“山梨県”という縁で始まったレギュラーコーナー

エフエム甲府は、山梨県甲府市にあるコミュニティFM放送局だ。山梨学院大学のキャンパス内にスタジオがあり、番組放送中はガラス越しにパーソナリティの様子を見学できる。水曜の12〜15時に放送されている昼ワイド生番組「763 KOFU LOCAL LINE」は神部冬馬(かんべとうま)と三浦佳身(よしみ)がパーソナリティを務め、2023年からはまちだガールズ・クワイア(※1)のひよりが毎月第3水曜に「まちだガールズ・クワイアひよりの秘密基地!」(以下、秘密基地)にレギュラー出演をしている。
なお、「秘密基地」の構成は、『昭和50年男』で連載していた「高橋名人の冒険時代」「コミックキャラバン」のライター・内田名人が担当している。また、神部は『昭和50年男』vol.31に“ウルトラクイズ愛が強すぎる男”として登場。そして、ひよりが所属するまちだガールズ・クワイアには、筆者の出身地である神奈川県相模原市に隣接する町田市を拠点に活動しているということから、一方的に縁を感じていた。その神部とひよりが新ユニット“うまぴよ”を結成したと聞いてスタジオを訪ねた。
——「秘密基地」が始まったいきさつをお聞かせください。
ひより 私が山梨県出身ということしかないんですけれど(笑)。地元である山梨に関連した仕事をしたいと思った時に、内田さんとかのご縁でエフエム甲府さんに呼んでいただくことが多くて。そこで「また何かラジオとかでお仕事できないですか」ってほぼほぼ直談判ですよね?
神部冬馬(以下、神部) そんな感じですね。僕は「763 KOFU LOCAL LINE」っていう番組になる前、今年で4回目の改名かな? からずっとパーソナリティをやっているんですけれど、ひよりさんにはゲストで出ていただいていて。地元の子を応援していきたいということは局としても番組としてもあったので、ちょっと見切り発車みたいに少しずつレギュラーみたいな感じで月1でやっていこうかって、その場のノリじゃないですけれど「来月からおいで」とか本当にそのように始まりました。
——どなたが「秘密基地」というコーナー名を考案されたのでしょうか。
ひより 私とマネージャーとで何個か案を出して…。グループのホームは町田にあるけれど、地元にも自分の居場所、秘密基地を作るというイメージです。ちょっとわくわく感もあっていいかなって。
——コーナーを始めるに当たって顔を合わせた時の、お互いの第一印象をお聞かせください。
ひより コーナーになる前から神部さんの番組にゲストとして結構呼んでいただいていていましたが、本当にやさしい方で。町ガのメンバーって楽屋とかメンバー間で話しているとぽんぽん言葉が出てくるのに、いざ放送になるとどもっちゃったり言いたいことを言えなかったりすることがあるんですけど、神部さんが一言一言ていねいに拾ってくださるんです。毎回帰りのクルマの中で「本当に神部さんに救われたね」って。だから山梨で私がレギュラーのラジオコーナーをもてるかもってなった時に「神部さんがいるなら大丈夫だね」「山梨に帰っておいで」みたいな感じでメンバーに言ってもらえるぐらいグループとしてすごく信頼を置かせていただいています。
神部 そこは僕も仕事なんで(笑)。僕が出演しているいろんな番組にアイドル系の方が来ることって多いんですよ。町ガってどちらかというとアーティスト寄りの属性だと思うんですけど。もっとアイドルアイドルの子も来るししゃべれる子もいれば全然しゃべれない子もいると。山梨出身の子もいればそうじゃないいろんな子が来るなかで、ひよりちゃんは「すごく落ち着いている子」というのが最初のイメージです。とても品があるし、きっとご家族とかにも大切に育てられたんだろうなって。なおかつ、「(ひよりちゃんを)本当に応援してあげてほしい」という周りの人の声がものすごく多かったんですよ。
——“落ち着いてる”という言葉には、“人前に出る仕事をする人にしては少し物足りない”という含みもあるように受け取れるのですが。
神部 ひよりちゃんは一言一言にちゃんと内容があるので、そんなに言葉数で、パンチの数は少ないのだけど一発一発がちゃんと効いてくるっていうタイプなんですよ。口数だけ増やせばいいんだったら多分いくらでもできるんですけれども、結局内容なかったよねっていう方も中にはいるんで。それとは真逆に、言葉の使い方を大切にしてるんじゃないかっていうところがいい。
——そういう意識はありましたか。
ひより 全然ないです。コーナーを2023年からやらせてもらっていますけど、毎回こう言えばよかったなとか反省点ばっかりなので。
※1…東京都町田市を拠点に活動するガールズコーラスグループ。サウンドプロデュースは石田ショーキチと佐々木良(キンモクセイ)が手がけている。アイドル×合唱、ハモリまで完全生歌の三部編成ハーモニーが特徴。略称は町ガ。
予想外に上手くいき定着したライブパート
——コーナーのなかには、神部さんがギターを弾いて、ひよりさんと歌うというライブパートがあります。このコンセプトは初めからあったのでしょうか。
神部 コーナーの長さは15分ぐらいと決まっているので、何をやりたいかというところにはなってくるんですけど。でも、なんで一緒に歌うことになったんだっけね?
