スタイルを磨くフラットトラックレースの嗜み方。

バイクのカスタムだけでなく、ファッションやギアにもこだわってフラットトラックレースを楽しむカスタムビルダー。生活の一部のように、頻繁に土の上を走り回るビルダーのライフスタイルからフラットトラックレースの魅力を紐解く。

技術はもちろん、ギア選びやバイクのカスタムも楽しむレース。

「CHEETAH CUSTOM CYCLES」大沢俊之さん|H-DやIndianをベースとした、ハンドメイドのカスタムに定評のあるカスタムビルダー。エングレイビングやフラットトラックレースに至るまで高次の才能を発揮する

世界を股にかけて活躍する日本トップレベルのカスタムビルダーでありながら、レースイベントや練習会を通してフラットトラックレースの楽しさを伝えるハブファン! 主宰のチーターカスタムサイクルズの大沢俊之さん。フラットトラックレースを始めたのは約7年前だが、いまや日本のフラットトラックレースのカルチャーを牽引する存在になっている。

「きっかけはカリフォルニアのカスタムショー、“ボーンフリー”に招待されたこと。その時ボーンフリーは前夜祭でフラットトラックレースのイベントを開催していたから、ショーもレースも一台で楽しめるバイクを作ろうと思って。それで練習を始めたら予想以上にハマってしまって……」

バイクのカスタムだけでなく、ファッションやギアも含めてスタイルにこだわるのが大沢さんのフラットトラックの楽しみ方。ラフな格好に見えるが、もちろん身体を守るギアをインナーに身につけている

それ以来フラットトラックを通じて出会った仲間と一緒にハブファン! を結成し、活動の幅を広げてきた。イベントの主催や、メーカーとのコラボプロジェクトなど、大沢さん(またはハブファン!)の周りは常にフラットトラックに関するコンテンツが渦巻いている。そして、頻繁に開催される走行会をきっかけにフラットトラックを始める人が着々と増え続けているのだ。バイクの改造を生業とするカスタムビルダーが熱中するフラットトラックの魅力とは?

「トラック(運動場のような楕円のコース)を左周りに走るレースだからルールはシンプルなんだけど、それゆえ奥が深い。練習するほど上手くなるし、上手くなるほどハマるモータースポーツです。スライドしながら曲がる感覚が癖になるんです、サーフィンとか横ノリのスポーツに近い感覚かな」

筆者はこれまでにもハブファン! の取材をさせていただいているが、年齢や性別もバラバラな初心者から玄人までが同じコースでバイクをスライドさせて楽しむ姿を何度も目の当たりにしている。そして、ハブファンが提案するフラットトラックの嗜み方は技術だけではなく、ギア選びやバイクのカスタムも同時に楽しむことだ。

日本のINDIAN総代理店を務めるポラリスジャパンとCHEETAHによるFTR1 200Sカスタムプロジェクト。フラットトラックを走りなが ら段階的にカスタムを進め、現在はポジション調整や足周りのモディファイを施した第6形態

「自分のライフスタイルの一部だから、カスタムやファッションも楽しみたい。好きなバイクに乗って、お洒落にもこだわって、さらに走るのも上手ければ、当然それが一番カッコいいわけで。だからカスタムもギア選びも練習も楽しめる。レースの勝敗だけじゃなくて、スタイルも含めてフラットトラックを楽しむカルチャーを日本に定着させるのが目標です」

間口は広く、奥は深い。レースと聞くとハードルが高く感じるが、カスタムやファッションにこだわりながら技術を磨くスポーツとしての魅力に溢れたフラットトラックレースは大人がハマる趣味の条件を十分に満たしているようだ。フラットトラックレースに興味がある人は、まずはハブファン!の練習会に足を運んでみては?

カーボンサイレンサーを備えるエキゾーストはパイプをステンレスでワンオフ製作。リアサスペンションはリジッドバーに変更
シート上面のグラフィック&レタリングは車名の“DEATH TOMAHAWK” をイメージソースとして大沢さんが自ら描いた
愛用ヘルメットはSHOEIのGlamster にCHEETAH大沢さんデザインのグラフィックを落とし込んで発売されたコラボモデル
4 DIMENSIONS STUDIOの名でエングレイビング・アーティストとしても活動する大沢さん。こちらは2018年のWHEELS & WAVESに向けて製作したアルミヘルメット

(出典/「Lightning2023年8月号 Vol.352」)