ざっくりツボを押さえた、ヴィンテージベースボールキャップの教科書。

ヴィンテージのベースボールキャップが面白い。ジーンズやスニーカーと同じくディテールの変遷やブランド背景などを掘り下げてみる価値はありそうだ。今回は業界一の野球好きとして知られるウエアハウス藤木さんが所有しているヴィンテージコレクションを元に、年代ごとの特徴や楽しみ方を教わった。

教えてくださったのはこの方! 「Warehouse& co.」プレス・藤木将己さん

Lightning本誌でもお馴染みのウエアハウスの名物プレス。ヴィンテージウエアはもちろん、野球にも造詣が深い。大学野球では投手として活躍していたという輝かしい実績を持つ。

1.【NEW ERA】まさに新時代を築いたスラッガー。

紳士用の帽子ブランドとして1920年に創業したニューエラ。’30年代にBBキャップの製作を開始して以来成長を続け、現在はメジャーリーグ唯一の公式サプライヤー。タグの変遷はかなり細かいためコレクションを元に一部を抜粋して紹介。

【’60 -’80年代前期】湾岸警備隊

藤木さんが所有するニューエラの中でも最も旧いモデル。コーストガード仕様というのも◎。

[ ブランドタグ ] 筆記体ロゴ

筆記体で描かれたプリントタグ。’60年代〜’80年代前期と長期間使われていた。

[ ツバ裏 ] ツバ裏グリーン

’80年代ぐらいまではツバの裏側にグリーンの生地を使ったものが多くみられる。

[ ダイヤモンドタグ ] なし

[ MLB 刺繍 ] なし

【’90年前後】サンディエゴ・パドレス

カリフォルニア州サンディエゴにあるMLBチーム。現在ダルビッシュ有がいることでも有名。

[ ブランドタグ ] ロゴプリント1

’80年代後期に入ると野球帽型のロゴが加わる。ロゴ下の文字は5段で表記される。

[ ツバ裏 ] ツバ裏グリーン

’80年代後期のモデルでもツバ裏グリーンは存在するが、最終モデルに近いと判別できる。

[ ダイヤモンドタグ ]

’80年代後半になると付属するMLBのサプライヤーの証である「Diamond Collection」タグ。

[ MLB 刺繍 ] なし

【’90年代前期】サンフランシスコ・ジャイアンツ

史上最も偉大な野球選手の一人であるバリー・ボンズが活躍したことでも知られる名門チーム。

[ ブランドタグ ] ロゴプリント2

ロゴほぼ変わらずニューエラ表記の下は2段でMAJOR LEAGUE、PRO MODELの表記が。

[ ツバ裏 ] ツバ裏グレー

’90年代に入るとツバ裏はグレーに変更される。タグが無くても大別できるので覚えたい。

[ ダイヤモンドタグ ]

スウェットバンドに挟み込まれ、下部も縫製される。この年代までがプリントタイプだ。

[ MLB 刺繍 ] ワッペンタイプ

後頭部にMLBロゴが付属する。ロゴは小さな刺繍ワッペンタイプとなる。

【’90年代中期】ピッツバーグ・パイレーツ

かつて桑田真澄が所属していたパイレーツ。藤木さんも応援するMLBチームである。

[ ブランドタグ ] 刺繍タグ

’90年代中ごろに近づくと、プリントから刺繍タグに変更になる。

[ ツバ裏 ] ツバ裏グレー

継続してグレーを踏襲。ちなみに2007年頃にはツバ裏がブラックになる。

[ ダイヤモンドタグ ]

ダイヤモンドタグも刺繍に変更となり、縫い付けずに圧着されているのが特徴。

[ MLB 刺繍 ] 刺繍タイプ

MLBマークが帽体に直接刺繍される。チームカラーを使うのはアメリカのお家芸。

2.【ROMAN PRO CAP】かつて存在していた老舗ブランド。

前身は刺繍会社で1936年に創業。その技術を生かしてキャップやユニフォームに刺繍を入れ始めたことがキッカケでMLBにキャップを供給するようになる。’80年代にMLBがニューエラとスポーツ・スペシャリティーズと契約を結んだことで業績が悪化。’94年に操業停止。

