「サンカッケー」デザイナー・尾崎雄飛さん|2007年に日本製の最高峰カットソーブランド、フィルメランジェを立ち上げる。2011年に独立し、2012年に日本の良い物を追求するブランド、サンカッケーを始める
『こうあるべき』をやり抜く日本職人の気概に共感。
日本製にこだわるデザイナーとして知られる尾崎雄飛さんが手掛けるサンカッケーは、本誌でも大人気を博すブランドだ。そんな達人の日本贔屓を色濃く感じさせる名品が、尾州ウールを採用したセットアップスーツ。このワンセットには、尾崎さんの熱い思いが随所に込められている。
「これまでにも多くのアイテムを国内にて作ってきました。そのなかで、いつも感銘を受けるのが、日本の職人 たちが持つ真摯な物作りのスピリッツ。ウールのスーツ作りであれば、まずアイロン行程がひとつの重要ポイント。僕がお世話になっている工場では、生地の〝ころし方〟など本当に絶妙です。
フラットな生地を人体にフィットするよう熱で立体に仕立てていく技は、国内でも随一。またステッチに関しても、海外なら実用に影響ない部分であればピッチを広くとったりするところを、キチンと伝統的に細かく均等に縫い上げてくれます。
『こんなモンでいいでしょ』ではなく、言わずとも『こうあるべき』をしっかりやり抜いてくれるのが日本職人。だからこのセットアップも高い完成度を長年キープできているのです。使っている生地は生産効率に優れた高速のレピア織機ではなく、低速だけど優しい味わいが織りだせる、ションヘル織機を使う工場で製作したもの。
その織機はすでに100年以上昔のヴィンテージ。ですが大事にメンテしながら現在も稼働させています。もちろん、その分コストも掛かりますが、旧きよきモノを大事に使う文化が日本にはあると感じます。そして良い生地であるなら、気合いを込めてしっかり縫製し、アイロンを掛けて仕上げようという気概があるんです」
そんな日本の物づくり精神に共鳴した尾崎さんは、最近、古い織機を有す尾州の生地工場を買い取ったのだとか。つまり、近い将来名実ともに日本製かつ純サンカッケーメイドのスーツが完成するに違いないのだ。産地への貢献も忘れない尾崎さんである。
サンカッケーのセットアップスーツ、そのディテールを拝見!
ショルダー
ジャケットの首から肩に掛けては、特に複雑な曲線が集中する部分。人体に沿うようアイロンの熱にて立体感を出す技は熟練職人だからこそ。肩のラインが歪むこともなくキレイに仕上っている。
生地
世界からも高い評価を受ける尾州のウール。尾崎さんは、昔ながらの力織機にてゆっくり生産される、深い味わいの生地に惚れ込んでいる。和服のカスリ柄にも似た和風チェックも特徴のひとつ。
ステッチ
縫製の緻密さも日本メイドはムラがないと評価を受けている。それを確認できるポイントのひとつが裏地の縫い付け部分。ピッチも細かく均等な運針が見て取れる。手を抜かない姿勢にリスペクト。
【問い合わせ】
三角形
sunkakke.jp
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2023年5月号 Vol.194」)
Photo/Ryota Yukitake(Model), Norihito Suzuki(Items) Hair&Make/Daisuke Yamada Text/Tsuyoshi Hasegawa
関連する記事
-
- 2024.11.22
英国スタイルに欠かせない「コーデュロイ」アイテム10選。
-
- 2024.11.22
今シーズンも注目したい、英国を代表する生地「ツイード」ファッションアイテム10選。
-
- 2024.11.22
ファッション上級者が教えてくれる、今買えるアメトラ“ウラ”の名品たち。【第5回】
-
- 2024.11.22
ファッション上級者が教えてくれる、今買えるアメトラ“ウラ”の名品たち。【第4回】