“自分の好きなことを自分で撮って編集して書く” アメリカに憧れた青年が、彼の地で夢を叶えるまで―MONTHLY CLUTCH MAN【Vol.2】

  • 2021.11.01  2015.10.15

時代を超え、国境を越えて受け継がれていく、本当に価値あるものを知っている人。モノ選びにも妥協しない彼らの愛用品には、共通点がある――そのすべてに、ストーリーがあること。持ち主のライフスタイルやセンス、そして重ねてきたストーリーを物語る“CLUTCH MAN”の愛用品から、その哲学を拝見していく。
今回話を聞くのは、ヴィンテージ界でその名を知らない者はいない、果てなき探究者・田中凜太郎氏。今も昔も変わらず彼を突き動かす、その原動力とは。

始まりはファッションではなく、アメリカン・ロックから

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アメリカのヴィンテージ・クロージング、さらにはカルチャーといったニッチなカテゴリーを中心に、書籍「マイフリーダム」やイベント「インスピレーション」のプロモートまで手がける田中凛太郎氏。ヴィンテージのTシャツをメインに、アメリカンカルチャーをかつて存在したアイテムから紐解いた「マイフリーダム」は、コアなヴィンテージ・ファンたちから熱烈に支持された。現在でもカリフォルニアのロングビーチにある自宅兼スタジオから、ニッチな情報を発信し続けている。
「日本人の多くがそうであるように、アメリカンカルチャーとの出会いはアメリカン・ロックがまずは僕のスタートでしたね。いわゆるロック少年。とにかくアメリカ音楽にハマッていったのが始まり。それがアメリカ音楽、そしてロックンロールの定番ともいえるウエア、レザージャケットへとその興味が広がっていったことは性格的にも自然な流れでしたね」
アメリカンロックを掘り下げて行った結果、そのルーツともいえるブルースやジャズといった黒人音楽へたどり着く。
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黒人音楽に傾倒していったのが氏のルーツ。今でも多くのアナログ版を所有するが、その中でもお気に入りの3枚がワッツスタックス、クリフトン・シェニエ、エディ・テイラーの音源。

ニッチ・ピープルのためのバイブル「マイ・フリーダム」誕生

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学生時代から黒人音楽をベースとしたライター業をしていた氏は、「いつかはアメリカに行って、好きなことで食べていくため」の準備期間として、まずは日本でサラリーマンとして4年を過ごした。休暇の間に渡米しては現地で情報収集を続けるというような、レザージャケットの研究を重ね、ついに『革ジャン物語』(扶桑社刊)の出版を契機に、ロサンジェルスへの移住を実現。その彼を待っていた次のステージが、「マイフリーダム」の発刊だった。
「革ジャンの取材をしていくと、必ずといっていいほど、その脇には旧いTシャツが存在してるんです。取材に行った人に昔のTシャツをお土産にもらったことも多くて。Tシャツの存在っていうのもひとつのアメリカ文化だと気づかされましたし、モーターサイクルや音楽、それにサーフィンといったどんなジャンルにも存在しているアイテム。これをひとつにまとめたらおもしろいんじゃないかというのがマイフリーダムのスタートでしたね」
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レザージャケットの研究で、様々な人たちと出会うことで知ったヴィンテージTシャツという世界。それから自身でも多くのTシャツと出会ったが、今でも手放せないモノが多い。

「『マイフリーダム』を実写版にしたら……」という発想が、「インスピレーション」の源

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「マイフリーダム」は、当初から10冊をひとつの区切りとし、その多くは同時進行で進められた。どれも独自の視点で探究したヴィンテージ・ファッションの研究結果である。その編集作業のなかから生まれたのが、ヴィンテージ・クロージングを主体としたイベント「インスピレーション」だ。
アメリカ国内のヴィンテージディーラーを中心に、日本やヨーロッパなどのヴィンテージ業界の重鎮たちが一同にアイテムを持ち寄って販売する。毎年2月にサンタモニカ、ロングビーチ、ダウンタウン・ロサンジェルスを経て、ついに今年、初の東海岸開催になるニューヨークでの展示が、10月16日、17日(現地時間)から始まる。
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Inspiration New York
http://inspirationla.com/

書籍編集からイベントプロモートまで。生き延びるために、彼が身につけたもの。

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カメラマンから編集まで一人でこなす田中氏。それは、自分のスタイルがなければ生きていけないアメリカで生き延びるために身につけた彼なりのスタイルだと、氏は自ら話す。
書籍にしてもイベントにしてもそのカタチは違えど、そこには氏ならではの思いが一貫して存在している。それはアメリカに行きたいという思いだ。
現在45歳。人生で50タイトルの本を出すことが目標だという氏の中では、常に多くの企画が同時進行的に動いている。学生時代に体験したひとつの本を作ることの喜びに始まり、そのフィールドを自分の好きなことだけで表現していく。それはけして容易ではないが、少年時代に憧れたカリフォルニア、大好きなミッドセンチュリーのファニチャーに囲まれたスタジオから、氏のシャッター音と、キーボードを叩くタイピング音がこれからも消えることはない。

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