“自分の好きなことを自分で撮って編集して書く” アメリカに憧れた青年が、彼の地で夢を叶えるまで―MONTHLY CLUTCH MAN【Vol.2】

時代を超え、国境を越えて受け継がれていく、本当に価値あるものを知っている人。モノ選びにも妥協しない彼らの愛用品には、共通点がある――そのすべてに、ストーリーがあること。持ち主のライフスタイルやセンス、そして重ねてきたストーリーを物語る“CLUTCH MAN”の愛用品から、その哲学を拝見していく。
今回話を聞くのは、ヴィンテージ界でその名を知らない者はいない、果てなき探究者・田中凜太郎氏。今も昔も変わらず彼を突き動かす、その原動力とは。

始まりはファッションではなく、アメリカン・ロックから

MONTHLY CLUTCH MAN【Vol.2】RIN TANAKA_03
アメリカのヴィンテージ・クロージング、さらにはカルチャーといったニッチなカテゴリーを中心に、書籍「マイフリーダム」やイベント「インスピレーション」のプロモートまで手がける田中凛太郎氏。ヴィンテージのTシャツをメインに、アメリカンカルチャーをかつて存在したアイテムから紐解いた「マイフリーダム」は、コアなヴィンテージ・ファンたちから熱烈に支持された。現在でもカリフォルニアのロングビーチにある自宅兼スタジオから、ニッチな情報を発信し続けている。
「日本人の多くがそうであるように、アメリカンカルチャーとの出会いはアメリカン・ロックがまずは僕のスタートでしたね。いわゆるロック少年。とにかくアメリカ音楽にハマッていったのが始まり。それがアメリカ音楽、そしてロックンロールの定番ともいえるウエア、レザージャケットへとその興味が広がっていったことは性格的にも自然な流れでしたね」
アメリカンロックを掘り下げて行った結果、そのルーツともいえるブルースやジャズといった黒人音楽へたどり着く。
MONTHLY CLUTCH MAN【Vol.2】RIN TANAKA_04
黒人音楽に傾倒していったのが氏のルーツ。今でも多くのアナログ版を所有するが、その中でもお気に入りの3枚がワッツスタックス、クリフトン・シェニエ、エディ・テイラーの音源。

ニッチ・ピープルのためのバイブル「マイ・フリーダム」誕生

MONTHLY CLUTCH MAN【Vol.2】RIN TANAKA_05
学生時代から黒人音楽をベースとしたライター業をしていた氏は、「いつかはアメリカに行って、好きなことで食べていくため」の準備期間として、まずは日本でサラリーマンとして4年を過ごした。休暇の間に渡米しては現地で情報収集を続けるというような、レザージャケットの研究を重ね、ついに『革ジャン物語』(扶桑社刊)の出版を契機に、ロサンジェルスへの移住を実現。その彼を待っていた次のステージが、「マイフリーダム」の発刊だった。
「革ジャンの取材をしていくと、必ずといっていいほど、その脇には旧いTシャツが存在してるんです。取材に行った人に昔のTシャツをお土産にもらったことも多くて。Tシャツの存在っていうのもひとつのアメリカ文化だと気づかされましたし、モーターサイクルや音楽、それにサーフィンといったどんなジャンルにも存在しているアイテム。これをひとつにまとめたらおもしろいんじゃないかというのがマイフリーダムのスタートでしたね」
MONTHLY CLUTCH MAN【Vol.2】RIN TANAKA_06
レザージャケットの研究で、様々な人たちと出会うことで知ったヴィンテージTシャツという世界。それから自身でも多くのTシャツと出会ったが、今でも手放せないモノが多い。

「『マイフリーダム』を実写版にしたら……」という発想が、「インスピレーション」の源

MONTHLY CLUTCH MAN【Vol.2】RIN TANAKA_07
「マイフリーダム」は、当初から10冊をひとつの区切りとし、その多くは同時進行で進められた。どれも独自の視点で探究したヴィンテージ・ファッションの研究結果である。その編集作業のなかから生まれたのが、ヴィンテージ・クロージングを主体としたイベント「インスピレーション」だ。
アメリカ国内のヴィンテージディーラーを中心に、日本やヨーロッパなどのヴィンテージ業界の重鎮たちが一同にアイテムを持ち寄って販売する。毎年2月にサンタモニカ、ロングビーチ、ダウンタウン・ロサンジェルスを経て、ついに今年、初の東海岸開催になるニューヨークでの展示が、10月16日、17日(現地時間)から始まる。
MONTHLY CLUTCH MAN【Vol.2】RIN TANAKA_08
Inspiration New York
http://inspirationla.com/

書籍編集からイベントプロモートまで。生き延びるために、彼が身につけたもの。

MONTHLY CLUTCH MAN【Vol.2】RIN TANAKA_09
カメラマンから編集まで一人でこなす田中氏。それは、自分のスタイルがなければ生きていけないアメリカで生き延びるために身につけた彼なりのスタイルだと、氏は自ら話す。
書籍にしてもイベントにしてもそのカタチは違えど、そこには氏ならではの思いが一貫して存在している。それはアメリカに行きたいという思いだ。
現在45歳。人生で50タイトルの本を出すことが目標だという氏の中では、常に多くの企画が同時進行的に動いている。学生時代に体験したひとつの本を作ることの喜びに始まり、そのフィールドを自分の好きなことだけで表現していく。それはけして容易ではないが、少年時代に憧れたカリフォルニア、大好きなミッドセンチュリーのファニチャーに囲まれたスタジオから、氏のシャッター音と、キーボードを叩くタイピング音がこれからも消えることはない。

