FORD MUSTANG(フォード マスタング)とは? その衝撃デビューから歴代の名車を紹介!

1964年のニューヨーク万博で若者をターゲットとして発表されたフォード・マスタング。スポーティな外観と高い性能を持つミドルクラスクーペのマスタングは、ポニーカーと呼ばれ大きなムーブメントを生み出した。乗用車からピックアップトラック、商用バンまで幅広く展開するフォードにあって、マスタングは現在もスポーツカー(マッスルカー)の代名詞である。

「FORD MUSTANG(フォード マスタング)」とは?

【1964 FORD MUSTANG】

「フロントはセパレートのバケットシートにフロアシフトの四人乗りであること」「全長は180インチ(約4570㎜)以下で、車重も2500ポンド(約1150㎏)であること」「そして2500ドル以下で販売すること」……4ドアの大型車が市場の大半を占めていた当時、この条件はかなり革新的なものだった。当時フォードの副社長だったリー・アイアコッカが要求した条件を満たした2ドアの若者向けのクルマこそ、’64年に登場したマスタングである。

初代から新型まで、歴代マスタングの変遷を辿る!

【1962年】初めてマスタングという名称が登場。

【1962 FORD MUSTANG】

フォード社内で“The first Mustang ” と呼ばれる1962年登場のMUSTANG I Concept。ミッドエンジンでツーシーターというスポーツカーだった。車両は直接関係はないが、マスタングという言葉が初めて社内で登場した記念すべき一台だ。

【1964年~】万博開催に合わせてデビューを飾った初代マスタング。

【1964 FORD MUSTANG】

1964年に登場した第一世代。フォードにT型以来のビッグセールスをもたらし、ポニーカーというジャンルを確立した記念すべきモデルだ。1964年のニューヨーク博覧会でデビューを飾ったマスタングは、その翌日から全米のディーラーで一斉に発売を開始。発表当日に2万2000台、そして発表からわずか1カ月で10万台以上を販売した。

【1974年~】原点回帰をテーマにボディサイズを大幅にダウンした2代目マスタング。

【1974 FORD MUSTANG】

フロントグリル周辺に初代モデルの面影を残す第二世代は、MUSTANG IIが正式な名称。当時FORD傘下のカロッ
ツェリア・ギアがデザインを担当した。ボディは大幅に縮小され、デビュー当初はV8エンジン搭載車の設定もなか
ったが、1975年にV8搭載車をラインナップしたほか、1976年にはホットモデル、コブラIIも登場する。

【1979年~】マスタング史上初めてとなるターボエンジンが登場した3代目。

【1979 FORD MUSTANG】

引き続き小型ボディを継承した第三世代は、直線基調のユーロデザインとなり、大幅にデザインイメージを変更。さらにフォード初のターボエンジン搭載の市販車となった。また先代には設定がなかったコンバーチブルモデルも復活するなど、モデルとしては非常に充実し、マイナーチェンジを重ね1993年まで生産を続けたロングセラーだ。

【1994年~】初代モデルを意識したフロントグリルを採用した4代目。

【1994 FORD MUSTANG】

先代よりプラットフォームを引き継ぎつつ、外観は初代モデルを意識したグリルを採用するなど、大幅なイメージチェンジを果たした4代目モデル。V6モデルをメインとしながらも、V8搭載モデルを引き続き販売し、モデル中盤にはDOHCの5リッターV8を搭載したコブラも登場。日本でも再び人気となったモデルだ。

【2005年~】5代目モデルはより初代モデルを意識したデザインに。

【2005 FORD MUSTANG】

2005年に登場した5代目モデルは、プラットフォームを一新し、再び大型化。フォードが打ち出した「リビングレジェンド戦略」によって、デザインは初代マスタングのなかでも1969年モデルを大きく意識したものになった。V8エンジン搭載モデルも再び人気となり、スポーティなイメージが復活した。

【2015年~】環境に配慮した4気筒ターボエンジンエコブーストを導入した6代目。

【2015 FORD MUSTANG】

マスタング生誕50周年となる2014年に合わせてデビューを飾った6代目モデルは、時代の流れに対応すべく、すでにエクスプローラーなどに導入されていた4気筒のエコブーストエンジンを搭載。またシリーズ初となる右ハンドルが設定されたが、フォードジャパンの撤退によって、日本導入は幻となってしまった。

特別なマスタングにだけ与えられる、「K」の刻印を知っているか? 中でも希少なコンバーチブルは世界で199台の激レア!

