自分らしさとは、独自の価値観と千里眼を養うことであり、 装いに磨きをかけることであり、それらを通じて命の尊さを省みることである。 命の尊さを省みるときには、頼もしい仲間が必要となるだろう。 この世界には、偉大なる名品がいくつもあるのだ。そんなトラッドスタイルに欠かせない、10のアイテムを紹介する。これさえあればトラッドは完璧だ。
1.ブルックス ブラザーズのブレザー
利益は、有意義なモノ・行為・人間関係に投資した 結果として得られるものだ。ここで言う利益とは、 必ずしも金銭的なものに限らない。むしろ、琴線的なものの方が得られる喜びは深く、持続可能性も高い。そして、人生には有意義なモノが起点となって有意義な行為に結びつき、有意義な人間関係をもたらすという黄金のサイクルがある。
ブルックス ブラザーズのブレザーは、その起点になり得る。すなわち、すば抜けて投資対効果が高い。段返り3つボタン、ナチュラルショルダー、ボックスシルエット。これらが相まった姿は、きちんとしているが堅すぎない印象。幅広い着こなしに合わせられるという意味でも投資対効果は高い。
2.ブルックス ブラザーズのポロカラーシャツ
創業者の孫であるジョン・E・ブルックスが英国でポロ競技を観戦した際、ユニフォームの襟が風でなびかないようにボタンで留められていたことにヒントを得て誕生したボタンダウンシャツ。1896年の発売以来、 ブルックス ブラザーズでは伝統的に[ポロカラーシャツ]と呼んできた。
ファッション業界には星の数ほど商品が存在しているけれど、永世定番という称号がこれほど相応しいアイテムはない。広告制作によって得た初めての報酬を白いポロカラーシャツ100枚の購入に充てるという伝説を遺したのは、アンディ・ウォーホルだ。自分なら、このシャツで、どのような伝説を遺せるか。人生の宿題として楽しんでみてはどうだ。
3.バブアーのビデイル
自分自身をいかにモチベートするか。自らを発奮させて行動を促すものとは何か。英国紳士の場合、バブアーの[ビデイル] を着れば、上流階級の血が騒ぐ。上流階級ではなく、クイーンズイングリッシュと言われる洗練された英語を話すわけでもない我々の場合、[ビデイル]を着ることの意味や意義とはどのようなものだろうか……。
いや、逆に恵まれているのは我々の側だと思う。民族性や階級制度や言語的慣習に縛られることのない我々は、着たい時に着たいように自由に[ビデイル]とつきあっていけばいいからだ。想像力次第、自分の器次第で、いかようにもなる。目の前にあるのは、無限の可能性である。
4.バラクータのG9
英国のマンチェスターでミラー家が1912年からレインジャケットの生産を行っていたのが起源。1937年、ジョンとアイザックの兄弟がバラクータ・ファクトリーへと工場の名前を改めた。この年がバラクータの創業年とされている。その後、ふたりはマンチェスターゴルフクラブ(1882年設立の名門ゴルフ場)に通いながら、安定したスイングでボールを打てる動きやすいジャケットの開発に着手。
そして生まれた[G9]の居場所は、ゴルフ場だけではなかった。例えば、ハーバードのキャンパスからパンクのステージまで。ジョン・F・ケネディからジョー・ストラマーまで、現実に屈することなく戦い続ける男の魂を包み込んできた。
5.クラークス オリジナルズのデザートブーツ
1825年、クラークスはサイラスとジェームスのクラーク兄弟によって設立された。デザートブーツの生みの親は、クラーク兄弟から数えて4代目のネイサン・クラーク。英国陸軍に従事していた彼が、エジプト・カイロのバザールでラフなスウェードブーツを履いていた非番の将校からヒントを得てデザインし、1950年に販売が開始された。
アッパーは英国のタンナー、チャールズ・F・ステッド社が供給するスウェード。木型は、現在まで変わることなく「220」を採用している。地面と接するのは、天然の生ゴムからつくられ適度な弾力性で歩きやすさを約束するクレープソールだ。いたってシンプルながら、非常に独創的。そして、普遍的。だからこそ、時代を超えて履き継がれてきた。
6.ジョン スメドレーのニットポロシャツ
