トレンドを先読みして新たな視点で別注する。
セレクトショップのG.B.ガファスでプレスを務める漆畑博紀さんと、イエローズプラスのデザイナーである山岸稔明さん。25年以上の付き合いというメガネ巧者ふたりに、近年ヒットした別注モデルについて語ってもらった。
漆畑/[グラント]はもともとアセテート素材ですが、はじめてセルロイドで別注しました。世界初の人工プラスチックと言われるセルロイドは、旧きよきメガネ素材として知られていて、オプティシャンとしては、一度は挑戦したい素材だったんです。
山岸/セルロイドは堅牢で傷がつきにくく、長く使っても形崩れしにくいため、メガネの素材として優れていると感じていました。ただ、製造工程で発火がしやすく、保管や加工が困難なため、いまでは扱える工場が減少しています。別注モデルでは硬いセルロイドの特性を活かして、テンプルに芯を入れずに強度を持たせる設計でしたが、オリジナルの雰囲気を崩さないように、厚みなどをコンマ1㎜単位で調整しています。セルロイドははじめて扱う素材でしたが、素材が変わるとアプローチも変わり、いい勉強になりました。
漆畑/ラウンドの[マーロン-S]は初のサイズ別注でした。実は2年ほど前から太セルのトレンドがジワジワときていましたが、当時の市場はどれもメンズ目線の大振りサイズが中心。女性に提案できるものがほしくて、1サイズダウンでお願いしたのです。
山岸/ベストな選択だと思います。自分でも手探りでデザインしているところがあり、女性が太セルのような強いデザイン好む傾向があることに驚きました。
漆畑/前回が好評だったので、[オスカー]で2度目のセルロイドを別注。ちょうどクラウンパントの人気が定着しはじめた時期だったので、スペシャルなセルロイド製があってもいいのかなと。
山岸/セルロイドはアセテートと違って少し濁っているというか、暗い色の生地が多かったのが自分としては発見でした。イエローズプラスは海外マーケットが中心のため鮮やかな色を選びがちです。でも、渋めのダークトーンのセルロイドフレームが並んだときにカッコいいなと感じました。
漆畑/希少なセルロイドはお客様に素材の良さや違いを伝えやすいんですよ。おかげさまで[オスカー]は発表後すぐに完売。あまりに人気があったため、その後に再生産されました。
山岸/今年に発表した④[セルジュ]では、はじめて型からおこした完全オリジナル別注になりました。どうして違う形をつくりたいと思ったんでしょうか?
漆畑/絶対にほかの店では買えない特別なイエローズプラスをつくりたかったんです(笑)。肉厚な8㎜ のアセテート生地を使って、フレンチテイストなラウンドシェイプを依頼。それも男性も女性も掛けられる万能なデザインやサイズ感というオーダーでした。
山岸/ベストなサイズ感に落とし込むことに苦戦しましたが、自分のイメージにはないものが生まれてきたのが新鮮でしたね。
漆畑/いままでに使用したことがない、四角い飾り鋲を採用していただきましたが、けっこう苦戦されていましたよね?
山岸/はい。昔の金型を使用して鋲を製造しますが、精度を出すのが難しくて……。鋲とフレームをツライチで揃えていますが、素材が違うため磨き過ぎるとアセテートが窪んでしまうんです。
漆畑/苦労された甲斐もあり、ほかにはない別注が誕生しました。
山岸/最新の別注モデル[アデル]では、素材に高密度アセテートと呼ばれる、薄くしても強度が保てる素材を使用しています。
漆畑/細く薄くできるため、女性が抜け感を出すアイテムとして使うものをイメージして、明るいデミ(マーブル)柄を別注しました。
山岸/既存モデルの色はどうしても黒やデミ柄などベーシックなものに落ち着きがちです、こういう変化球もユニークですね。
漆畑/G.B.ガファスからの別注は2012年からはじまり、11年目を迎えますね。山岸さんとは何度もやりとりを重ねてきているから、阿吽の呼吸というか、私たちが提案したいニュアンスを高い精度で実現してくれています。
山岸/ありがとうございます。別注モデルをつくることで、売り場やユーザーのニーズが見えてきますし、新しい技術や視点を得るきっかけにもなります。今後はイエローズプラスの枠から離れたものにも挑戦したいですね。
漆畑/また、新たに企画しますか(笑)。クラシックから離れたものもやってみたいですね。
【トピック①】海外でも人気のイエローズプラス。
イエローズプラスは、日本だけでなく海外でも人気が高い。現在、全世界で約550 店舗展開している。G.B.ガファスのECサイトは、「PayPal」も使用できるため、海外から購入する人も多いとか。
【トピック②】G.B.ガファスのECサイトは必見!
G.B.ガファスのECサイトでもイエローズプラスは購入できる。サイトにはブランドの背景からデザインやディテールの詳細、サイズ表記まで、独自に深堀りした情報が満載! メガネ好きは必見だ。
【問い合わせ】
G.B. ガファス
TEL03-6427-6989
https://decora-gbg-online.com/
(出典/「2nd 2023年9月号 Vol.198」)
Photo/Ryota Yukitake Text/Takano Fujii
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