人生のラストノート、象徴となるものを。
「香水でトップノート、ミドルノート、ラストノートがありますが、60歳を目前にした自分は正に人生のラストノートを迎えてきたという実感があります。ただラストノートは、もっとも印象が強く、その象徴となる匂いです。この年齢を迎えて、ようやく表現したいことが見えてきたと思いますね」
世界的なヴィンテージコレクターでもあり、Rocky Mountain Featherbedなどを擁する35SUMMERS代表の寺本氏。10代より強く影響を受けたピエール・フルニエ(ANATOMICA)とパートナーシップを組み、オリジナルも手掛ける。
「ヴィンテージは奥深く、未知のものが多いのですが、近年は手に入れることで得るインプットよりも、今までの経験をアウトプットする作業の方に楽しさを感じます。もちろん今までもベストを尽くしてきましたが、最近になってもの作りへの正解がようやく見えてきた。ファッションのタームは大事ですが、そこにとらわれず、時間をじっくりと掛けて、真摯なもの作りをすることが大切だと。だから晩年期は、そんなこだわり抜いたアイテムを身に纏い、年齢を重ねていきたいと思っています。ただ60歳で引退するつもりは毛頭なく、80歳までがんばろうと。ラストノートは長いんです(笑)」
「35summers」寺本欣児さんの愛用品。
1.JACKET/ANATOMICA
1年間掛けて作ったツイード生地を使ったジャケット。昨年の秋冬にリリースした。「ベースはベーシックなツイードですが、よく見ると色鮮やかな糸が織り込まれたオリジナルの生地です。英国の老舗Lovat Millに別注しています。ツイードは着れば着るほど馴染み、エイジングしていく感覚を味わえるのが醍醐味。きっと自分の晩年期には、いい風合いになっていることでしょう」
2.COAT/ANATOMICA
ANATOMICA東京の10周年を迎えて製作されたヴェンタイル仕様のスペシャルなシングルラグラン。「ANATOMICAの普及の名作であるシングルラグランコートに、サバイバルイエローと呼ばれる緊急事態を伝えるためのカラーリングのヴェンタイルを使用。この色とレスキューオレンジは、政府機関などでも使われるため、いつも作れるようにデータとして持っているカラーなんですよ」
3.WATCH/Patek Philippe
今から20年前に自身へのご褒美として購入したアクアノート。近年はその人気と廃盤したことが相まって、購入価格の数倍となっている。「ヴァンドーム広場の正規店で購入。時計、靴、車は新品を買う主義」
4.PEN/PILOT
クリエーションのスタートは必ずイラストからスタートする寺本氏。様々なメーカーのものを使ってきたが、行き着いたのは日本ブランドのモダンデザインだ。「このタイムラインは、ダブルアクションでペン先を収納するという大胆なデザインで使いやすい」
5.STICK/VINTAGE
それぞれフィッシングとハンティングを目的に作られたと思われるスティックは、ブリティッシュメイドのアンティークである。「これは英国に精通する加古さんという友人の遺品を譲り受けたものです。故人のものなので、詳細はわかりませんが、英国のスペシャリストが持っていたので、その造形美や質感から素晴らしいものだとわかる。密かに老後の楽しみにしています」
最近買ったもの、ハマっているもの
ベースノートにパチュリを使っている香りにハマっている。ルームフレグランスとキャンドルはdiptyque、香水は廃盤になった大型ボトルが珍しいSanta Maria Novella
(出典/「CLUTCH2022年8月号 Vol.86」)
Photo by Shingo Oura 大浦真吾 Text by Tamaki Itakura 板倉環
関連する記事
-
- 2024.11.08
古着好き必見! ネクストヴィンテージの教科書。Tシャツの章