消しゴムの面白さは「消し味」にあり。日々進化する消しゴムの世界。

消しゴムは身の回りに1個あれば十分だ。では、なぜ次々と新しく発売される消しゴムに目を奪われ、そして買ってしまうのか。それは、消しゴムの「消し味」に自分の五感が魅了されているから。

消しゴムの歴史と「消し味」の変化。

万年筆に「書き味」があるように、消しゴムには「消し味」がある。ある消しゴムは擦ると紙面に吸い付くような、ゴム感が強い。別の消しゴムは、サラッとした消し味で軽快に鉛筆の筆跡を消していく。では、新しいこの消しゴムは…、と好みの消し味を求めて20個くらい買い漁っても、出費はボトルインク1本くらいで済む。我々の雑誌「趣味の文具箱」としての消しゴムのジャンルは、かなり手頃で実用的なのだ。

消しゴムが世に出たのは1770年。英国のジョゼフ・プルーストリーが弾性ゴムという新たな物質に黒鉛の筆跡を擦り取る効果があることを発見した。ドイツ・ニュルンベルクのフリードリッヒ・ステッドラーが町議会に正式な鉛筆製造を申し出たのが1662年で、これを実用的な鉛筆の登場とするなら、鉛筆は消しゴムの登場を100年以上待っていたことになる。

消しゴムの歴史で最初の革命は、鉛筆軸との合体だ。1858年に米国のハイマン・リップマンが鉛筆の後端に消しゴムを付ける仕組みで特許を取る。1本あれば書く、消すができる画期的な発明だった。

1950年代には材料がゴムから樹脂へと進化した。現在の消しゴムでは塩化ビニル樹脂や合成ゴムが多用され、正しくは「プラスチック字消し」という。材料が増えたことで、それぞれの消し味も一気に急増することになる。

プルーストリーが消しゴムを発明した4月15日は米国では「消しゴムの日(National Rubber Eraser Day)」となっている。また3月30日は、リップマンが特許を取得した日で「鉛筆の日(National Pencil Day)」。消しゴムも鉛筆も、何世紀にもわたって、多くの思想家や建築家、技術者、小説家などの行為を支えてきた偉大な道具なのだ。そして日々進化し続けている。

いま気になる消しゴムたち

(左上)クツワ/磁ケシ

ケース底にネオジム磁石を内蔵している。消しゴムには鉄粉が混じっているので、紙面に散った消しクズをケース底に集めて、ワンタッチで捨てられる。「おじケシ」などケースデザインの広がりもおもしろい。税込308円

(右上)シード/クリアレーダー

字を消す道具そのものが透明なのが斬新。ただ透けているだけじゃなく、独特の硬いグリップ力がある独特の消し味も魅力。クリアレーダー150/税込165円

(右下)プラス/エアイン富士山消しゴム

使う毎に減り、形が変わる消しゴムの宿命をデザインに生かしている。消す時に頭の中が「形を作る」モードに切り替わる感覚がおもしろい。エアインの多孔質セラミックパウダー配合で消し味も良好。税込220円

(左下)トンボ鉛筆/モノタフ

猛勉強や試験の本番などで消しゴムを握る手に思わず力が入り、折れたり、裂けたりする不満を解消している。強度は「MONO PE」の約8倍。消しゴムの食い込みを防ぐ「ななめスリーブ」の機能も素晴らしい。モノタフ/税込110円

(出展/「趣味の文具箱 vol.53」)

※参考文献/ヘンリー・ペトロスキー著「鉛筆と人間」(晶文社、1994年)
キャロライン・ウィーヴァー著「ザ・ペンシル・パーフェクト」(学研プラス、2019年)

この記事を書いた人
趣味の文具箱 編集部
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「趣味の文具箱」は手で書くことの楽しさ、書く道具としての文房具の魅力を発信している季刊雑誌。年に4回(3・6・9・12月)発刊。万年筆、手帳、インク、ガラスペンなど、文具好きの文具愛を満たす特集を毎号お届けしています。
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