英国旧車の魅力とは? 「ADDICT CLOTHES」代表・石嶋さんの愛車とライフスタイルから読み解く。

日本では英国製モーターサイクルといえば戦後のTriumphが圧倒的なマジョリティで、次いでBSAやNORTONだが、ADDICT CLOTHES代表の石嶋聡さんが選ぶ愛車はVelocetteやSUNBEAMなど、戦前の英国車ばかり。ファッションやモーターサイクルをはじめ英国カルチャーに精通する石嶋さんが天邪鬼な英国旧車に魅了される理由とは。

「ADDICT CLOTHES」代表・石嶋 聡さん

英国製ライダースをモチーフとしたプロダクツを展開するADDICT CLOTHESの代表であり、英国製ヴィンテージのコレクターでもある。

軽快かつアナログな操作感こそ英国旧車の魅力。

「英国車に乗るきっかけとなったのはライダースを始めとしたファッションですが、だからと言って最初から英国車だけに絞っていたわけではないんです。ロッカーズなどイギリスのバイクカルチャーから入ったわけでもないし、そもそも旧いモノが好きだから旧いハーレーもカッコいいとは思っています。ただ、コンパクトで軽い操作性を重要視しているのと、単気筒のフィーリングが好みなので、旧い英国車が自分に合っていたというわけです。その中でも旧車にどっぷり魅了されたのは10数年前に手に入れた戦前のSUNBEAMが始まりでした」

石嶋さんの最初の英国旧車は軽快で土臭いスタイルが気に入って手に入れた’60年代のBSAビクターだが、しばらくして戦前の英国車に興味を抱き、購入したのが’30年のSUNBEAMだった。リジッドフレームにガーダーフォークを備えたクラシカルなスタイリングに加え、手動進角やハンドシフトのアナログな操作が新鮮だったのだそうだ。

「新しいバイクも快適で楽しいけれど、極端に言えば普通のクルマに乗っているようなイメージ。旧車は振動も強いし、普通に乗るだけでも操作が多く、軽快な車体を自分の技術で操って乗る感覚はスポーツに近いような魅力があるんです。長距離を走ったり、大袈裟にスピードを出さなくても、通勤など普段の乗り方で独特の〝スポーツ感〞を味わえるのが戦前の英国車の醍醐味です」

また、英国旧車と言っても石嶋さんが現在所有するのは戦前の単気筒エンジンを搭載するモデルが中心。市場の流通量を考えればTriumphのバーチカルエンジンを積むモデルが主流だが、戦前のイギリスは二輪メーカーが数多く存在し、その中でも日本であまり見ることのない単気筒モデルが石嶋さんの好奇心をくすぐったようだ。走行撮影を行った’60年代のスクランブラーは石嶋さんの愛車の中で最も高年式なモデルにあたる。

「60年前のスクランブラーでも戦前モデルに比べれば快適過ぎるほど。趣味性から考えれば本命は戦前の英国車ですが、所有する3台の戦前モデルはいますべて整備の順番待ち。自分でバイクショップを経営するとどうしてもお客さんの車両優先で、自分のバイクは後回しになってしまって……。ただ、戦前モデルでもしっかり整備すれば普段乗りできるので、いつかまた戦前の英国車で東京の道路を走り回るのが楽しみです」

ADDICT CLOTHES TOKYOに併設する英国旧車専門店『ADDICT CLOTHES VINTAGE MOTORCYCLES』。Velocetteをはじめ1920~’70年代の希少な英国車の整備/販売を行っている
ADDICT CLOTHESの全ラインナップが揃う旗艦店。店内に配置された、ブランドの世界観に欠かせない英国旧車も見所だ

旧いブリティッシュスタイルで統一した愛用ギア。

TT&CO.とのコラボで展開するジェットヘルメットは、ヴィンテージのエバーオーク・レースマスターをモチーフとし、日本人の頭に合わせて設計されている。

石嶋さんが愛用するADDICT CLOTHESのシープスキン製サマーグローブ。ゴーグルやサングラスのレンズを拭く為に指先にスウェード素材を配している。

’50年代の英国製ワックスドコットンジャケットをベースにシープスキンで再構築したADDICT CLOTHES JAPAN のAD-10。約8年の着用によって、皺が刻み込まれ下地の茶色が現れている。

旧いイギリスのバイク雑誌に掲載される写真や広告は、ファッションを含めた当時の時代感を知るのに役立つため、『MOTOR CYCLING』など数多くの資料を所有している。

ロードモデルをベースとしたメーカーメイドのスクランブラー。

1962 Velocette Scrambler

愛車の中で最も高年式な通勤快速。Velocetteのロードモデル『MSS』をベースとしたメーカーカスタムによるスクランブラーモデル。スタイリングには手を入れず当時の時代感をキープ。’70年代以降にモトクロッサーが確立される以前の黎明期のスタイルが特徴で、アップマフラーやフロント21インチホイールなど、当時のダート走行を意識した装備が魅力だ。

2018年には千里浜で開催されたビーチサイドレースに参戦。保安部品以外の装備を変更することなく、草レースも楽しめるのがスクランブラーの醍醐味
軽快かつトルクフルな英国製の単気筒エンジンが石嶋さんのこだわり。スクランブラーの心臓は、ロードモデルMSSの排気量500㏄ OHVエンジンをベースにメーカーがチューンを施したホットな仕様に仕上げられている
木谷達朗さん。石嶋さんが安心して英国旧車を楽しめるのは、メカニックの木谷さんの存在があってこそ。単気筒の英国車を好み、レアモデルにも精通するスペシャリスト

レースの経験をフィードバックしたKシリーズの貴重なフルオリジナル。

1933 Velocette KTS Mark1

KTSマーク1は、マン島TTレースやブルックランズレースなどに出場したノウハウを落とし込んだロードスポーツモデル。排気量350㏄ OHC単気筒エンジンを搭載する車体はK シリーズと呼ばれ、KTSはその中のツーリングスポーツとして開発された。ヘッドのバルブが剥き出しになったオープンバルブの仕様が特徴で、灯火類なども含め、オリジナルの装備を残した貴重な1台。

1930 NORTON CJ

NORTONとして初のOHCエンジンが搭載されたCJ。市販スポーツモデルだが、レーシングトリムで当時リリースされた個体の為、キックスタートなし押しがけオンリーのストイックなスタイル。ギアボックスもレーシング用クローズドレシオを採用。

1926 Rex Acme SPORT

Rex Acmeは、バイクの生産は’33年までの約10年程だが、マン島TTレースなどで活躍するなどレースシーンを背景に持ち、車両の現存数が非常に少ないレアな存在。昨年まで通勤号だったが、現在はブラックバーン社製エンジンのオーバーホール作業中の状態。

【DATA】
ADDICT CLOTHES TOKYO
TEL03-5341-4767
東京都新宿区四谷4-24-26 御苑ハイム1 階
営業/12:00~19:00(土日を中心とした不定期営業)
https://www.addict-clothes.com

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「CLUTCH2022年10月号 Vol.87」)

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