ファッションウィークに展示会への参加、取材に……と、何かと海外出張の多いCLUTCH Magazine編集部。ニューヨーク、パリ、ロンドン、フィレンツェ、ロサンジェルス、はたまた天津まで、スケジュールが許す限り足を延ばしてきた。その度に、クラッチ的な琴線に触れる何かを収穫し、胸いっぱい、データいっぱい(そしてトランクもいっぱい)にして日本へと帰ってくるのだ。
都市によって街の表情は様々だ。違いを生む要素を挙げるとキリがないが、その中で我々は、“サインボード・アート”の存在に注目した。サインボードとは、つまるところ看板である。特に手描きによるものには、サインペインターの感性が大きく反映される点から芸術性が高く、近年その価値が見直されている。アナログ的な手法だからこそ生まれる温かみに魅了される人は多く、最近では日本でも感度の高いカフェやショップ、ヘアサロンなどで目にするようになった。 昨夏、CLUTCH BOOKSの第3弾として発売した「サインボード・アート」は、フォトグラファーや編集部が思いがけず巡り合った(あるいは探し歩いた)サインボード・アートの数々を、約150ページにわたり紹介している。
▲目玉は、世界各国で活躍するサインペインターを紹介する「Sign Painter’s File」。実際にアトリエやギャラリーを訪ね、作品を見せてもらいながら彼らの世界観を覗かせてもらった。誌面で見られるサインペインターは総勢8名。是非とも彼らの凄味を、誌面を通して感じてほしい。
何かを訴求するため、告知するために生まれてきたサインアートは、少しでも道行く人々の印象に残るために人の目を引きやすい場所が選ばれ、デザインやフォントにも工夫がなされている。金箔とペイントを使い、ガラスなどに描く“ゴールド・リーフ”という表現はよく知られているが、レンガ壁を利用した“ブリックウォール・サイン”も海外ではよく見られる。時間をかけて雨風にさらされたがゆえのエイジングが、退廃的な雰囲気を醸し出し、これがなかなか格好良い。今回は、ページ数の関係で惜しくも誌面では紹介できなかったブリックウォール・サインをご覧いただこう。
街を歩いているだけで出会えるサインボードは、一番身近なアートだ。わざわざ入場料を払って美術館に行かなくとも触れられる、それこそがサインボード・アートの魅力のひとつだろう。気に留めず歩き去ってしまってはもったいない。旅行先で。住み慣れた町で。文字という限られた素材を駆使して生まれたアートの世界を堪能していただきたい。
Photo by Tadashi Tawarayama 俵山忠 (Seven Bros.)、Kentaro Minato 湊健太郎(Seven Bros.)、Lisa Kato 加藤里紗 Text by CLUTCH Magazine 編集部
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