2ページ目 - 『赤毛のアン』の名曲を歌う 大和田りつこインタビュー

アンとの共通点と大事にしているセリフ

渾身に歌い上げた楽曲を楽しみに、大和田は放送の1年間の日曜夜7時半はテレビの前で熱心に視聴した。

「私は文学少女で、若い頃は悲しいことがあったり、楽しいことがあったりすると詩を結構書いてたんです。だから、アンの空想が全然違和感なく素直に入ってきて。 そういう意味でのアンとの共通点みたいなものはすごく感じていました。30分の中に泣く場面、笑う場面、忘れていた大事な部分などいろんなことが必ず入っていましたね。だから、自分が歌っているということだけではなく、『赤毛のアン』という名作文学に、本当にハマっていました」

『赤毛のアン』は観る年代によって感じ方はさまざまで発見がある。大和田にとって本作の魅力はなんだろうか。

「アンの湧き水のようにあふれるいろいろな言葉に感動していました。『まっすぐな道でも必ず曲がり角がある。その曲がり角の向こうにはきっと素敵なことが待っているに違いないわ』というセリフが大好きです。子供の頃から大人になるまで、その言い方は違っても、いまだに私を押してくれている大切な言葉です。曲がってみないと、そこに蛇がいるのか、バラが咲いているのかは誰もわからない。でも『きっとそこにはすばらしいことが待っているに違いないわ』と言ったアンのその心を大事にして生きていきたいし、歌っていきたいと思います」

大和田は物語の舞台である、カナダのプリンス・エドワード島に聖地巡礼をしている。

「モンゴメリーの住んでいたグリーン・ゲイブルズにも行きました。この風景の中でモンゴメリーが名作『赤毛のアン』を書いたんだ、というのが納得できるくらい、あまりにも美しくて。もう一つ驚いたのは、すべてがアニメそのものなんです。鉄分を多く含んだ赤い道、“きらめきの湖”、“お化けの森”、“恋人たちの小径”、“雪の女王様”のリンゴの木…もうすべてがそこかしこに散りばめられていて、「あぁ、この風景のなかで小説が書かれた、そしてそれをアニメにしたんだ!」とまたここで、すごいと感動して。本当にカラフルなんですよね。道が赤いことと海が青いだけでも、そこに緑があって花が咲いてて。残念なことにアンのおうちは私が訪れた後に火事に遭ってしまったそうですが、いまだにすべての風景が脳裏に焼き付いています。ぜひ皆さんも行っていただきたいです」

なお、「2万人の鼓動 TOURSミュージカル『赤毛のアン』」に2003年の初演以来、大和田は出演を続けている。役柄はレイチェル・リンド夫人である。

「最初、プロデューサーさんはマリラ役ということでお話をするつもりでいらしたらしいんですけど、私はレイチェル・リンドさんの方がおもしろいと思ったんです。リンドさんは11人も子供産んでいる、村には必ずいる口うるさいおばさんです。そしてアンの教育係でもあって、初演から20年間やらせていただきましたこともすばらしい思い出です。その最初の公演の記者会見をカナダ大使館でやりまして、そのオープニングに『きこえるかしら』を歌わせていただきましたことも思い出します」

© NIPPON ANIMATION CO., LTD. “Anne of Geen Gables” ™AGGLA アンが暮らしたグリーン・ゲイブルズ。制作前に高畑 勲らはロケ取材を実施しただけに、プリンス・エドワード島の空気感まで見事に再現されていた

みんなのなかにある『アン』への愛や思い出を感じて歌うコンサート

© NIPPON ANIMATION CO., LTD. “Anne of Geen Gables” ™AGGLA 2023年の「赤毛のアン アニメコンサート」のステージ。スクリーンの名場面をバックに、オーケストラの演奏と大和田の歌唱を堪能できる

2025年4月29日、東京オペラシティ コンサートホールにて「赤毛のアン アニメコンサート」が開催される。2023年の公演ではチケットが即完売したという大人気公演の再演だ。大和田りつこやオーケストラの他、アン・シャーリー役の山田栄子とナレーションを務めた羽佐間道夫の二人の声優も出演することも話題になっている。

「前回はコロナ禍で、最初にやろうというお話から3、4年延びたんです。延期して時間があったにもかかわらず大あわてで本番を迎えました(笑)。お客様がいっぱい入ってくださるだろうか…、アニメと音楽が流れるコンサートをどんなふうに鑑賞してくださるのかしらと思ったんです。皆さんご自分の記憶のなかにある思い出をたどっていらっしゃるのもあると思うのですが、ハンカチを出してとめどもない涙を拭う方がいらっしゃる。それを見て、『皆さんのそれぞれのなかにアンが住んでいたんだな』って。音楽コンサートをただ観にいらしてるだけではなくて、『アン』の放送があって、この演奏会になるまでの人生のなかで『あの時あんなことがあった』という記憶をきっとそれぞれ思い出されて、一緒に2時間を過ごしてくださったんじゃないかなって。私たちも山田栄子ちゃんも同じ気持ちでした。だからその涙に感動し、とてもありがたかったですね」

