日本古来の素材や技術を使ったジュエリーブランドである「ichi イチ」の新作が実に興味深い。日本において古代から近世にかけて発展した「たたら製鉄」をご存じだろうか? 砂鉄や鉄鉱石を粘土製の炉で木炭を用いて純度の高い鉄を生産する昔ながらの製法で、映画『もののけ姫』を観た方なら、鉄の製造現場であるたたら場の様子がなんとなく想像がつくだろう。
製造の際に出る不純物を含んだ海綿鉄「鉄滓(ノロ)」にインスピレーション。
たたら製鉄は自然風のみを利用した方法で、製造の際「鉄滓(ノロ)」と呼ばれる不純物を含んだスポンジ状の海綿鉄ができる。使い物にならず、当時はゴミとして野山に捨てられ、現在でもたたら場があった近くにはノロが転がっているそうだ。「ichi」の職人が島根県にあるたたら場を訪れたときに、偶然このノロと出会ったことでノロシリーズが誕生することになる。
「私たちは普段から道具として鉄を使っていますし、鉱物としての興味もあり、鉄に対しての想いが強いんです。それにichiの主力であるシルバー製品と鉄との相性というか組み合わせは面白いと思っています。ノロはゴミとして扱われていましたが、私たちが命を吹き込むことで、ゴミが作品になる。たたら製鉄の歴史を垣間見られることにもロマンがあると思うんです」
ノロの凹凸をシルバーに施して仕上げるという手法を使い、ひとつひとつ表情が異なるのもノロシリーズの魅力なのだ。
「ichi」のシルバーアクセサリーといえば、プレーンや鎚目のように輝きや仕上がりの美しさが大きな特徴である。ノロシリーズのようなザラッとした相反するアクセサリーが新たに誕生したことで、「ichi」のシルバーアクセサリーの幅がさらに広がった。この仕上がりの違いを楽しめるのは「ichi」だからこそといえるだろう。
【DATA】
ichi
http://www.ichi.gr.jp
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