磯崎新 略歴

1931年大分市生まれ。1954年東京大学工学部建築学科卒業。1963年磯崎新アトリエを設立。以後、国際的な建築家として、旧大分県立図書館(現アートプラザ)、群馬県立近代美術館、ロサンゼルス現代美術館、バルセロナオリンピック競技場などを設計。近年では、カタール国立コンベンションセンター、ミラノアリアンツタワー、上海シンフォニーホール、湖南省博物館、中央アジア大学、中国河南省鄭州市の都市計画などを手がけた。
世界各地の建築展・美術展のキュレーションや設計競技の審査員、シンポジウムの議長を務めた。代表的な企画・キュレーションに「間-日本の時空間」展(1978–81)、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館コミッショナー(第6~8回)、同展日本館展示「亀裂」で金獅子賞受賞(1996)など。建築思想の国際会議「ANY会議」を10年にわたり企画(1991–2000)。著書に『建築における「日本的なもの」』(新潮社、MIT Press)、『磯崎新建築論集』(全8巻、岩波書店)など多数。建築のみならず思想・美術・デザイン・文化論・批評など多岐にわたる領域で活躍。2019年プリツカー賞受賞。
企画意図
2022年末に逝去した建築家・磯崎新の没後、国内初となる大規模回顧展を開催する。水戸芸術館設計者でもある磯崎は、20世紀を代表する最も創造的で先駆的な建築家として知られ、2019年に建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を受賞。建築プロジェクトや都市計画にとどまらず、著作活動、芸術家や知識人とのコラボレーション、さらにはキュレトリアル・ワークを通じ、60年以上にわたり思想・美術・文化論や批評分野においても卓越した地位を確立した。
「群島としての建築」と題した本展では、単一領域にとどまらない磯崎の活動を「群島」のように構成する。「都市」「建築」「建築物」「フラックス・ストラクチャー」「テンタティブ・フォーム」「建築外(美術)」をキーワードに、建築模型、図面、スケッチ、インスタレーション、映像、版画、水彩画などを通じて軌跡を辿るとともに、自身が設計した水戸芸術館を舞台に、建築の枠を超えた活動を俯瞰的に紹介する。
展覧会の内容
建築模型、図面、スケッチ、映像、写真、大型インスタレーション、アーカイブ資料などをもとに磯崎の「建築」概念を検証し、それを建築や都市プロジェクトとしていかに実践してきたかを包括的に振り返る。
1 国内外の代表作
《東京計画1960》(1961)、《空中都市―新宿計画》(1960–61)、《空中都市―渋谷計画》(1960–62)、《コンピューター・エイディッド・シティ》(1972)などのアンビルトを含む都市計画、《大分医師会館》(1959–60)、《福岡相互銀行本店》(1968–71)、《旧大分県立図書館(現・アートプラザ)》(1962–66)から、《群馬県立近代美術館》(1971–74)、《北九州市立美術館》(1972–74)、《つくばセンタービル》(1979–83)、《なら100年会館》(1992–98)、《ラ・コルーニャ人間科学館》(1993–95)、《カタール国立コンベンションセンター》(2004–11)までを紹介する。


2 建築界における功績
《くまもとアートポリス》(1988–98)、《ネクサスワールド》(福岡、1989–91)のコミッショナー等を通じて、一人の建築家を超えて建築のプロジェクトを構想した磯崎の功績を紹介する。
3 戦後日本美術や現代美術との関わり
《奈義町現代美術館》(1994)、《ルツェルン・フェスティバル アーク・ノヴァ》(2011–13、アニッシュ・カプーアと協働)といったコラボレーションや、『間展』(1978–79/米クーパー・ヒューイット美術館ほか巡回)のキュレーションを通じた関わりを示す。
4 スケッチブック
「還元」シリーズ(1983)のシルクスクリーン、1994年の水彩24点、さらに世界各地での訪問記録と構想を残した70冊超のスケッチブックの一部を公開する。

5 磯崎建築としての水戸芸術館
1990年開館の水戸芸術館を、出品作品のひとつとして“展示”する。監修・執筆:五十嵐太郎、デザイン:イスナデザインによる『水戸芸術館ガイドブック』を片手に、館内外を巡り磯崎建築を体験できる。