ひより 多分、私がコーラスグループで活動しているからというので、何か一緒に歌えたらみたいな感じで。
神部 そういうのって社交辞令なんだけど(笑)。とりあえずひよりちゃんがやりたいことを一個ずつやっていこうというなかで歌をやってみて、それが思った以上に上手くいっちゃったっていう感じかな。本番の1時間前にちょっと合わせてできるぐらいの感じで楽しくやっていきましょうというコンセプトだったんですけど、これは駄目だったねっていう時はないもんね。
ひより 神部さんがいつもすごくいい感じにしてくださって。
神部 できるぐらいの感じにしてるだけなんですけど、それが逆にライブみたいで。僕らもちゃんと取り組んで皆さんに聞いていただくこともそうだし、ぴったりとハモ(コーラス)が合う気持ちいい瞬間を共有できれば。なんか部活みたいな感じですね。

——初期は「ふたりの愛ランド」とか「世界中の誰よりきっと」など、男女のデュエット的な曲が選ばれているのは、2人で歌うっていうことを考えたからですか。
神部 そうですね。まずはわかりやすく、男性ボーカルと女性ボーカルがいて、親しみがあって、楽譜もすぐに手に入るという曲から始めていきました。時にはなかなか難しい曲とか、ハモとか特についてないんだけれどもそこにひよりちゃんがハモを作ってきてくれるっていう回もあるし。いろんなパターンでできています。
——毎週歌う1曲はひよりさんが選んでいるのですか。
ひより 今は完全にそうですね。内田さんと次回の話の内容を考える時に曲の候補は決めていて、そのなかから譜面が拾いやすいものや私のハモがつけやすかったり神部さんが歌いやすかったりという曲を選んでるって感じです。
——これまでの曲は、30歳の人がリアルタイムで聴いていなさそうな割と渋めなラインナップですよね、ジッタリンジンとか。もともとそういう時代の曲が好きなんですか。
ひより 両親とクルマの中で音楽を聴いていたので、私の世代よりも一つ二つぐらい上の世代の曲かも。今まで歌ってきた曲の中だと全く初めて聞きましたって曲の方が少ないと思います。
——ひよりさんから出された曲に対してはどんな感想をおもちでしょうか。
神部 これって勝負だと思っているんで。出されて「いや、できませんよ」って負けじゃないですか。なので、「今月も挑戦状が来たぞ」と。曲名を見た瞬間「こんな感じになるんだろうな」という想像はできる。たまに想像できないやつでも原曲が存在しているので、そっちに合わせていけばいいのかなって。「できません」っていうのだけはイヤ。水曜のこの放送枠は長くやっているんですが、今までのなかでも一番緊張する瞬間っていうのがいまだにくるっていうのは、ありがたいことです。
——ひよりさんからのお題は放送のどのぐらい前に届くのですか。
神部 基本は間に何人かをはさんでいるんで、多分もっと早く投げてくれてると思うんですけど、2週間は空けてくれたらうれしいなっていう感じです。
——届いた曲のアレンジを考えて、そのオケをひよりさんに送るのですか。
神部 やっていないです。本当はやった方がいいんだろうけど。
ひより でも絶大な信頼を置いてるので。
神部 多分なんとかなるだろう、と。逆にそれを送って「もっとこうしてください」と言われて僕が対応できないとイヤなので、あえて何も言わない。今は楽しくやるがいちばん表に立ってるからいいって感じですね。
——放送の1時間ぐらい前から打ち合わせみたいなことをなさるんですか。
神部 大体11時ぐらいから。でも歌の練習だけです。放送前にあんまりしゃべりの打ち合わせをしたくないタイプなんで。歌の練習だけぴゃぴゃっとやって、また後でよろしくねっていう感じばっかりです。練習といっても3回ぐらいまでですね。とりあえずやってみようかって。ちょっと課題が出たからこうしてみようって2回目をやって、うまくいったらもう1回おさらいで。こんなもんかなっていう具合です。

”うまぴよ“結成で音楽活動の場が広がる可能性
——番組でお二人のユニット名を募集したところ、たくさんの応募があったそうですね。“うまぴよ”に決まった経緯をお聞かせください。
ひより まず、最初にきたものを全部読み上げて、その中から私が3つぐらいに絞ったんですよ。最終的に神部さんが決めましたよね。
神部 わかりやすさは重要だよね。長い名前だとしても省略できればいいなと思ってたんだけど、すでに省略されてるみたいな感じ。
