「ウエアハウス」が最古のA-2を完全再現。

ヴィンテージピースを徹底的に検証しリプロダクションを生み出す手間はデザイナーの感性に頼るモノづくりの何倍も知識と労力が必要となる。この歴史への挑戦から素晴らしいプロダクツが誕生している。「再現させたい」とクリエイターたちを鼓舞するヴィンテージウエアの発見からすべてが始まる。

最古のA-2を完全再現。

1931年、米陸軍航空隊が航空機の乗組員用ユニフォームとして採用したのが『TYPE A-2』だ。それまでのボタン掛けだったフロントが、当時の最新技術だった“ファスナーフロント”になって機能的に向上したモデルだ。前身の『TYPE A-1』の問題点を、実際に着用するパイロットの意見をもとに改良したという肝いりのジャケットだった。

その特徴は、馬の鞣し革を使いながら狭い機内で動きやすく、布帛衣料のように着やすいこと。そして、ニットカフスとウエストバンドで風の侵入を防ぎ、フロントジッパーと上部のフックで襟を閉めることで保温効果もあることだった。軍に納入していたのは『Werber Leather Coat Co.』社で、当初はポケットフラップにTYPE A-1と同じ穴かがりのボタンを装備していたが、スナップボタン式に改良。NRAによる労働組合の発足によって、生産工場としては以前より制限がかけられた中で、軍が求めるコストダウンと機能性向上の両立を目指した結果、このような仕様が生まれた。そうして1933年、その後10年以上も続く完成形というべきTYPE A-2の仕様が確立。その最初に納入されたモデルが、今回紹介するオーダー番号『33-1729』なのである。

WAREHOUSEでは、奇跡的にその実物を入手。30周年となる今年のリリースに向けて着々と動いてきた。資材の開発に始まったが、最も苦労したのがジッパー。1930年代初頭の“クワガタ”と称される特殊な形状のジッパーも実物と寸分狂わぬものを再現。数年かけたモノづくりが、満を持してこの秋冬にお披露目となる。

Lot 2232 WERBER LEATHER COAT CO. TYPE A-2 JACKET ORDER NO.33-1729

『Werber Leather Coat Co』によるこのTYPE A-2の1stモデルは、襟先やフロントポケットとフラップに丸みがあるのが特徴。第二次世界大戦期に数万着も量産される前の風合い豊かな馬革の質感も魅力的だ。そのすべてを忠実に再現したこの1着は、WAREHOUSEの創業30周年を記念するのにふさわしい。¥275,000_

1932年1月19日に特許取得した通称“クワガタ”TALON。1929年から採用され、リベット留めによるジッパーエンドの1933年の改良と同時に廃止された。

穴かがりのボタン留めフラップは、この『33-1729』というモデルからスナップ仕様になった。丸みのあるフラップ形状も特徴だ。

カフスと胴のリブはウール100%で、当時物と同様の厚みになるよう、糸の選定や編む時のテンションに細心の注意を払って再現。

【問い合わせ】
WAREHOUSE TOKYO
Tel.03-5457-7899
http://www.ware-house.co.jp

(出典/CLUTCH Magazine VOL.101 2025年11月号」)

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
この記事を書いた人

CLUTCH Magazine 編集部

世界基準のカルチャーマガジン

日本と世界の架け橋として、国外での販路ももつスタイルカルチャーマガジン。本当に価値のあるモノ、海外記事を世界中から集めた、世界基準の魅力的コンテンツをお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...

決して真似できない新境地。18金とプラチナが交わる「合わせ金」のリング

  • 2025.11.17

本年で創業から28年を数える「市松」。創業から現在にいたるまでスタイルは変えず、一方で常に新たな手法を用いて進化を続けてきた。そしてたどり着いた新境地、「合わせ金」とは。 硬さの異なる素材を結合させるという、決して真似できない新境地 1997年の創業以来、軸となるスタイルは変えずに、様々な技術を探求...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

グラブレザーと、街を歩く。グラブメーカーが作るバッグブランドに注目だ

  • 2025.11.14

野球グローブのOEMメーカーでもあるバッグブランドTRION(トライオン)。グローブづくりで培った革の知見と技術を核に、バッグ業界の常識にとらわれないものづくりを貫く。定番の「PANEL」シリーズは、プロ用グラブの製造過程で生じる、耐久性と柔軟性を兼ね備えたグラブレザーの余り革をアップサイクルし、パ...

Pick Up おすすめ記事

着用者にさりげなく“スタイル”をもたらす、“機能美”が凝縮された「アイヴァン 7285」のメガネ

  • 2025.11.21

技巧的かつ理にかなった意匠には、自然とデザインとしての美しさが宿る。「アイヴァン 7285」のアイウエアは、そんな“機能美”が小さな1本に凝縮されており着用者にさりげなくも揺るぎのないスタイルをもたらす。 “着るメガネ”の真骨頂はアイヴァン 7285の機能に宿る シンプリシティのなかに宿るディテール...

【UNIVERSAL OVERALL × 2nd別注】ワークとトラッドが融合した唯一無二のカバーオール登場

  • 2025.11.25

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【UNIVERSAL OVERALL × 2nd】パッチワークマドラスカバーオール アメリカ・シカゴ発のリアルワーク...

雑誌2ndがプロデュース! エディー・バウアー日本旗艦店1周年を祝うアニバーサリーイベント開催決定!

  • 2025.11.21

エディー・バウアー日本旗艦店の1周年を祝うアニバーサリーイベントを本誌がプロデュース。新作「ラブラドールコレクション」や本誌とのコラボなど、ブランドの情熱が詰まった特別な9日間を見逃すな! 来場者には限定のブランドブックを配布! 今回のイベントに合わせ、「エディー・バウアー」をもっと知ってもらうため...

「アイヴァン」からニューヨークに実在する通りの名前を冠した新作アイウエアコレクション登場

  • 2025.11.21

ニューヨークに実在する通りの名前を冠した「アイヴァン」の新作コレクション。クラシックな要素をサンプリングしながらも現代の空気感を絶妙に捉え服と同等か、それ以上にスタイルを左右する究極のファッショナブルアイウエア。 Allen 2023年、NYに誕生した「ビースティ・ボーイズ・スクエア」。その付近で出...

今こそマスターすべきは“重ねる”技! 「ライディングハイ」が提案するレイヤードスタイル

  • 2025.11.16

「神は細部に宿る」。細かい部分にこだわることで全体の完成度が高まるという意の格言である。糸や編み機だけでなく、綿から製作する「ライディングハイ」のプロダクトはまさにそれだ。そして、細部にまで気を配らなければならないのは、モノづくりだけではなく装いにおいても同じ。メガネと帽子を身につけることで顔周りの...