内装は少し手を加えただけでほぼ現状活かし。
これまで全国津々浦々、数えきれないほどのショップを手掛けてきた山根氏。内装工事や開店準備は必ず店主自ら取り仕切るのが彼の流儀だ。
新店舗として選んだ街は日本の古都・奈良。外国人観光客も多く賑わう餅飯殿商店街にて、50年ほど前にメンズショップとして建てられた建物で、当時の内装をほぼそのまま活かした重厚な造りがこの店の大きな特徴だ。屋上に上がれば奈良の象徴、若草山、興福寺五重塔が望める好立地だ。
「1970年代につくられたメンズショップの内装そのまんま。当時を再現して造ったわけやなくほんまのそのまんま。造り付けのシャツの棚とか、わたしら子供のころのトラッドショップ? まんま残ってます。時代遅れにもほどがある?(笑)」
手掛けた店舗の中でも随一の広さと趣き、そして重厚感を誇る。
ヴィンテージの靴用ショーケースが堂々と置かれ、オリジナルで作られたトラッドシューズが並ぶ。
壁面にはもともとの内装としてハンガー棚が設置されており、手を加えることなくそのまま使用している。
ショップ内の1階から2階へと登る階段も当時のまま。中央には「鉄人28号」の巨大なオブジェが出迎えてくれる。
山根氏がつくるウエアの象徴でもあるオリジナルデニムは、定番から新作まで、もちろんきっちり揃う。
得意とするデニムテーラードもずらり。トラッドでアイビーなジャケットは、これまでに彼が仕上げた傑作品。
激レア!? 山根氏が自ら手掛ける店舗製作現場に潜入。
ペンキのついた筆を手に持ち壁にアートを描く真剣な眼差しの山根氏。即時の色彩感覚でスラスラと筆を動かす。
建物に備え付けの非常用ベルを活かしたポップなカラーの壁面アート。重厚感溢れる店内にひと華添えてくれる。
搬入されたヴィンテージの巨大なシャツシェルフ。個々の引き出しにシャツを並べる店主。
ポロシャツをトルソーに着せカメラにポーズ。空間のイメージに沿ったアイテムをチョイス。
ブラックアウトされた木の端材や古材を使ってランダムに貼り付け作られた壁面。凹凸のある壁であるため、細かな清掃のチェックも入る。
透かし彫刻の欄間があるシークレットな部屋は現状VIPルーム。山根氏が趣味とする釣りの道具類が並べられる予定。
膨大な量のジーンズを仕分ける山根氏。壁面の棚にどのように陳列するかを考えるのも店主の仕事なのだという。
エントランスから見える2階のショーケース内には蝦夷鹿の剥製が鎮座する。奈良の象徴である鹿とは別物。
【DATA】
ヤマネジャパニーズデニムス 奈良店
奈良市餅飯殿町49-1
TEL.080-1365-0501
営業/12:00~19:00
https://yamaneart.base.shop
(出典/「Lightning 2024年5月号 Vol.361」)
Text/T.Itakura 板倉環 Photo/S.Kai 甲斐俊一郎