【1965 FORD MUSTANG K-cord(フォード/マスタング Kコード)】

1964年に登場し、ポニーカーと呼ばれ大きなムーブメントを生み出したマスタング。多彩な仕様から選べる販売戦略を採用したことでも知られ、エンジンだけでも4種類から選べる中でも271馬力を誇る最もハイパフォーマンスなV8エンジンを搭載した個体にはシリアルに「K」の刻印が施されることから“Kコード”と呼ばれるようになった。

フレームに打刻されたシリアルを見ると中央部分に “K” のアルファベットが刻印されている。ちなみに一番左の数字は製造年の1965年の下一桁を表している

デビュー年の1965年だけで68万台を販売したという、いまだ破られない記録を樹立したのは有名な話。その中でもKコードは、わずか7273台のみ販売。そのため現在では希少な車両としてコレクター垂涎のモデルという位置付けとなっている。

ナンバープレートを見てもわかる通り、1965年にテキサスで登録された一台。トワイライトターコイズと名付けられた独特のカラーリングも美しい

ここで紹介するKコードのコンバーチブルは199台のみの販売記録が残る。さらにトワイライトターコイズの塗装のモデルは5台という超が付くほどの希少車なのだとオーナーの鼻息は荒い。

直線的なボディラインのサイドビュー。アメリカの自動車史に名を刻んだエポックメイキングな車両だけに、コンパクトな車体ながらも、その佇まいにはオーラを纏っている

現オーナーのマイケル氏が15年前にテキサスを訪れた際、庭先に置かれたボロボロの個体を発見。住人の許可を得てフードを開けると、フレームにKの刻印を見つけ、住人に敬意を表し1万5000ドルで購入。とはいえ状態の悪さに一時はレストアを断念しかけるも、コツコツと直しついに復活させたというエピソードを持つのだ。

カリフォルニアの青空が似合うマスタングKコード。テキサスで眠っていた個体を長年かけてレストアしただけあって、1965年当時の走りを手に入れたオーナー自慢の一台

Kコードならではの意匠やディテールをチェック!

排気量を表す289ci(4.7リッター)のエンブレムがサイドフロントに冠される。当時マスタングで選べる最大出力のHipoモーターを搭載している証でもある。

キャビンの左右を分けるようにデザインされたセンターコンソール。1966年までのKコードは、4速のMTミッションのみの設定。

レストアしたばかりのため、まるで新車のような耀きを放つエンジンルーム。オイルフィルターなどの消耗品すらもパーツの年代も車両に合わせて’65 年製にこだわったというから舌を巻く。まさに当時のままを再現した珠玉の一台と言えよう。

ステアリングももちろん純正。中央のスピードメーターは横長のデザインで、Kコードとは思えない落ち着いたレイアウトとなる。

ステアリングボスにセットされたRally Pac 製のタコメーターとアナログ時計。Kコード専用にデザインされた特別なオプションパーツ。

ブレーキペダルには「DISK BRAKE」のエンブレムが施される。表記通り仕様でフロントの足まわりはディスクブレーキを採用している。

シートも完璧なまでのレストレーションが施されている。ヘッドレストのないクラシカルなデザインも当時のままを再現している。

リアの3連テールランプは現行車種まで継承されているマスタングのアイデンティティともいうべき意匠。ずっと追従していても飽きのこない秀逸なデザインと言える。KコードのV8エンジンが奏でる咆哮も心地いい。

クラシカルなパターンを有するタイヤはUSロイヤルのバイアスを装着。赤いラインが入るデザインも当時の仕様を忠実に再現している。

数少ないKコードの中でもコンバーチブルは199台という、さらに希少なモデルとなる。撮影時は機構不良によりオープンに出来なかったのが残念。

野生馬を意味するマスタングのエンブレム。ややスラントしたノーズは、初代マスタングの特徴的なデザイン。カラーリングは珍しいトワイライトターコイズ。

トランク部分には当時のタイヤを履いたままのスペアタイヤと純正工具が収納されている。格子柄のシートと共生地の工具ケースも洒落ている。

取材車のスペックを紹介!

FORD MUSTANG K-code

  • サイズ:全長4613㎜全幅1732㎜全高1300㎜
  • エンジン:水冷4ストロークV型8気筒
  • 総排気量:289ci(4727㏄)
  • 最高出力:271hp
  • 総重量:
  • トランスミッション:4速マニュアル
  • ブレーキ:ディスク(フロント)、ドラム(リア)
  • タイヤサイズ:6.95×14(フロント&リア)
  • カラーリング:トワイライトターコイズ

『60セカンド』に登場するエレノアのモデル! 本物の「シェルビー コブラ GT500」を、現代風にカスタム!

