アイビー好きが選ぶべきバッグの答え合わせを。
1960年代、ロサンジェルスのダウンタウン中心地に「フェイマスデパートメントストア」という百貨店がオープンした。アウトドアプロダクツ創業者アルトシュール兄弟の父親がオープンさせたこの店は、ミリタリーの払い下げ品からテント、キャンピングカーなど、高級アウトドア用品を販売していた。
同店で働いていたアルトシュール兄弟は、「アウトドア愛好家に必要なギアはたくさん揃っているけれど、彼らが普段使いできる高品質な日用品がない」ことに着目。そうして立ち上げられたのがアウトドアプロダクツだった。バッグはもちろん、寝袋、レインウエアなども展開していた。
「デイパック」と聞けば、皆があの「かまぼこ型」を思い浮かべるだろう。二本のストラップで背負うタイプの、一日用の荷物が入る程度のシンプルなバッグだ。このデザインの原型を作りあげたのは、実はアウトドアプロダクツである。1970年代のアメリカは、労働条件の改善が強く訴えられた時期であった。
そこで、当時の生産管理者であったザリ・エイドリアン氏が「シンプル・軽量・丈夫、そしてリーズナブル」という使命を掲げて開発したのが「かまぼこ型」のデザインである。ボディに使う生地はなんと二枚のみ。生地の取り効率は悪いが、縫製量が圧倒的に抑えられる画期的なデザインであった。のちに[452U] のモデル名を冠するこのデザインは瞬く間に全米へ広がっていく。
1980年代初頭には、全米の大学生協にアウトドアプロダクツのデイパックが、それぞれの大学のロゴ入りで並んでいた。そのころ日本は、創刊直後の『ポパイ』 が生み出した「アイビーブーム」の真っただ中。「アメリカの大学生がリアルに使っているもの」として同誌に紹介されたアウトドアプロダクツのバッグに、アイビー好きの日本人が食いつかないわけがなかった。
こうして日本では 「カレッジ系アイテム」としての側面だけが脚光を浴びた。一方アメリカでは、舞台をスポーツ界にまで広げていた。NFL、NBA、NHLの全チームとライセンス契約を締結。チームロゴ入りのバッグを販売し、スポーツファンの間でもその存在が知れ渡っていく。この印象があるためか、アメリカ国内では2022年の現在も「スポーツ系バッグ」としての認識強いようだ。
日本では先にも述べたように、「カレッジもの」としての認知から始まり、今日でファッションブランドとして広く愛されている。 色のカラバリ&7通りのサイズ展開や、たくさんのブランドとのコラボ商品など、大衆に広がりすぎたために、本来の「アイビー」の文脈を知る人が少なくなっているように感じるが、アイビー好きならアウトドアプロダクツを選ぶべきだということが、これで分かっていただけただろう。
80年代初頭には、全米の大学にアウトドアプロダクツのデイパックが並んでいた。
ここからは年表を見ながら、アウトドアプロダクツの歴史に迫っていこう。
1960年代|百貨店「Famous Department Store」オープン。
LAで創業した「FDS」は、西海岸初の百貨店でもあった。ミリタリーの払い下げ品からテント、キャンピングカーまで、アウトドア用品を中心とした本格的かつ豊富なセレクトを誇っていた。
1970年|オリジナル商品の販売をスタート。
「FDS」創業者の息子にあたるアルトシュール兄弟の発案により、「本格アウトドアシーンで活躍する人たちが、日用品として普段使いできるもの」をコンセプトにオリジナル商品の展開をスタート。
1974年|デイパックの原型となるバッグを考案。
労働組合運動の最盛期において工賃を下げるべく、当時の生産管理者ザリ・エイドリアン氏がパーツや縫製量を最大限に抑えたパターンを考案。デイパックの元祖となる。
1980年|全米の大学へ展開を広げていく。
アイビーリーグを含む全米の大学生協で販売されるようになる。なんと100以上の大学とライセンスを締結し、大学ロゴのカスタムサービスも開始。創刊直後の『ポパイ』が紹介した影響で、日本でも「アイビーの定番バッグ=アウトドアプロダクツ」という認識が広まる。
1987年|モデル名に452Uと冠する。日本にも上陸を果たす。
現在もアイコンモデルとして愛されている[452U]の名を冠したモデルが初登場したのはこのあたり。80年代後半のこの頃には正式に日本上陸も果たし、「デイパックの代名詞」として広まっていく。
1990年代|NFL/NBA/NHL全チームとライセンス契約。
大学のみならず、舞台はスポーツ界へ。NFL、NBA、NHLの全チームとライセンスを締結し、スポーツファンの間でもその存在が広く知れ渡っていく。
2020年代|バリエーションを多数展開。さらに多くの人に認知されるように。
日本では当時もいまもファッションアイテムとしての認識が強く、多くのファッションブランドとコラボしたり、7つのサイズバリエーションを展開したりと、本国にはない取り組みを行っている。
タグにも歴史あり。
1978年
「樹木のように土地に根を張り、環境と共存するように」との願いが込められた、躍動感に溢れる最初期ロゴ。
1983年
後ろに進んだり歩くことのできない鳥のなかでも、特に高く飛ぶヒバリをモチーフに「向上」の願いを込めた。
1987年
現在のロゴの原型はこの年に生まれていた。 90年代初期以降は「PRODUCTS」 の字間がもっと広くなる。
1997年
現在展開中の製品において、もっとも馴染み深いのがこのロゴ。®マークが「R」の右横に大きめに配置される。
2004年
ロゴの歴史において、こちらがもっとも新しい。これからもよりいい製品を作り続けるという熱意が込められた。
現行品の、デイパックとロールボストン。
DAYPACK
1974年ごろに原型となる形が登場して以来、今日までブランドの顔であり続ける定番モデル。アウトドアプロダクツに限らず「デイパック」と総称されるこの形は、このシリーズこそが生みの親である。ロールボストンのカラーも加えて12色展開。モデル着用はMEDIUMサイズ。X-SMALLから小さい順に4180円、4620円、5280円、7480円、8800円、1万780円(アウトドアプロダクツ カスタマーセンターTEL06-6948-0152)
ROLL BOSTON
実は[デイパック]よりも旧い歴史を持つ[ロールボストン]も、アウトドアプロダクツのアイコンモデル。デイパック同様、パーツと縫製量を最大限に抑えながらも、コーデュラナイロンとYKKジップで堅牢なつくり。手持ちと肩掛けの2 WAYで楽しめる。デイパック同様12色展開。モデル着用は X-LARGE。X-SMALLから小さい順に2750円、3080円、3850円、4180円、6380円、8580円(アウトドアプロダクツ カスタマーセンター)
※情報は取材当時のものです。
(出典/「2nd 2023年1月号 Vol.190」)
Photo/Kenichiro Higa(Model), Yoshika Amino (Items) Styling/Shogo Yoshimura Hair&Make/Kazuki Fujiwara Text/Shuhei Takano Model/Chris
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