今回は昼と夜の2部公演。昼の部のチケットはすでに完売している。最後はコンサートへの意気込みで締めくくろう。

「『赤毛のアン』の思い出のある方には、絶対満足していただけると思います。『そのオペラシティの角を曲がるときっといいことがあるはず! です』ただ、難しいんですよ、歌が。本当に覚悟がいるんです。下っ腹に力を入れて、軽い気持ちでは歌えない楽曲です。そのためには難しいという概念を捨てて。あぁ、アン・シャーリーに肩を叩いて言ってほしいです。『何も考えないで楽しんで歌えばいいのよ』って(笑)」

「赤毛のアン アニメコンサート」
●出演者:山田栄子(アン・シャーリー)/大和田りつこ(歌唱)/羽佐間道夫(ナレーション)/井田勝大(指揮者)/シアター オーケストラ トウキョウ(管弦楽)
●開催日:2025年4月29日(祝・火)
①開場13:15/開演14:00 ②開場17:15/開演18:00
●会場:東京オペラシティコンサートホール
●チケット ¥1万1,000円(全席指定)
●公式サイト https://www.anne-concert.com
© NIPPON ANIMATION CO., LTD. “Anne of Geen Gables” ™AGGLA

この記事を書いた人
金丸公貴
この記事を書いた人

金丸公貴

スタンダードな昭和49年男

昭和50年男編集長。身の回りで流行っていることを普通に楽しんでいたら、1980〜90年代カルチャーを扱う「昭和50年男」の編集を務めることに。「昭和」シリーズ発売日である毎月11日前後に「昭和男女TV」を生配信している。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

シルバーをアートに変える、現代の錬金術師。

  • 2025.09.24

ネイティブアメリカンの伝統技法をベースに現代的なエッセンス、そして日本独自の繊細な美意識を加えることで唯一無二の世界観を紡ぎ出すFIRST ARROW’s。一片のシルバーの塊に命を吹き込むその様は まさに現代のアルケミスト(錬金術師)という表現が相応しい。これらの作品は貴方が身に付けることで完成する...

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...

Pick Up おすすめ記事

レザーラバー必見! 革ジャン用に作られた薄手のスウェットをゲットせよ!

  • 2025.09.30

革ジャン専用のTシャツをリリースし、レザーラバーから絶大な支持を受けるブランド「ハイウェイナイン」。ライトニング別注の「Lightning Leather Lover Tシャツ」のボディにも使われているので、愛用している方も多いのでは? そんなハイウェイナインが、レザーラバーのために新たなアイテムを...

デニムにする? コーデュロイにする? エドウインのトラウザーズを軸に作る「シン・トラッドスタイル」

  • 2025.09.19

ジャパニーズアイビーのボトムスは、太ももから裾まで太さが一定のパイプドステムが主流であった。対してタック入りのトラウザーズは、1920年代に登場したといわれる、よりクラシックなボトムス。そんな旧きよきトラウザーズを軸に、いつものトラッドスタイルを刷新してみてはいかがだろうか。 【右】トラウザーズ2万...

【Willis & Geiger×2nd別注】ミリタリーとサファリが香るアーバンアウトドアウエア

  • 2025.09.17

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 90年代のアーカイブをデザインソースに、上品さを加えてアップデート。ウールメルトンジャケット[メトロ ウォーカー] ...

東洋エンタープライズがこれまでに培ったノウハウや知見の集大成「モダクト」と「タフナッツ」

  • 2025.09.19

「シュガーケーン」や「バズリクソンズ」など、ヴィンテージをベースとした生地やディテールの圧倒的な作り込みで知られる東洋エンタープライズ。そんな同社が手がけるブランド、「モダクト」と「タフナッツ」は、これまでに培ったノウハウや知見の集大成でありながらどんな日常のシーンでも使いやすい実用性を備える。映画...

Wranglerの走破性は本物か? オフロード体験会で徹底検証

  • 2025.10.03

筑波山の麓で開催されたジープのオフロード体験イベントは、ジープオーナーはもちろん、新規顧客にとってもジープの魅力を存分に感じられる特別な一日となった。専用のオフロードでラングラーならではの走破性を体感でき、オーナー同士の交流も見られた。今回は現地取材を通して、その模様と参加者のリアルな声をお届け。 ...