大衆スポーツカーであるマスタングをベースに、キャロルシェルビーがチューニングを手がけたスペシャルモデルがシェルビーマスタングだ。1965年のSCCAレース用のGT350登場に続き、ロードゴーイングカーとして1967年にはGT500がデビュー。マスタングのフラッグシップモデルとして君臨した。ちなみに映画『60セカンド』に登場するエレノアも、この’67年式GT500という設定だ。

本来リアクォーターウインドーがある位置にエアスクープが備わるのがシェルビーGT500の大きな特徴。その下のリアフェンダー前にもスクープが備わる。ブルーのレーシングストライプと、ロッカーのストライプが有名だが、この車両はどちらもあえて排除したシンプルな仕様

取材車両はそんな貴重なGT500をベースに、シェルビーアメリカンが、製作したコンプリートカー。本来モノコックのマスタングはアート・モリソン社製のフレームに搭載され、サスペンションやブレーキなどを現代風にアップデート。エンジンはダートウインザーブロックを使用した447ciで、ダイノテストの結果、最高出力667hp を記録したモンスターユニットだ。

シェルビーGT500 の大きな特徴であるボンネットのエアスクープと、グリル中央によったハイビームが見える。リアビューやボディサイドのスクープなどがフィーチャーされがちだが、正面からのカットもファンは多い

見た目こそ半世紀前のマスタングだが、中身は完全に別もの。アメリカでもオートクロスなどに参戦し、好成績を収めるなど、美しさとパフォーマンスを両立した一台なのだ。

シェルビーマスタングならではの意匠やディテールをチェック!

オリジナルの意匠を保ちつつ、メーターフェイスがよりモダンなClassic Instruments社製のニューゲージをセット。ステアリングはオリジナルの3スポークウッドに替わりBillet Specialties製をチョイスする。

フレームを入れたことで、フロアは大幅にモディファイされている。車内から一番判るのはセンタートンネル高がより高くなっているという点だろう。トランスミッションはT56型6速マニュアルを採用する。

グリル中央にハイビームランプ(フォグライトではない)が2つ並んで配置されるのは’67年モデルの大きな特徴。左側にはシェルビーが手がけた証である専用のバッジが備わる。

給油口は左右テールライトの中央に位置し、キャップはコブラのエンブレムが備わるGT500のみに使用される専用品となる。キャップ上部に見えるのはトランク開閉用のキーホール。

ペダル類は、レースなどでも使用されるTilton 社製のオルガンペダル(フロア側が支点となるペダル)を採用する。一番左はフットレストで、その左に見切れているのはオーディオ用に追加されたスピーカー。

’67年のGT500はたった2000台強しか生産されなかった希少なモデル。フロントフード運転席側側面にシェルビー社のIDプレートが備わるのが、オリジナルの証。

本来ユニボディ(モノコック)のマスタングだが、取材車両はシェルビーアメリカンの手によって、アートモリソン社製のフレームが入る。ブルーの部分が新たに追加されたフレーム。

美しくショーアップされたエンジンは、オハイオ州のゲルナー・エンジニアリングでダートウィンザーブロックを使用してビルドアップされた447ci(7325㏄)で、なんと667馬力を発生するモンスターユニット。エンジンルームのディテーリングもパーフェクト。

GT500のリアビューの大きな特徴となっているのが、’67年マーキュリー・クーガーのテールライトを採用しているという点。テール周辺のパネルは本来ボディ同色となるが、取材車両はブラックアウトしリアビューを引き締めた。

取材車のスペックを紹介!

SHELBY COBRA GT500

  • エンジン: 水冷4ストロークV型8気筒
  • 総排気量:7325㏄
  • 最高出力:667hp
  • 最大トルク:827Nm
  • トランスミッション:Tranzilla社製T56型6速マニュアル
  • サスペンション:ダブルウィッシュボーン&コイルオーバー(フロント)、3リンク&コイルオーバー(リア)
  • ブレーキ: Wilwood社製ベンチレーテッドディスク
  • ホイール:Pokal Custom Felgen
  • タイヤサイズ:265/35-19(フロント), 335/30-20(リア)
  • カラー: フォードスピードホワイト

【取材協力】
RISING SUN
静岡県静岡市駿河区用宗1-35-1
TEL054-257-8460
http://www.risingsun-hr.com

▼同じくシェルビーが変わったACコブラについてはコチラ!

1962~’67年の短命だったACコブラを復元した、カーカム社の「コブラ289」に注目!

2023年02月21日

新車でマスタングを手に入れるには?

2016年に日本から撤退してしまったフォードだが、旧正規ディーラーのなかにはフォード認定サービスディーラーとして現在も新車・中古車販売、メインテナンスを行っている店舗が日本全国にあるため、並行輸入で手にすることが可能だ。購入後のフォローも長年正規ディーラーとして培ってきた技術と知識があるので、安心だ。

 

幅広い車種を展開するフォードが手掛ける「マスタング」。誕生から50年以上が経ち、今もなお唯一無二のデザインと走りは多くのユーザーの心をとらえて離さない。今後、どんな進化を遂げていくのか、楽しみにしていたい。

(出典/「別冊Lightning Vol.165 VINTAGE CARS」)