創業者でCEOの野間恒毅さんはこう語る。
「船や自動車、飛行機の電動化って言ったって、その電力はどこから持ってくるんだっていう話ですよ。化石燃料から作るのか? 原子力か? 太陽光エネルギーを頼りにしようにも、国土の狭い日本では自然破壊や土砂流出の問題がある」
そこで、野間さんが考えたのが、水素エネルギーを帆船で運ぶことだ。昔は、海洋輸送は風力を使った帆船が中心だった。しかし、自然エネルギーである風力は安定せず、思う方向に、意のままの速度で進むのが難しい。そこで現在は化石燃料を燃やして移動する船が中心になっている。
しかし、ドローンテクノロジーを使って帆走を自動化し、厳密に時間を拘束しないのであれば、帆走タンカーで輸送すれば、輸送のエネルギーコストは限りなくゼロに近づく。また、測量、沿岸監視、巡回……などについても、自動化帆走であれあば極めて低コストで運用することができる。
自動化した帆船で、海洋を舞台にしたエネルギー課題を解決する。それがエバーブルーテクノロジーズのミッションだ。
iPhoneで操縦可能な、ひとり乗り帆船『AST-231』
2018年12月の創業以来、実証実験を繰り返してきたエバーブルーテクノロジーが満を持して3つの商品をリリースした。幕張メッセで開催されたジャパン・ドローン2022にそれらが展示されるというので、さっそく取材に行ってきた。
まずこちら。『Hansa』というオーストラリア製のひとり乗りの帆船に、エバーブルーが作った自動操船化ユニット『eb-NAVIGATOR2.0』『eb-CONNECT』を組み合わせて誰でも簡単に操船者なしの自動航行船として運用できるようにした『AST-231』。
このサイズの帆船であれば、船舶免許も要らないし、自動操縦で運行するのに許可も要らない。
iPhoneアプリ『eb-CONNECT』の画面上で、目的地をタップすれば、『eb-NAVIGATOR2.0』が風向きと風の強さから帆を操作して、目的地に向かう。人間が乗ることもできるし、帆走の知識がまったくなくても、iPhone上で目的地をタップするだけで、海上を風力だけを使って移動することができる。
もちろん、AIで画像認識する監視カメラも搭載しているので、他の船や、泳いでいる人、障害物などを避けて航行することができる。
動力が要らないので、長時間の航行が可能。海洋調査や、離島への物資の運搬、水上パトロール、警備監視など、さまざまな利用方法が想定されている。
ちなみに、参考販売希望価格は600万円(税別)〜(配送費、サポート、メンテナンス、クラウドサービス利用料は含まれない)。
呼べば現われる、無人ボート『AST-181』
『eb-NAVIGATOR2.0』の技術をもっと手近に運用できるようにしたのが、トーイング用大型ラジコンボート『E-towing』とコラボした『AST-181』。
『E-towing』はジェットスキーのような水流ジェットを2機搭載したラジコンボート。最高速度35km/hで、12kmの航続距離を持つ。巡航速度は15km/h以上(滑走時)。最大牽引力は68kgなので、釣用小型ボートのような一人乗りのゴムボートを牽引できる。
これを『eb-NAVIGATOR2.0』と組み合わせることで、GPSで位置指定するだけで現場に向かわせることができる。
海難時の救助活動などにおおいに役に立ちそうだ。
アプリと連動した『カムヒア』機能を備えており、専用アプリをインストールしたApple Watchを持っていれば『Hey Siri ! Come Here!』と言うだけで、GPSで取得した現在位置に来てくれる。
バッテリーは48V 35Aを搭載し、本体の全長は1.8m。船体重量57kg、装備重量90kg。
沿岸の巡視や、ダム湖などでの巡回、監視にも使えるだろう。SUPや、ゴムボートなどでの釣行などの時に救助として呼び寄せたり、岩礁やブイの上などで釣りをしている時に、お弁当を配達するUber Eatsのような運用も可能かもしれない。
AST-181の販売希望価格は360万円(税別)。
すべての船を自動化するロボット『eb-NAVIGATOR 2.0』
AST-231やAST-181に搭載されている自動操船技術をパッケージ化したのが『eb-NAVIGATOR 2.0』。
Xウイングのコクピット背後に搭載されるR2シリーズドロイドを彷彿とさせるこの製品は、搭載し、操船系と接続することであらゆる船を自動操縦できるようになる。
首に相当する部分のLEDが、ナイトライダーのK.I.T.T.のように、クルクルを回ったりして、状況を表現してくれるのもそれっぽい。
帆走の自動化で、世界のエネルギー問題を解決するエバーブルーテクノロジーズの挑戦は始まったばかりだが、製品の販売が始まり、いよいよ夢の実現に向けて、第一歩を踏み出した。
野間さんのさらなる挑戦が楽しみだ。
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