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
この記事を書いた人

CLUTCH Magazine 編集部

世界基準のカルチャーマガジン

日本と世界の架け橋として、国外での販路ももつスタイルカルチャーマガジン。本当に価値のあるモノ、海外記事を世界中から集めた、世界基準の魅力的コンテンツをお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

上質な馬革をシンプルに愉しむ。石炭(COAL)を運ぶために使われていたコールバッグという選択肢

  • 2025.12.27

きめ細かく美しい銀面を持つことで知られる馬革。軽くて強靭、上品な質感、そして使うほどに味わい深い経年変化で、多くのレザーファンたちを魅了し続けてきた。そんな馬革をシンプルに愉しませてくれるのがINCEPTIONのコールバッグだ。 ヴィンテージをベースに、実用性を加味し再構築。 19世紀末から20世紀...

「ORGUEIL」が提案する、凛冬を彩る大人のガーメンツ。

  • 2025.12.26

凛とした寒さが日に日に増し、コーディネートが重くなりがちな季節。クラシックなデザインと丁寧な作り込みのORGUEILのクロージングが、いつものスタイルを格上げしてくれる。さりげなく上質で存在感のある一着が、冬の日々を彩ってくれるはずだ。 Aniline Steer Oil A-1 Jacket 19...

憧れの平屋が実現できる! かつてスクリーン越しに憧れたアメリカンハウスで暮らす

  • 2025.12.31

かつてスクリーン越しに憧れた、夢が詰まったアメリカンハウス。到底叶わないと思っていたその景色が、実は日本でも実現できるそうなんです。新婚ホヤホヤの編集部員、パピー高野とジョージが、アメリカンスタイルを得意とする、埼玉県を中心に海外スタイルのお家を手掛ける注文住宅・輸入住宅の専門店「古川工務店」の住宅...

アメリカンヴィンテージやヨーロッパのアンティーク品や建築物からインスパイアされた「ホリゾンブルー」のジュエリー

  • 2025.12.28

宝飾品と呼ぶべき繊細で美しいジュエリーを世に送り出し、国内外で人気を集めるHorizon Blue Jewelry。アメリカンヴィンテージだけでなく、ヨーロッパのアンティーク品や建築物など様々なものからインスパイアされた逸品は、大量生産できないため入手機会の少ない希少な存在だが、ここでは今後発売する...

映画で観た欧米のクラシックな世界観をモダンに昇華。“好き”が詰まった空間で暮らす!

  • 2025.12.30

衣食住は、私たちが生活するうえで必要不可欠な要素である。なかでも日々の生活と最も密接に結びつく住居には、ひと際こだわりたいもの。自分のお気に入りの空間を作るための選択肢のひとつに、リノベーションがある。 “三人四脚”で作り上げた理想の居住空間 兵庫県芦屋市。豊かな自然と落ち着きのある街並みから関西で...

Pick Up おすすめ記事

オリジナル建材で古民家をスタイリッシュにリニューアル! ビフォーアフターを大公開!!

  • 2025.12.28

2025 年の夏の時点では床だけが施工されただけの古民家を再び訪れると、当時とはまったく違う姿になっていた。カントリーベースはこの家にどんな魔法をかけたのか? 何でもない空き家が宝物なる材料と技術 [caption id="attachment_887933" align="alignnone" w...

憧れの平屋が実現できる! かつてスクリーン越しに憧れたアメリカンハウスで暮らす

  • 2025.12.31

かつてスクリーン越しに憧れた、夢が詰まったアメリカンハウス。到底叶わないと思っていたその景色が、実は日本でも実現できるそうなんです。新婚ホヤホヤの編集部員、パピー高野とジョージが、アメリカンスタイルを得意とする、埼玉県を中心に海外スタイルのお家を手掛ける注文住宅・輸入住宅の専門店「古川工務店」の住宅...

「ORGUEIL」が提案する、凛冬を彩る大人のガーメンツ。

  • 2025.12.26

凛とした寒さが日に日に増し、コーディネートが重くなりがちな季節。クラシックなデザインと丁寧な作り込みのORGUEILのクロージングが、いつものスタイルを格上げしてくれる。さりげなく上質で存在感のある一着が、冬の日々を彩ってくれるはずだ。 Aniline Steer Oil A-1 Jacket 19...

映画で観た欧米のクラシックな世界観をモダンに昇華。“好き”が詰まった空間で暮らす!

  • 2025.12.30

衣食住は、私たちが生活するうえで必要不可欠な要素である。なかでも日々の生活と最も密接に結びつく住居には、ひと際こだわりたいもの。自分のお気に入りの空間を作るための選択肢のひとつに、リノベーションがある。 “三人四脚”で作り上げた理想の居住空間 兵庫県芦屋市。豊かな自然と落ち着きのある街並みから関西で...

デニム界の異端児・ラングラー、製造期間は約1年のみの“幻の名作”がついに復刻

  • 2025.12.27

ロデオ・ベンをデザイナーに迎えてカジュアルウエアに参入したという歴史やカウボーイカルチャーとの結びつきなど、独自の発展を遂げてきたラングラー。膨大なアーカイブの中から、王道から希少な隠れ名作まで全6型が復刻を果たした。 幻の名作が華麗なる復刻を遂げた。 アメリカ三大デニムブランドのなかでも特異な歴史...