遠隔地の家族を見守るミリ波レーダーの『POM』、クラファン開始

遠隔地の家族を見守るミリ波レーダーの『POM』、クラファン開始

人生、どのように展開するか分からないものだ。そして、人は誰しも老いる。

筆者の親も、妻の親も、ふた親とも元気にしているので、今のところ心配はない。親がひとりになれば可能であれば一緒に住みたいと思っている。しかし、仕事などの都合でかなわないかもしれない。

親が独居することになった時に、さりげなく見守るためのデバイスが、今回ソースネクストと、サンフランシスコのスタートアップであるTellus You Care Inc.が一緒に発表した『POM』だ。

8月7日から9月30日までの55日間クラウドファンディングサイトであるMakuakeで販売され、その後、ソースネクストのオンラインショップなどで販売される。

自動運転のレーダー技術を応用!ご家族の健康を見守る非接触デバイス「POM」ポム(Makuake)
https://www.makuake.com/project/pom/

ミリ波レーダーで、プライバシーを侵害せずに家族を見守り

日本の高齢化速度は激しく、2025年には団塊の世代である約800万人が後期高齢者となる。

誰もが自分は元気だ、自分の親は元気だと思っていても、いろんなことが思うようにならない時が必ずやってくる。親と離れて暮らしている人なら、久し振りに帰省したら、めっきりと親が老け込んでいて驚いた……というような経験もあることと思う。

POMはそういう状況のために作られている。『高齢者の見守り』とはいっても、カメラとなると、抵抗がある人も多いと思う。

POMはクルマの自動運転などで使われるミリ波レーダーを使って、部屋にいる人の心拍を遠隔地のスマホでモニターするというデバイス。何かを身に着ける必要もないし、プライバシーは侵害されない……というところがポイントだ。

スタートアップのテクノロジーと、ソースネクストの販売力

開発したのは、サンフランシスコのTellus You Care Inc.。この会社は、Evernoteや、All Turtlesを率いたフィル・リービンが出資している。

写真左が、CEOで共同創業者のTania A. Cokeさん。中央がCTOで共同創業者のKevin Hsuさん。大変優秀で、いわば、フィルの秘蔵っ子のような存在なのだという。

右はソースネクスト代表取締役社長・小嶋智彰さん。AI翻訳機のポケトークや、AIボイスレコーダーのオートメモなどを販売するソースネクストが日本での展開を担当するというのも、今回、心強いポイントだ。

離れた場所から、正確に心拍を計測

実際に、ミリ波レーダーがどのように部屋にいる人をモニタリングしているかを見てみよう。

少々お若い方だが、別室にいるモデルさんが高齢者の役。

ご覧のように、ベッドに座ってらっしゃるとtellus側では、ご覧のような感じでモニタリングできる。

ミリ波レーダーというのは、周波数が非常に短いので、離れた場所からでも心拍をモニタリングできる。これにより、家族の健康状態を知ることができるというわけだ。

部屋の見通しのいい場所に、POMを取り付ける(要電源、要Wi-Fi)だけで、POMは部屋にいる人の心拍を測定できる。しかも、心拍の測定精度はかなり高いのだそうだ。

スマホには生活リズムの変化をレポート

といっても、心拍の数値だけが送られ続けても、どういう状態だかわからない。

遠隔地のご家族の携帯アプリには、睡眠や生活リズムの変化がレポートというカタチで送られてくる。

体調の異常があれば、睡眠時間が減ったり、逆に長時間ベッドに横たわったりしているはずだ。そういう状況をPOMはレポートしてくれる。

また、ベッドから起き上がってない、逆に夜中に起きてしまっている……などの重大な変化についてもレポートしてくれる。

ここまで来ると、たとえば『転倒した』とか『心拍が計測できない』、逆に『心拍が異常に速い』というような時に、通知が欲しい……と思うのだが、そういう情報を出すためには、医療機器としての承認が必要になるから無理らしい。たしかに、計測できなかっただけなのなのに、「お母さんの心拍が計測できません」なんていう通知が来たら、めちゃくちゃ驚いてしまうだろう。

現状のPOMはそういう使い方をするものではなく、ご家族の生活をさりげなく見守り、生活リズムの変化などに気付こう……という感じのデバイスだ。

ご興味ある方は、ぜひクラファンサイトを!

個々のライフサイクルの中で、『POMを使うかどうか?』というのはなかなか難しい問題かもしれない。

まず、現状のPOMは、誰の心拍かは識別できないから、複数の家族と同居している場合は計測できない。

つまりは、独居状態にあって、かつひとり暮らしが可能な状態であること。また、基本的にはひとつの部屋しかモニタリングできないので、モニターできるのはベッドルームだけということになりそうだ。複数の部屋がある場合、他の部屋での状況はモニターできない。

今回はクラウドファンディングなので、もっと安価に利用できるプランが用意されるが、通常販売となった状態での定価は以下の通り。本体デバイスが3万9800円(税込)+月額サブスクリプションが1980円(税込)。

いつ、どういう段階で導入すればいいのか、そして利用した場合、いつまで使うのか? というようなことも、考えると悩ましい気がするが、この高齢化社会、このデバイスを必要とする人は、少なからずいるはずだ。

tellus社としても、世界に先駆けて高齢化社会を迎える課題先進国であるから、日本で先行してサービスインを行うという。日本で運用が上手くいったら、今後世界に展開していくということなのだろう。

また、ソースネクスト社としても、この見守りデバイスという市場は、非常に大きなものであるという試算があるのだろう。

役立つ日が来るのが嬉しくはないデバイスだが、きっと誰かに役立つデバイスだ。ご興味のある方は、ぜひクラウドファンディングサイトをご覧になってみていただきたい。

自動運転のレーダー技術を応用!ご家族の健康を見守る非接触デバイス「POM」ポム(Makuake)
https://www.makuake.com/project/pom/

(村上タクタ)