チェロキーの兄貴分という都会派ジープがグランドチェロキーの存在だ。

コンパクトで街乗りを重視したSUVとしてのデザインながら、ジープ伝統の悪路走破性も持ったモデルとして登場したチェロキー。瞬く間に多くの人に受け入れられた名車のひとつだけれど、その兄貴分として高級感をプラスしたチェロキーとして誕生したのがグランドチェロキー。日本では今や正規輸入ではグランドチェロキーしか存在しないだけに、もはや元祖チェロキーからは完全に独立したイメージのモデルにまで成長した。そんなグランドチェロキーを歴史から新車まで掘り下げてみる。

実は弟分のチェロキーが開発されてから、ずいぶん経って生まれた兄貴分。

グランドチェロキーはチェロキーの上位機種として生まれた兄貴分だが、実は弟分のチェロキーの方が先に生まれ、ジープのSUVカテゴリーをワゴニアとともに支えてきたモデル。弟分の方が先に生まれているのがおもしろい歴史。

そんなチェロキーの記事は下記を参照されたし。

日本でもっとも売れたジープ、それがチェロキーだ。

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2023年12月26日

第1世代(ZJ) 1993~1998年 グランドワゴニアの生産終了で生まれたチェロキーの兄貴分。

1984年から存在したコンパクトな車格のXJチェロキーのみだったこのカテゴリーに、チェロキーの上位機種として追加されたのがグランドチェロキー。それまで高級SUVとしてはグランドワゴニアが存在していたけれど、1991年に生産終了。そこを埋めるカタチにもなるモデルとしてクライスラー傘下時代のジープから誕生した。

車格はチェロキーとほぼ同じコンパクトなサイズで、当時人気だったフォード・エクスプローラーに対抗するために、ジープ特有の土臭さをあえて廃した都会的なデザインで誕生した。チェロキーとの差別化は高級感のある内装だけでなく、車格はそれほど変わらないなか、チェロキーにはなかった大排気量のV8エンジンがラインナップされるなど、グランドワゴニアからの乗り替えユーザーも意識したものだった。

写真のモデルは初代グランドチェロキーのなかでももっともパワフルだった5.9リッター・マグナムV8を搭載したモデル。通常のオプションでは5.2L V8のみだったが、1998年の最終モデルにのみ、このエンジンもラインナップされ、オプションでチョイスすることができた。Photo by Stellantis

第2世代(WJ/WG) 1999~2004年 先代よりも丸みを帯びたデザインへと変わった。

ジープというとスクエアなボディが特徴的だが、グランドチェロキーは街乗りも意識したモデルのため、セダンやクーペのようなラウンドシェイプしたボディデザインを基調にして第2世代へと進化した。

このモデルはダイムラー・クライスラー傘下のジープより発売され、メルセデスの技術や当時パートナー関係にあったポルシェの技術も投入されていることで、世界の自動車マーケットで勝負できる世代となった。

エンジンも一新され、AMC時代からの直6エンジンは、基本設計は同じだが、インテークなどに改良が加えられパワーアップが図られただけでなく、V8エンジンも新設計のエンジンが搭載されている。欧州向けモデルにはメルセデス製のディーゼルエンジン搭載車も存在した。

第3世代(WK) 2005~2010年 オンロード性能を意識した第3世代。SRTモデルも登場した。

全体的なデザインイメージはキープコンセプトながら、フロントマスクが異形の丸目4灯ライトへと変貌した第3世代。AMC時代から継承していた4L 直6エンジンは3.7L V6エンジンに変更され、先代から欧州マーケット向けに搭載されていたディーゼルエンジンが2007年から北米市場にも搭載された。

もっとも刷新されたのはそれまでピックアップトラックの延長線上にあったボディが、乗用車ベースのシャシーになり、足周りも独立懸架を採用するなど、クロスオーバーSUVに近い発想に刷新されることで、オンロード性能を重視したスペックへと舵を切っている。

この世代から、さらにオンロード性能に特化したSRTモデルが2006年に登場。これは6.1LヘミV8エンジンを搭載したハイパフォーマンスなグランドチェロキーだった。