【1970年代〜】ボストン・レッドソックス

マサチューセッツ州にあるレッドソックス。野茂、松坂、上原など日本人選手も多く所属していた人気チームだ。

’70年代のローマンプロのタグ。中世騎士の兜がプリントで施されたデザイン。

粗いウールの生地目が見えるボディ。目の詰まった質感はヴィンテージの醍醐味でもある。

【1980年代~】クリーブランド・インディアンス

’80年代のモデル。クラシックなロゴを復刻させる「クーパーズタウンコレクション」で、旧いインディアンスのロゴが刺繍される。

かつてMLBで使用されていた旧いロゴを復刻したコレクションを表すタグ。

タグにあしらわれたロゴはシンプルになり白字に青でROMANのみ表記される。

3.【SPORTS SPECIALTIES】アメリカにおけるBBキャップの名門。

現在ではニューエラの方が知名度は高くなったが、かつてはBBキャップの名門として認知されていたスポーツブランド。1928年にシカゴで設立され、’60年代にはNFLの最初の公式サプライヤーとなり、後にアメリカのスポーツビジネスに大きく進出した。

マイアミ大学

スクールカラーを使ったマイアミ大学のベースボールキャップ。深く被れる帽体が特徴的。

タグが掠れてしまっているが、プリントによるタグがあしらわれる。

【番外編】かつてはNEW ERA もU.S.N. に納入していた。

ジェットタイプと6枚ハギで帽体の仕様は異なるが、 形状や深さもよく似ているのがわかる

’80年代頃のニューエラのウールキャップ(写真左)だがこれは海軍に納入されたもの。’40年代のU.S.N.デニムキャップ(写真右)のツバと似た角ばった長めの形状なのも面白い。

ファッションとスポーツは密接な関係になるが、キャップも同じく。ヒストリーを知ればもっとファッションが楽しくなるはずだ。ヴィンテージに手を出してみてはいかが?

(出典/「Lightning 2021年6月号 Vol.326」)

この記事を書いた人
サカサモト
この記事を書いた人

サカサモト

アメカジ系動画ディレクター

Lightning、2nd、CLUTCH Magazineの公式YouTubeチャンネル「CLUTCHMAN TV」のディレクター。元Lightning副編集長ということもあり、クルマ、バイク、ミリタリーなど幅広い分野に精通。現在はもっぱら動画作成機材に夢中。ニックネームは、スキンヘッドにヒゲ面をいう「逆さ絵」のような顔に由来する。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

【ORIENTAL×2nd別注】アウトドアの風味漂う万能ローファー登場!

  • 2025.11.14

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【ORIENTAL×2nd】ラフアウト アルバース 高品質な素材と日本人に合った木型を使用した高品質な革靴を提案する...

時計とベルト、組み合わせの美学。どんなコンビネーションがカッコいいか紹介します!

  • 2025.11.21

服を着る=装うことにおいて、“何を着るか”も大切だが、それ以上に重要なのが、“どのように着るか”だ。最高級のプロダクトを身につけてもほかとのバランスが悪ければ、それは実に滑稽に映ってしまう。逆に言えば、うまく組み合わせることができれば、単なる足し算ではなく、掛け算となって魅力は倍増する。それは腕時計...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

Pick Up おすすめ記事

スペイン発のレザーブランドが日本初上陸! 機能性、コスパ、見た目のすべてを兼ね備えた品格漂うレザーバッグに注目だ

  • 2025.11.14

2018年にスペイン南部に位置する自然豊かな都市・ムルシアにて創業した気鋭のレザーブランド「ゾイ エスパーニャ」。彼らの創る上質なレザープロダクトは、スペインらしい軽快さとファクトリーブランドらしい質実剛健を兼ね備えている。 日々の生活に寄り添う確かなる存在感 服好きがバッグに求めるものとは何か。機...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

今っぽいチノパンとは? レジェンドスタイリスト近藤昌さんの新旧トラッド考。

  • 2025.11.15

スタイリストとしてはもちろん、ブランド「ツゥールズ」を手がけるなど多方面でご活躍の近藤昌さんがゲストを迎えて対談する短期連載。第三回は吉岡レオさんとともに「今のトラッド」とは何かを考えます。 [caption id="" align="alignnone" width="1000"] スタイリスト・...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...