ひより 絵文字がつけやすそうだった。SNSで発信してもらう時に、決まったものがもうできている感じだったので受け入れやすいかなって。
神部 ちょっと商売のやりやすさを考えてしまったかな(笑)。でもそこは重要なところなので、たとえばCDにひらがなで“うまぴよ”って書いてあったら結構インパクトもあるし。別に僕もかわいいことやる年齢じゃないんだけど、逆にそれもありかなって気もしてて。
——うまぴよでこれからやりたいと考えてることは。
ひより ライブをしたいっていうのはもちろんありますね。
神部 (コーナーは)月に1回だったので進捗のスピードがものすごく遅く、やっと何かできるというところまで来たんで、多分1つでも決まればそこが締め切りみたいになってすぐ行けると思うんだけど。でも、最初ってどういう形で、どこでやればいいのかが結構難しい。ライブハウスとかもいいんだけど、いい季節に野外のイベントとかで、それこそ山梨の自然豊かな所で気持ちよく歌う、そういうスタートもほんわかしてていいのかな。
ひより 確かにそうですね。せっかく山梨が縁で生まれたユニットなので、私も最初は山梨がいいかなとふんわり思っているんですけど。
神部 ひよりちゃんは楽器的にはピアノの弾き語りとかいけるの?
ひより ピアノは習ってました。小1から高2ぐらいまで。
神部 じゃあ全然いけるね。ギターとピアノのアコースティックとか。ゆくゆくはライブハウスの結構しっとり系な感じの所もありだと思うし。アコースティック寄りで始めるけど、途中からもっといろんなものに挑戦しても。あるいはひよりちゃんがギターを…?
ひより 弾いちゃいますか!? でも、本当に学校の授業でやっただけ、です。
神部 全くできなさそうな雰囲気ではないね。男女のデュオで、2人ともギターを持って歌うのはあまりない。うちの親父と母が昔やってたぐらいだよ(笑)。いっそのことそういうのもおもしろいかもしれない。
ひより 私も新しいことに挑戦できるのは楽しいので!
神部 しかもギター弾けたら、それを町ガに持って帰ることもできる。歌いながらできる楽器っていうとそれぐらいだもんね。
ひより 一応吹奏楽部にはいたんですけど吹いちゃうと歌えない(笑)。
——町ガが「町田さくらまつり2025」(2025年3月29日)でライブをやるみたいに、地元のお祭でできたらいいですね。
神部 となると、僕が呼ばれたイベントに呼ぶのがいちばん早いって話になるんだよね。
ひより もし呼んでいただければ!
神部 お金を出せるかどうかわかんない(笑)。
ひより いやいやそんな! 私は地元に帰ってくるだけなんで(笑)。
神部 季節的にも暖かくなってくるので、そういうところからスタートしつつで。最初はカバー曲だろうけどね。カバーといってもお互いのオリジナル曲があるから、そういうのをやり合うとか。
——ゆくゆくは、うまぴよのオリジナル曲を。リスナーから歌詞を募集するなど、いろいろできそうですね。
神部 そういうのもありだと思うし、実験的なことから始めていける。うまぴよは多分これが許されてる環境なので。これまでの放送で演った曲をレパートリーに入れてしゃべったら、1時間半ぐらい全然できるじゃん。
ひより 確実に1年はやってるんで、季節のものもそろってますよね。
——ひよりさんには声優(※2)という新しい選択肢も増えました。
ひより いや、本当になんかもう訳がわからないまま、とりあえずアフレコが終わったって感じなんで。すごく貴重な経験をさせていただいています。
——うまぴよは歌をメインでやる、歌ありきのユニットですよね?
神部 そうですけど、別に演技とかミュージカルみたいなのもやってもいいですよ。そういう経験はあるんで(笑)。

※2…アニメ『うっちゃり!』の小川じゅり役で初の声優を務めている。
【エフエム甲府】
周波数:76.3MHz
公式HP:https://www.fm-kofu.co.jp
『763 KOFU LOCAL LINE』
毎週水曜 12:00〜15:00
「まちだガールズ・クワイアひよりの秘密基地!」は第3水曜 12:40〜12:55に放送
【パーソナリティー公式SNS】
神部冬馬公式X:@Toma_Kambe
ひより公式X:@piyo926_MGC
まちだガールズ・クワイア公式X:@MGC_Office
取材・文・撮影:金丸公貴(『昭和50年男』編集部)