後期モデルは丸目がさらに強調されるデザインへとマイナーチェンジしている。

2006年モデルから登場したSRTモデルは6.1LヘミV8エンジンを搭載し、専用のエアロパーツや20インチのホイールを装備するなど、マッスルカーのスペックを持ったグランドチェロキーとして登場した。Photo by Stellantis

第4世代(WK2) 2011~2020年 メルセデスの技術が色濃く残る第4世代。

それまでの丸形のヘッドライトからシャープな吊り目に生まれ変わった第4世代。先代から変更されたクロスオーバーSUVのコンセプトは踏襲され、ダイムラー・クライスラー時代の流れで、当時のメルセデスベンツMクラスと同様の技術を採用して誕生した(ダイムラークライスラー自体は2007年に消滅している)。

つまり、ジープならではの高いオフロード性能は、ラングラーなどの他のモデルに任せ、街乗りSUVとしての存在感を引き続き重視したモデルになっている。クライスラーは2014年に正式にフィアット・クライスラー(FCA)になり、2020年にはステランティス傘下になったことから、激動の時代に存在したモデルとなっている。

エンジンは新設計の3.6L ペンタスターV6と、5.7L HEMI V8がチョイス(SRTモデルのみスーパーチャージャー付き6.2L V8が存在)できた。V8エンジンは低速時は4気筒を休止して走行できるMDS(マルチプル・ディスプレイスメント・システム)を搭載することで、燃費性能にひと役買っている。

第5世代(WL) 2021~現行モデル 初めてロングボディのグランドチェロキーLも追加された。

製造がステランティスになることで、アルファロメオ・ステルビオと共通のプラットフォームでフルモデルチェンジした現行世代。ジープの最高級SUVという地位は新生グランドワゴニアの登場で譲ることになったが、コンパクトなラグジュアリーSUVというイメージはそのまま踏襲されている。

またグランドチェロキー史上初めてロングホイールベースモデルとなるグランドチェロキーLが登場。初めて3列シートを持ったモデルになり、最大7人乗りを可能にした。

さらにPHEV(プラグインハイブリッド)を採用した4xeモデルもラインナップに加わり、走りのモデルから、環境性能を意識したモデルまで、様々なものさしで選べるモデルになった。

2023年モデルで30周年という記念すべき歴史も忘れてはいけない。日本国内では90台限定で30thアニバーサリーモデルも正規販売されている。

正規輸入車を買える稀少なアメリカ車。新車価格やクルマのサイズはどうなのか?

弟分のチェロキーは正規輸入はないけれど、グランドチェロキーは正規輸入モデルが存在。エンジンは1995ccの直4ターボと、3.6L V6エンジンのみになっていて、ショートボディは4xeもチョイスできる。ボディサイズはショートボディが全長4900mm、全幅1980mm、全高1810mm、ロングボディのLが全長5200mmとなっている。ロングボディでも日本の道路事情でも困らないサイズ感。またすべて正規輸入は右ハンドルになるので、国産車からの乗り換え派にもうれしい。新車価格は830万円からとなっている。

中古車という選択肢もある。後悔しないために燃費や中古車市場も気になるところ。

グランドチェロキーは長らく正規輸入がされていたので、中古車物件はアメリカ車のなかでは豊富なモデル。正規ディーラーの中古車というチョイスが無難だけれど、アメリカ車の並行輸入モデルにも強い中古車店であれば日本に正規輸入で入っていない左ハンドルモデルや大排気量のV8モデルという選択も可能だ。

ただ、旧いモデルになると、ディーラーでは修理などができない場合もあり、専門店やジープのノウハウがあるショップでないと対応できない場合があるので、価格がこなれているからといって飛びつくよりも、まずは専門店に相談する方が得策。

気になる燃費は現行モデルだと市街地モードでリッター10km弱と言われている。もちろん、大排気量のV8モデルはこれ以下だと思っていい。さらに旧いモデルはトランスミッションも多段化していないので、これよりも落ちるだろうが、乗り方やどこを走るかでも大幅に燃費は変わるので、あくまでも目安くらいに考えておいた方がいい。

いわゆる大型の輸入車におけるガソリン車とさほど変わらないので、すでに排気量の大きな輸入車に乗っている人であれば違和感はない。

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
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