツを、ワンクッション(裾が甲に当たるか当たらないかぐらい)で穿くのが理想的だそうなのだ。穂積和夫著『絵本アイビー図鑑』(万来舎)より。
パンツのウール素材は「フランネル&メルトン」「サキソニー」
【フランネル&メルトン】秋冬の大定番、暖かみのある素材感
繊維をあえて不均一な状態で糸にした紡毛(ぼうもう)を、平織りもしくは綾織りで織り上げ、縮絨加工、起毛を施した毛織物。大まかには薄手で柔らかいものをフランネル、厚手で光沢感のあるものをメルトンと呼ぶ。糸の太さや目付以外は、基本的に同じものであると考えてよい。
【サキソニー】「紡毛、縮絨、起毛」の代表3素材の中で最も艶っぽい
フランネルやメルトンと同様に、縮絨加工で圧力をかけてフェルト状にしているがサキソニーは綾織りという点が決定的な違い。同じく起毛素材だが薄手で軽く、艶やかで高級感があるためスーツにもよく使われている。ドイツのサキソニー地方で作られていたことに由来する。
「チノパン屋」本江さんが衝撃を受けた知っておくべき名作チノパン3選
1.Polo Ralph Lauren
91年リリースの[ビッグチノ]。「それまでパンツは1インチ刻みが常識だったから、『こんなに太いパンツを穿かせていいんだったら2インチ刻みでもいいのでは?』と常識が覆りました」
2.BASCO
「1970〜80年代のブランド。それまでミリタリー系のチノと言えば、放出品のイメージでしかなかったんですが、軍モノを再現した〈バスコ〉のパンツが百貨店に並んでた。当時は衝撃でした」
3.BRITISH KHAKI
「80年代の〈ブリティッシュカーキ〉製。ウエポンじゃない昔ながらのチノクロスをあえて打ち出していて。ちゃんとした生地でちゃんとしたものを作らなくちゃって気持ちから解放された」
2nd編集部がおすすめする、アイビーチノ8選
1.KINGSWOOD(キングスウッド)
Material: Cotton
Twill Price: ¥18,480
パイプのようにウエストからボトムまでがまっすぐなシルエット。毛羽立ちの少ないコーマ糸を使ったチノクロス生地を採用し、穿き込むごとに風合いが増す。(メインTEL03-3264-3738)
2.BARNSTORMER(バーンストーマー)
Material: West Point Chino
Price: ¥23,100
米陸軍士官学校の制服に採用されたウェポン生地に、当時の樹脂を凍らせながら浸透させるコールドマーセ加工でパリッとした質感を実現。シルエットはやや太め。(ヘムトPR TEL03-6721-0882)
3.Pt. Alfred(Pt.アルフレッド)
Material: West Point Chino
Price: ¥19,800
7型もあるブランドの定番モデルの1つ。毛羽立ちの少ないコーマ糸を限界まで打ち込んだウエポン生地で耐久性抜群。シルエットはベーシックなストレート。(Pt.アルフレッド(TEL03-3477-7952)
4.ALL AMERICAN KHAKIS(オールアメリカンカーキ)
Material: Cotton Twill
Price: ¥24,200
大戦時の米軍に使用された軍用生地を改良したコットンツイル地を使用。シルエットは高めのウエストラインからまっすぐ落ちるスリムストレート。(ユーソニアングッズストアTEL03-5410-1776)
5.ENGINEERED GARMENTS(エンジニアド ガーメンツ)
Material: Cotton Twill
Price: ¥38,500
シルエットはワンプリーツのテーパードで裾はターンアップ仕様。背面にバックヨーク、シートピースを施すことで程よいフィット感を実現。(エンジニアド ガーメンツTEL03-6419-1798)
6.D.C.WHITE(ディーシーホワイト)
Material: Wool Melton
Price: ¥26,400
肉厚なメルトン素材を用いた存在感のある1本。ベルトループのないサイドアジャスター仕様でタックインに最適。シルエットはやや太めのテーパード。(ステイオアゴーデスクTEL03-6447-5095)
7.J.PRESS ORIGINALS(Jプレス オリジナルス)
Material: Wool Saxony
Price: ¥29,700
保温性、通気性に優れたウールサキソニー100%の定番。メイドインジャパンのストレートシルエットで裾はダブル仕様。背面にはバックストラップ付き。(J.プレス&サンズ 青山TEL03-6805-0315)
8.BERNARD ZINS(ベルナール ザンス)
Material: Wool Flannel
Price: ¥58,300
フランスの高級パンツ専業ブランドとの別注。2インタックのクラシカルな雰囲気と、フランネルの柔らかな風合いが絶妙にマッチ。シルエットはストレート。(ビームスF TEL03-3470-3946)
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
Photo/Yuco Nakamura, Yoshika Amino Styling/Shogo Yoshimura, Shun Iizuka Text/2nd Magazine Hair&Make/Daisuke Yamada
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