魂の手仕事にこだわるサムライクラフト。
創業2003年。元々レザークラフトが好きで、独学で手法を学んだ立田良徳さんが、宮城県大和町の6畳のプレハブ小屋で始めたのがサムライクラフトの始まりだった。最初は、友人や知人、お客のオーダーを受け、試行錯誤を繰り返しながら技術を磨いていったという。
「僕がいちばん大切にしているのは、お客様が手にした時に、喜んでもらえるかどうか。とにかく、お客様の要望に120%応えたい。そのために、こちらからも提案します。お客様と相談しながら、より良いモノを作っていく。これが何よりの喜びなんです」
そう立田さんは話す。自分の色を出すのではなく、何よりもお客の目線に立つ。こうした謙虚さとユーザーフレンドリーな姿勢が、サムライクラフトの人気の秘密なのは、言うまでもない。現在、サムライクラフトのプロダクツは、すべて自社ファクトリーで作られている。
「うちはすべて手作業で作っています。技術の熟練度が上がると、『ここは、こうした方が美しい』とか『この部分の仕様を変えた方がいい』など、いままで見えなかったものが見えてくるんです。手を動かしながらも、常に疑問を持って革と向き合っています。そうしないと成長していかないですから」
サムライクラフトでは、直接来店できない遠方のお客のために、ウォレットなどのレザープロダクトをwebで自分仕様にカスタマイズできるサービスも開始した。すべてはお客様の喜ぶ顔を見るために。サムライクラフトの挑戦は終わらない。
Sewing[ 縫う。]
レザークラフトの中でも重要な工程が「縫製」。サムライクラフトでは、基本的に縫いのピッチを4.5㎜に設定している。これが、美しさと強度の絶妙なバランスを生み出しているのだ。
レーシングポニーという専用の器具にレザーを挟み、縫製していく。糸は蝋引きしたナイロン製のシニュー糸を使用。
菱目打ちで縫いの穴を開けていく。こちらは4.5㎜ピッチだが、製品によってピッチ幅を変えている。失敗できない作業のため、慎重に行う。
縫製していくラインに沿って糸を埋めるための溝を彫る「グルーバー」という工程。これにより、使用時に摩擦から糸を守り、より堅牢度が増すという。
Buffing[ 磨く。]
丁寧なコバの仕上げがサムライクラフトの真骨頂。一つ一つ、職人が磨いていく。こうした細やかな部分にこそ、そのブランドの哲学が現れる。サムライクラフトにリピーターのお客が多いのも頷ける。
ふのりを使ってコバを磨いていく。こうすることで革が締まり、美しい輝きを放つようになる。
革の縁を落としていく「面取り」。見た目や手触りのためだけでなく、面取りをすることで、コバがめくれるのを防ぐ効果もある。
Carving[ 彫る。]
サムライクラフトのレザープロダクトの中でも高い人気を誇るカービング。細やかな模様と彫の深さは、他の追随を許さない。代表の立田さん自ら、リズミカルにカービングを施していく。
花びらの縁を際立たせていく「アンダーショット」。カービングは、彫ったカタチを戻さないよう水で革を濡らしてから行う。
サムライクラフトでは、カービングでよく使われるアンティックと呼ばれる仕上げ材を使用していない素彫りの状態のため、よりエイジングが楽しめる。
カービング用のツールケースは、クロムエクセルで作ったもの。カービングを彫るための道具「ペアシェーダー」も、自分仕様に削って使いやすくしている。
自らカービングを行う立田さん。「彫りを見なくても、ペアシェーダーを叩いている音で、彫りの良し悪しが判断できます」
SAMURAI CRAFT LEATHER PRODUCTS Collection
丁寧な手仕事で作られるサムライクラフトのレザープロダクト。一度使えば、その使い心地や機能性の高さに驚くはずだ。ストレスなく使えるからこそ、長く愛せて、極上のエイジングも楽しめる。“工芸品” のような風格を醸し出すレザープロダクトを、ご堪能あれ。
LONG WALLET B-3 ダブルコンチョ(左)
1873年創業のベルギーMASURE製のルガトショルダーを使った三つ折りタイプのロングウォレット。使い込むほどに艶が増し、ショルダーならではのトラ目なども楽しめる。こちらは38㎜・31㎜のダブルコンチョ+ダブルステッチ仕様で圧倒的な存在感を放つ。8万8550円
LONG WALLET A-1 シェリダンスタイルカービング(右)
サムライクラフト創業当時からの人気モデルであるA-1にカービングを施したインパクト大のモデル。カービングに適したタンニン鞣しのツーリングレザーを使用しているため、経年と共に深い飴色へと変化していく。9万4490円
【問い合わせ】
サムライクラフト
TEL022-739-7494
※情報は取材当時のものです。
(出典「Lightning2021年12月号 Vol.332」)
Text/T.Ogawa 小川高寛 Photo/S.Kai 甲斐俊一郎