関連プログラム(抜粋)
■ゲストキュレーター・レクチャー 01:五十嵐太郎/11月2日(日)14:00–15:30/水戸芸術館会議場/定員80名・無料
■ゲストキュレーター・レクチャー 02:ケン・タダシ・オオシマ/12月20日(土)14:00–15:30/水戸芸術館会議場/定員80名・無料
■ゲストキュレーター・レクチャー 03:松井茂/2026年1月17日(土)14:00–15:30/水戸芸術館会議場/定員80名・無料
■ドキュメンタリー映画『だれも知らない建築家のはなし』上映/12月21日(日)13:00–14:13(14:15–14:45ポストトーク)/水戸芸術館ACM劇場/定員150名・無料(本展入場券提示)/ポストトーク:石山友美×伊東豊雄
■だれも知らない構造のはなし/講師:金箱温春/2026年1月11日(日)14:00–15:30/会議場/定員80名・無料
■磯崎新研究会:群島のアルケオロジー/2026年1月18日(日)11:00–17:00/ワークショップ室/無料(本展入場料別途)
■水戸芸術館ガイドブック/監修・執筆:五十嵐太郎/デザイン:イスナデザイン
■水戸芸術館見学ツアー/【平日】14:00・16:00、【土日祝】11:00・14:00・16:00/所要45分/大人600円・こども500円(各1ドリンク付・当日限り)/申込:当館HP参照
関連教育プログラム(抜粋)
■赤ちゃんと一緒に美術館散歩/11月21日(金)、22日(土)各10:30–12:00/要申込・先着/保護者1,500円ほか
■ウィークエンド・ギャラリートーク/11月15日(土)より毎週土曜14:30~(40分程度)/無料(本展入場券必要)
■プレスクール プログラム/12月3日(水)・4日(木)・9日(火)・10日(水)・11日(木)/対象:年長クラス
同時開催
■日比野克彦「明後日朝顔プロジェクト2025水戸」収穫祭/11月8日(土)10:00–17:00(小雨決行)/水戸芸術館広場回廊2階/無料
■造形実験室/11月14日・15日、12月5日・6日、2026年1月9日・10日、2月13日・14日/各10:30–12:00/13:30–15:30/無料・予約不要
展覧会概要
タイトル:磯崎新:群島としての建築 Arata Isozaki: Archipelagos of Architecture
会期:2025年11月1日(土)~2026年1月25日(日)
開場時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
休館日:月曜(ただし11/3・11/24・1/12は開館)、11/4(火)、11/25(火)、年末年始(12/27~1/3)、1/13(火)
入場料:一般900円、団体(20名以上)700円/高校生以下・70歳以上、障害者手帳等所持者と付き添い1名は無料(要身分証)
年間パス:2,000円
First Friday:毎月第1金曜(11/7、12/5、1/9)は学生証提示の学生と65~69歳は100円(要証明)
主催:公益財団法人水戸市芸術振興財団
協賛:一般社団法人茨城県建築士会、一般社団法人茨城県建築士事務所協会、柴建築設計事務所、横須賀満夫建築設計事務所、アビック、暁飯島工業、パル綜合設計、国際警備保障、三上建築事務所、根本建築設計事務所、清水建設、andHAND建築設計事務所、田村工務店
後援:株式会社アンドエスティHD
協力:磯崎新アトリエ、MISA SHIN GALLERY、大分市美術館、アートプラザ、公益財団法人西日本シティ財団、公益財団法人山口きらめき財団、秋吉台国際芸術村、高知県立美術館 石元泰博フォトセンター、The Estate of Jiro Takamatsu、Yumiko Chiba Associates、TANGE建築都市設計、日本図書輸送株式会社、アダストリア・ロジスティクス、伊東豊雄建築設計事務所、金箱構造設計事務所、くまもとアートポリス事務局、慶應義塾大学アート・センター、AAarchitects、MORF建築設計事務所、葵建設工業、加藤木工、サントリーホールディングス株式会社
ゲストキュレーター:ケン・タダシ・オオシマ、五十嵐太郎、松井茂
会場設計:日埜建築設計事務所
企画:井関悠(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)