16世紀後半に英国が西インド諸島を領有した際、王室とシーアイランドコットンは出会った。当時の女王エリザベス1世はシーアイランドコットンを門外不出の産品に定めて、シーツやネグリジェとして愛用したという。これぞ、シーアイランドコットンがロイヤル コットンとも称される由縁だ。
ジョン スメドレー社の誕生は1784年。ジョン・スメドレーと共同経営者のピーター・ナイチンゲールにより、イングランドのダービーシャー州に設立された。今年の6月にプラチナ・ジュビリー (即位70周年を祝う記念行事) を迎えた現女王のエリザベス2世からもロイヤルワラントを授与されている。壮大なるサーガは、これからも続いていく。
7.ジェイエムウエストンの180シグニチャーローファー
大統領などの要人をエスコートし、国賓に対する栄誉礼も行うなど、国家の風格や品格を一身に背負うかのような任務に就いているフランス共和国親衛隊。厳かにして華やかなパレードを先導する騎兵連隊が履いているのは、ジェイエ ムウエストンの乗馬ブーツだ。この事実ひとつからでも、母国におけるメゾンのポジショニングがよくわかる。
まさにフランスを代表するメゾンであり、そのフラッグシップモデルが、[180 シグニチャーローファー]である。今作は、 1946年に誕生。以来、同じ木型を使ってリモージュの工場にてグッドイヤーウェルテッド製法で作られてきた。カモメ型に象られたサドルストラップが世界中で美しく羽ばたいている。
8.セント ジェームスのバスクシャツ
1980年代に日本でフレンチアイビーおよびボーダーシャツブームの先兵にしてラスボスとなり、我々の記憶に横縞の鮮烈な印象を刻み込んだセント ジェームス。いま、また当時と同じようにフレンチとボーダーの人気が高まっているようだ。特に、かつての若者で現在40~50代になっている人にとっては、やはり、 このボーダー界のラスボス感がたまらなく愛おしく、他のブランドではどうにも替えが効かないのである。
また改めて、セント ジェームスのシンボルとされる[ウェッソン]を買おうと考え、いまなら何色にしようかと悩み、悦楽の沼に落ちている人も多いのではないか。もしくは、歳を重ねたいまこそピカソが愛した[ナ ヴァル]が似合うのではないかと妄想中の人も。
9.シエラデザインズのマウンテンパーカ
1968年の発売以来、マウンテンパーカの元祖として敬われ、模倣されること数限りなし 。現在でも米国製の60 / 40クロスを用いて、米国の工場で縫製されている。あらゆるものが変わりゆく無常の世界において、シエラデザインズのマウンテンパーカこそが変わらないものの代名詞と言っても許されるのではないか。
そして、大いなる自然が似合うウエアだからこその包容力だろうか、ラフなオーラを全開にしたスタイリングはもちろん、不思議なことにタイドアップの着こなしまでも悠然とこなす。この包容力たるやファッション界の母なる大地と呼んで差し支えないレベル。多様性と包摂性が叫ばれる時代のフロントランナーである。
10.オールデンの54321アルガンコンオックスフォード
米国東海岸のニューイングランド地方と言えば、アメリカントラッドの聖地である。そう称される理由のひとつが、オールデンの存在だ。オールデンは1884年にマサチューセッツ州ミドルボロウにて創業している。その靴を収めて世界に送り出される箱には「Alden NEW ENGLAND Custom Bootmakers」の文字が刻まれ、自らの出自をあらしている。
オールデンにおいて、足の治療や運動機能の補助を目的としたオーソぺディック・シューズの製造が本格的に始動したのは5 0年代。モディファイドラストは、1963年に誕生している。同年にこのラストを使用して生み出されたのがアルガンコンオックスフォード、通称Vチップだ。コードバンの色気がたまらない。
(出典:「2nd 2022年9月号 vol.186」)
Photo/Kenichiro Higa Styling/Shogo Yoshimura Text/Kiyoto Kuniryo Hair&Make/Takeharu Kobayashi Model/Nils
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