車両スペックの差が付きにくいからこそ、純粋にレースの醍醐味を味わえる。
4月3日に開催されたBOBL第一戦。2022年シーズンは終日雨の白糸スピードランドで幕を開けた。BOBLとは、バトル・オブ・ボトム・リンクの略で、ボトムリンク式のフロントフォークサスペンションを備える1964年までに生産された市販のミニバイクに限定したロードレース。OHV構造のエンジンを備えるホンダ・スーパーカブを始め、ヤマハやスズキの同装備の車両が同じレースの中で競い合っていた。
筆者はこのレースの取材に訪れたのは今回が初めて。取材に訪れる前は、「カブ中心のレースなら車両のスピード的にレースど素人の自分でも走れそう……(勝ち負けは置いておいて)」と言うのが正直な印象だった。しかし、実際に目の前でレースを見てそのイメージは正しい部分もありながら、良い意味で期待を裏切られた。
BOBLは初心者のエントリーを歓迎していることもあり、オレンジのベストを着た初心者の姿がちらほら見られた。そして、海外のバイクに比べ、国産のミニバイクは車両を手に入れやすいことも敷居が低く感じられる要因だろう。それが事前のイメージ通りだった部分。主催者としては、このレースが入り口となって、他のより本格的なヴィンテージレースに興味を持つライダーが増えて欲しいと言う願いもあるようだ。
しかし、実際に目の前で見たレースはミニバイクとはいえ、思っていた以上のスピード感で、上位クラスは明らかにハイレベルなライダーたちが競い合っていた。改造のレギュレーションを厳しく設けているため、車両自体のスペックの差がつきにくく、それゆえ常に緊張感のある僅差のバトルが繰り広げられる。つまり、お金をかければ圧倒的なスピードを手に入れられるわけではなく、結局はライダーのスキルが勝敗を左右する最大の要因になるということ。
BOBLは、まずは勝敗に拘らずヴィンテージレースに挑戦してみたいという人も、ストイックにスキルを磨いてレースの醍醐味を楽しみたいという人も受け入れてくれる懐の深いレースなのだ。ヴィンテージのミニバイク限定のレースだからこそ、間口は広く、突き詰めれば果てしないレースの奥深さが色濃く感じられた。
B.O.B.L.で気になったレーサーを厳選紹介!
クラシカルなレースシーンの趣を尊重した車両のモディファイもB.O.B.Lの見所。1964年までのミニバイクをベースとした珠玉のレーサーを紹介する。
1.HONDA C 100
神奈川県のガスケットが製作したC110スポーツカブフレームにC100エンジンを搭載する1台。フェアリングやタンクなど、HONDAのレーシングパーツのリプロを装備したクラシカルなスタイル。
2.HONDA C 100
GPクラスHEAT 1を制した中村さんのC100。ダンパーでフォークを強化し、外装を軽量化。ダート経験者だけにウェットでも強さを証明。
3.HONDA C 111
自動遠心クラッチを採用するセミスポーツモデルであるC111ベースのレーサーは東京のアニマルボートが製作。フェアリングやタンク、シートカウルなど、外装はCS90用のレーシングパーツのリプロを装備。
4.HONDA C 100
FORK長谷川さんの愛機。ストックを基調とし、ホールド性の高いシートを装着したアップライトなポジション。
5.YAMAHA YF1
B.O.B.L.では珍しいYF-1のレーサーはM&M’Sのビルダー御林さんの愛機。ハンドルを前に装着し、ワンオフのロングタンクやシート、バックステップなどによって、レーシーな前傾ポジションを形成している。
(出典/「CLUTCH2022年6月号 Vol.85」)
Photo by Satoru Ise 伊勢悟 Text by Yuta Kinpara 金原悠太 取材協力/ B.O.B.L. https://www.bobl-japan.com/